第九章 ボイラー、大阪へ旅立つ
車両たちが整備場所の野口自工について二週間くらいたった冬休み中のある日。わたしは、SLたちのもとへ向かった。
野口自工の広い駐車場には、〔(株)白木城運送〕と荷台に書いたトラックが3台と、クレーン車が1台停まっている。
今日はボイラー搬出の日。
蒸気機関車のボイラー整備をどこに頼むのかは、あらかじめ4人で話し合って決めておいた。
その結果、大阪にある『株式会社サッパボイラ』にお願いすることになった。
整備費用は街頭募金で集めた。みんなで交代で二週間、路上に立ち続けて、なんとか目標金額まで達した。
今日は、カンカンは部活があるから欠席、中学生メンバー三人と大人メンバーで作業することになった。
ボイラーの下を通るようにワイヤーロープをかける。
それをクレーンでつり上げて、トラックの荷台に乗せた。
最後に、防水シートをかけて、ひもで荷台に縛り付けた。
『よろしくお願いします!!』
大阪までの運搬を担当する、大人メンバーの飯野さんたちに、しっかりと頭を下げた。
「わかってるよ。」
飯野さんたちが運転席に乗り込む。
トラックが出て行ったら、また別の作業に取り掛かった。
「うーん、やっぱりちょっとサビてるな~。」
おじいちゃんが取り外したロッドを見て言う。
「それに欠損もある。」
「この363号は、廃車になった後、5年くらい放置されていたんです。一応整備はしてたんですけど、手の入らないところとか、欠品は、そのままにしてあったんです。」
これは真美の説明。
「サビとり液を使うか。」
おじいちゃんがつぶやくように言った。
「大和、棚からサビとり液をとってくれ。」
「はーい。」
棚から『リン酸P205』と書かれたラベルが貼られたボトルをとる。
「じゃぁ、それを水で薄めてくれ。」
「はーい。」
近くにあったプラスチック製の水槽にボトルの中身を少し入れて、近くにあった水道からホースを引っ張ってきて、水を入れた。
その透明感がある水色の液の中に、外したロッド、シリンダー、サビが吹いている部品をひたした。
「さて、欠品の部品はどうするかだな。」
おじいちゃんがそう言って、翔悟のおじいちゃんのほうを見る。
「おまえ、旋盤得意だったよな。ちょっと部品を作ってくれないか?」
「旋盤があったらいくらでもできるんだけどな。」
翔悟のおじいちゃんが渋い顔をする。
「ウソつけ!昨日も旋盤いじってただろ!」
翔悟が叫ぶ。翔悟のおじいちゃんがギクッとする。そして、言った。
「ばれちゃあしかたがない。設計図持って来い、設計図見れば作れる。明日までに作ってやる・・・こいつがな。」
そう言って翔悟を指さす。
「ちょ、ちょっと待てよ。なんでおれが!?」
「なんでって、おめえも旋盤できっぺ。このヨボヨボのじいさんにやらせるつもりか?」
「そりゃそうだけど・・・。」
「はい、決定!!」
こうして、翔悟の部品作り担当が決まってしまった。
「まったく、このじいさんは、いっつもいっつも・・・ウジウジイジイジ・・・・。」
翔悟がぶつぶつ言ってる。でも、真美が近づいてって
「翔悟君!!おねがい!!」
って言ったら、
「精一杯やらせていただきます!!」
といった。
わかりやすいな・・・・・こいつ・・・。
大和「大和とぉ!」
真美「真美の~!」
大和・真美『鉄道ラジオ~!』
―この番組は、白木城運送、野口自工、國分電器店、猪苗代町、沼尻鉄道保存会、株式会社ゼロファイター・ジャパンの提供でお送りします―
大和「さあ始まりました。真美と大和の鉄道ラジオ!メインパーソナリティーの國分大和です!」
真美「同じく、白木城真美で~す!今回も」
大和・真美『よろしくお願いしま~す!』
大和「今回は、わが作者の別の作品より、ゲストをお呼びしております。」
真美「『飛べ!僕らの零戦!』から神崎保信さん、山ノ井春音さんで~す!」
パチパチパチパチ(保信と春音がドアを開けて入ってくる。スタッフ一同拍手)
保信「よろしくお願いします。」(カッコよく海軍式の敬礼を決める。)
春音「よろしくね~。」(手を振りながら席に着く。)
大和「実はわたしたち、一度春音さんと保信さんにお会いしているんですよね。」
真美「え!?そうなの?」
保信「たしか、零戦用のエンジン『栄』を見に行った時かな。」
春音「みんなで黒っぽいディーゼル機関車を囲んでたよね~。」
大和「ああ~、DC121の事ですね。」
春音「まさか、中学生でこんなことしてるとは思わなかった。みんなすごいんだね!」
真美「よく言われます」(胸を張る。)
大和「真美、ただでさえある部分をさらに強調しなくていいから。」
保信・春音『(爆笑)』
春音「二人とも、仲がいいね~。」
保信「ほんとほんと。そういうところに突っ込めるのが本当の親友って感じだよ。」
大和「だって」
大和・真美『わたしたちは、線路でつながった鉄友ですから!』
春音「わたしとヤスも愛でつながってるもんね~。」
保信「なっ、なに口走ってんだ!(赤面)」
真美「もしかして、保信さんと春音さんって、つきあってたりするんですか~?(ニヤニヤ)」
保信「違うよ」
大和「そのあとに続くのは、『彼女じゃなくて婚約者だよ』ですか?」
保信「そんなわけあるかぁ!ていうか、そろそろ尺が足りないぞ!」
「巻いて」と手で指示するスタッフ。
大和「と、いうわけで、本日はここまで!それでは皆さん」
四人『また次回、お会いしましょう~!』