プロローグ
この度はこの作品を手に取っていただきありがとうございます。
初投稿で拙い文章ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
夜の暗闇が包む部屋の中、弱々しく瞬く蛍光灯が時折思い出したかのように明るくなる。その刹那、薄汚い壁を背に、2つの人影が映し出される。片方は作業着を着た青年、顔はもう片方は……顔が影になっているせいでよく分からない、が服装や体つきからして中年の男性だろう。親子のようだ。青年は壁にもたれるように座り込み、膝枕の具合で胡座に乗せた父の顔を覗いているように見える。
六畳間程の部屋の中心には木製のテーブルがあり、その上には白地を赤で彩られた丸いケーキがひっそりと佇んでいる。まだ手をつけられていないソレは、この部屋に他者の存在を感じさせない。
古くなった蛍光灯から微かに漏れる羽虫の飛ぶような低い音がはっきり聞こえる程に、この空間は静寂が支配していた。明かりがなければ、この部屋の他者の存在にすぐには気付けないかもしれない。いや、きっと気付けないだろう。
今にも消えそうな蛍光灯は相も変わらず2つの死体と、血で彩られた部屋を照らしていた。
次回から転生します。