転生
「〜〜〜」
「〜〜〜」
ここはどこだろう……。誰かの話し声がする。そこにいるのは誰だ?……ダメだ、うまく声を出せない。それに目も手足も思い通りに動かせない。
痛みは無いが全身の感覚にひどく違和感を覚える。まるで体が自分の体でないかのような……。
「~〜〜」
「〜〜〜」
話し声は続いている。よく聞き取れないが、声を荒らげている者もいるようで、何やら言い争っているみたいだ。相変わらず自由の効かない体ではあるが、何とか重たい瞼を少し持ち上げることが出来た。
ぼやける視界の中、数人の人影と大きな黒い塊が見て取れた。
「〜〜〜」
まだ視界はぼやけていてはっきりと見えないが部屋は薄暗く、ひんやりとした空気が行き場をなくしたように立ち込めている。言い争いを続けてる声の主達もそうだが物々しい雰囲気の部屋だ。
(なんだか牢屋みたいだ)
それともう一つ、おかしな事に気が付く。普通では有り得ない事だけに、この考えに辿り着くまでに少し時間がかかってしまった。
端的に言うと俺の体は縮んでしまっているようだ。自分の出した答えに半信半疑になりつつも、なお動かしにくい腕をゆっくりと上げて手を目の前にかざしてみる。そして、自分のものであろう小さな手を見て確信した。視界がぼやけている故の見間違いか?どこぞの少年探偵みたく子供に……いやもっと幼い、まるで産まれたばかりの赤ん坊のようになっている。
(多分夢だろうな、自分が夢を見ている事を認識するとかいう……。こういうの何っていうんだったか)
なぜだだろうか、さっき目を覚ましたばかりだというのにとても眠くなってきた。夢の中で目を覚ますというのもおかしな話だが……。周りが何かとうるさいが、気怠くてどうでもよくなってくる。瞼が重い。なんとか眠るまいと踏ん張ってみるが、無理そうだ。
目を閉じ、視界が闇に覆われていると、1人分の足音がこちらに近づいて来るのが聞こえた。足音は俺のすぐ近くで止まる。
「ごめんね、シレン」
意識を手放す寸前、そんな声が聞こえた。