復讐の火
「はははははははははははははははははははは!」
「森田!このブタやろう!言え!言えって言ったんだ!」
「ははははははははは!」
笑いが止まらない。太田やつは今でもここで王子様ごっこでもやる気だった。太田は気分だけは昔のあの頃に戻って奴隷だったぼくに命令している。
「誰に命令しているんだ!太田!ここは建物だ!ふははははは!てめえもぼくも公平に人を殺して人
に殺される空間だ!勘違いすんな!太田、てめえも!ここではただの「参加者」だ!」
「それはどうでもいい!日野と櫻井がどうなった!ま、まさか!」
「ははははははは!太田、空気読めよ!全部ぼくが殺した。森まで!全部死体を確認した!」
「な、なんだと?」
銃声が止まって、太田やつの気がくじけた声が聞こえた。
「て、てめえ。今、な、なんだと?」
「森は。」
森はナミとマリアのために犠牲して死んだ。しかし、ぼくは太田を刺激するためにウソをついた。
「森は勝手に地雷を踏んで死んだ。日野は両手と両足をぼくが銃剣で刺して拷問したあと殺した。櫻井はな!」
「な、なんだと!」
「櫻井はな!それがぼくにとっては残念だった。カジノの上で中隊との戦争でぼくがふいに殺してしまった。それが、それが悲惨すぎる姿だったよ!ぼくも全然気づかない内に殺して、中隊兵の一人でぼくの槍に刺された。」
「てめええ!俺の友だちをよくも!よくも!」
「ってなんだ。殺したよ!てめえの!くそったれのD4を全部ぼくが、この手で一人ずつ殺された!
ああ!気持よかったよ!ぼくの手で!てめえらを殺すなんで!残っているのはてめえだけだ!さっさと出て!友だちと地獄の向うでD4のくそ遊びでもしたらどうだ!」
「森田あ!てめええ!ぶっ殺すぞ!」
「出来るのならやればいいじゃん!」
ぼくは今度は等身大の看板を利用した。スーパでよくあるんじゃない?有名なタレントとかが醤油を持っている等身大のパネルとか。それがちょうどここにある。
あ、猟師たちが19層でトリックで使ったのもこの等身大パネルだったよな。そのパネルに太田は銃弾を浪費している。タタターと連発で銃声が聞こえてパネルがエンジンノコギリで切られるように折れてしまった。
「死ねええ!森田!」
やつは無分別に銃弾を浪費している。銃弾がつまり自分の命だと気づいてないようだ。やつが銃弾を無駄に使うほど、もっとぼくに有利になる。
米国フットボールをしているようだ。太田やつの注意を分散させて、ぼくが近づいている事を気づかないようにしている。ぼくは太田に近づいている。
ゼロ層でやらなかった事を今しようとする。あの時で太田を殺したら、何人が救われたのか?ずっと思っていた。今は自分の命をかけて太田の命を奪ってナミとももりんの二人が安全圏で生きる事が出来るのなら、それでいい。
宿主として太田と共に死ぬ状況を、ぼくはこの下で降りてやっと受け入れた。
上等じゃないが?
公平じゃないが?
いつも太田を殺す事が出来るのなら命さえ惜しくないって言い慣わしたぼくだった。
まるでチェスと将棋で必要ないこまが命をすてて、勝利のために攻撃の道を開くと同じだ。ぼくは幼い頃は将棋で攻撃のために捨てられた「こま」はかわいそうだっと思った。
盤の上では生き残ったみんなが勝利を喜んでいるのに、死んだこまはチェス盤の外でそれを見ているだけだと思った。
しかし、ぼくが死んであの二人を生かせる事ができるのなら。あの二人のクィンのためになら。
「死んでもいい。ぼくはもう望む事すらいない。」
「森田!何を言っているんだ!てめえだけはやっぱりあの時自殺すればよかった!てめえのような弱虫はな!」
ぼくはあの話を聞いて本当に頭に来た。
「自殺ならもうした!」
「なんだと!」
「自殺を何度も!何度もやったよ!」
そうだ。東京に上京した後も、何度も何度も自殺を示度した。自殺クラブまで入って自殺旅行まで行った事がある。一歩もっと踏み込んだらぼくは自殺を成功したかも知らなかった。
「森田!自殺をしただと!ふはははは!てめえも佐野とかやつみたいに死んだら、俺がここでこうし
て苦労をするわけがないんじゃねえのか!この弱虫が!自殺までろくに出来なかったのが自慢かよ!」
佐野だったよな。
あの人。ぼくの前で奴隷で自殺を選択された人。やつは今でも罪を悔悟するどころが、死んだ人を侮
辱している。
「おい!びびったのか!佐野はせめて勇気を持って死んだじゃん!学校の屋上で飛んだじゃん。ああ!森田!てめえはそういうキャラーだったよな!臆病な弱虫!脅えて自殺さえ出来ないやつ!死がそんなに恐ろしかったのか!あ!」
恐ろしい?死が?
ぼくが死ぬ寸前足を止めたのは悔しかったからだ。ぼくはこんなどころで死んでいるのに、ぼくを破壊した人たちはじゃんと真面な人生を生きて、後で結婚して、家庭を作って、子供や孫まで見て、後で死ぬ寸前こう遺言を残す。
まあ、色々あったけどいい人生だったよ。
数多くの家族に囲まれて安らかに死を。
虐められた被害者である、ぼくは家族もなしに四畳半の片隅で一人で睡眠薬を飲んで死んでいるのに、あいつらはそんな眩しい人生を?甘い幸せを?それ余りにも不公平じゃないのか?
最後の自殺を失敗したとき、そんな事を気づいた時、ぼくはもう自殺するのをやめた。そして、復讐を願った。ぼくの人生を壊した人に同じだけ壊したいって決めた。
「太田!神っているかもしらないな!てめえをぼくにくれたから!」
「森田!このやろう!出て!出てけ!必ずてめえだけは殺すから!」
やつはもう銃を撃っていない。最後の一発、二発はあるかも知らないが玉切れの寸前だろう。太田の目線では今のぼくは死神が近づいていると見えるはずだ。
しかし、あいにくにここまで近づくのは成功したか、ピラミッドの売台までは何にもない空き地だった。多分あの城を築くために周辺の高い売台を全部集めたようだ。
くそ、熱カメラで確認したら、太田までの距離はわずか30メートル。体力テストでぼくのボール投げの記録って何メートルだったけ。どう考えても30メートルじゃなかったと思う。元々ぼくの筋力って
そんなに頼らないもんだから。こんな状況があったら筋トレでも真面目にやった方がよかったのに。
ぼくは自転車チューブが惜しくなったか、もう仕方ない。何とかするだけだ。ぼくは周波数を合わせた無線機に言った。
「ももりん。今だよ。そして、やつがばっきりと見えるなら本当に銃を撃ってもいい。」
「し、しかし、一発しかないんじゃないの?」
「構わない。」
ももりんが太田を命中する事が出来るか?分からない。けれど、ためらって銃弾を使う機会さえ無駄になるよりその方がいい。太田がここを諦めて後退したらそれはそれで困る。
今のぼくらには酒呑童子に勝ち目が全然ないから。ぼくだってもうあの化け物に立ち向かう事はあり得ないだと考えている。そして、ここで時間を無駄にしたら、もうすぐ酒呑童子が降りるかも知らない。
酒呑童子をジャージのような存在だと考えたが、毒のうつわで見た通りなら、やつはこの建物の神のように感じられた。主催側の命令通りに動く奴隷みたいな存在とは見えない。
酒呑童子が気まぐれにここで関与する可能性は低いか、「絶対」だとは・・・。
ぼくは熱カメラで隠している太田の姿を見ている。やつはピラミッドで隠して頭さえ見えない。ただ、やつの手と熱くなった銃口が見えるだけだ。やっぱり、一発で狙撃戦をするのは無理だった。
「ももりん。ちょっと待って、やつを揺さぶったあと、本当の信号をくれるから!」
「わかったよ!」
ぼくは中隊の口笛まで吹いた。
「野郎とも!今だ!敵はあのピラミッドの上にいる!全面攻撃だ!」
やろうとも?もう熱カメラで見たが、この食品館にいる人はナミ、ももりん、ぼくと太田しかいない。しかし、太田と地雷屋は先にオークランド銀行へ退却したから、長の「部下」がどうなったのか全く分からないままだ。ぼくは太田が一番脅えている状況を作りだした。
「野郎とも!やつにはもう銃弾がない!19層の戦闘のように一気に突撃したら!もうすぐ殺される!そして!そこにいる敵は!太田企業のオンゾウシだ!」
ずっと、太田を追い掛けた自分の陰だった。外では太田企業のオンゾウシで前途有望な人の「証」か、あいにくにこの建物の中ではそれこそ「いい獲物の臭い」になるって事さ。
ぼくはやつに接近しながら、やつには熱カメラも望遠スコープもないって事を確認した。太田は食品館に一体何人がいるのか分かっていない。
「おい!攻撃だ!カウンターから銃を撃って援護するから!」
「森田!何を企んでいる!い、一体何を!」
ぼくは深呼吸をしたあと太田に叫んだ。
「決まっている!てめえをぶっ殺す事だ!ナミ!ももりん!今だ!」
そして、ナミとももりんがいるレジカウンターから銃声が聞こえた。実は本物の銃声じゃなくて、レジカウンターにあった「ビニル袋」を風船が張り裂けるようにパングとする音だった。
こんな状況じゃそれがビニル袋の音か本物の銃声が区分出来ないだろう。毒のうつわで見た太田の射撃の腕なら、やつもあんまり銃を撃ったの経験はないらしいだ。いや、建物の外でも射撃経験があったとしても乱戦中の中で銃弾が「弾ける音」を聞くのは完全に違う問題だ。
クレイ─射撃とか実弾射撃を練習しても実際に自分の方へ銃弾が飛んでくる事はないから。
「森田!まさか!」
太田はレジカウンターに射撃を始めた。タアンーと銃声が響いて、カウンターにあるPOSレジスタが壊れてチンーと現金がある部分が開く音が聞こえた。
そして、ぼくは太田の方へ走っている。30メートルの走りだ。
だった、30メートル。ゼロ層でもこんあ距離だったよな?
無数な死と戦闘を経験したあと、ぼくはやっと太田との距離を縮めている。
ぼくが踏み込んでいる1メートルの一歩は、ぼくとって反撃に一歩で、ずっと願っていた一歩だ。
ぼくは喊声すらあげていない。喊声なら、ぼく自分の全ての体があげている。
一歩一歩踏み込む足音。
破裂しそうな心臓の音。
きいきいと限界にたどりつく筋肉の音。
ヒュウ─ヒュウ─と聞こえる息音。
全てが喊声になってぼくの中から爆発している。なんかぼくはハスタの応援の話も聞いた気がした。
最後に!
自分を信じて!
人を信じて。
左手で握っている熱カメラにやっとぼくに向かっている太田の銃口が見えた。熱くなった銃口はオレンジ色で今でもすぐ銃弾をぼくに吐く気勢だった。しかし、太田がぼくを発見するのはもう間に合わなかった。
もう10メートル。
ボール投げが下手くそであるぼくでもこの距離は「投げる」事が出来る。「森田あああ!」
そう。投げるんだ。
右手に持っている「火炎ビン」を。
ぼくの後ろで太田によって奴隷になった人たちが一緒に叫んでいるようだ。
復讐の火だ!
奴隷達の火だ!
てめえだけは幸せに生きると思ったのか!
太田がいるどころから眩しい火炎が見えた後、火炎ビンがピラミッドの最上段に直撃した。今まで悔しかった感情があの火を見る瞬間喜びに変えた。
「あああああああああああああああああああああああ!」
ぼくは我慢していた喊声をやっとあげた!レジカウンターに落ちていたコーラビンが破れて、MREから手に入れた砂糖とライタ油に火がつけてそのまま太田やつを襲った。




