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人間の特権

「よくないだと思うよ。悲しみを無視して無感覚になるのは。無感覚になれたら、あの化け物になるだけよ。」

「ももりん!」

「悲しい時に泣くのは人間の特権だよ。泣くのは。化け物は泣く事ができないから。むしろ、人の死を見て笑うから。そう、なんにも恥ずかしい事じゃないんだもん。」


人間の特権。


ぼくはまた人間なのか?


人を殺したのに?


仕方ないだと言って、正当防衛だと言ってもぼくが殺した人の数は20人は軽く越えるだろう。立派な人殺しだ。なのに彼女はぼくがまた化け物じゃなく人間だと言ってくれた。


「はい、よいこ。よいこ。泣いてもいい。ハスタねえさんはきっとこんな時こう言ったはずよ。」


彼女の一言がぼくをもう泣かせてしまった。本当にハスタがぼくにそう言っているようだ。


自分を信じて、人を信じて。


最後まで。


ぼくにはやるべき事がある。いや、それはももりんの表現では義務じゃなく特権かもしらない。泣くのが人間の特権なら、揺らないで人間としてこの競走を終わるのも人間の特権だろう。


最後まで人間として。


ぼくはももりんの話と消防官の言葉から勇気を貰えた。ちっぽけな勇気でもこの「毒の器」の中じゃ力になる。


ぼくは橋から落ちたサブバックをまた背負って涙を手で振り払った。もうゲームは終わっていない。ぼくは太田と地雷屋が消えたオークランド銀行を見つめた。


「いこう。」


ぼくは先頭で銀行に入るながら、中隊長がくれた地図を見た。それは一面安心して、一面は絶望した事は、このプラス1層はゲーム終着点ではなかった。プラス1層、毒の器の下にもまた「層」があった。そりゃそうだろう。ぼくはデパートの施設を見る瞬間、プラス1層は終わりじゃないだとすぐ気づいたんだ。


こんな高いビルで「地下施設」がいない訳がないだろう。ぼくは中隊長の地図を見なくでも、大体どうなっているかもう分かっている。ジュエリと雑貨の店の下、地下1層は食品官、その下は駐車場など。


「花畑はまた遠いのか?」


そう言えば、ここはハスタが言った最後の「花畑」とは距離があるどころだった。死体が積っているコンクリートの墓場を花畑で呼ばれたらそれナンセンスだろう。


中隊長の地図にもその花畑は出ている。


最後の場所。


そこにたどりつくために全ての参加者は走っている。孤独なマラソンのように、人を殺して。正確に何階なのかは分からないが、中隊長の地図も花畑で終わっている。

花畑まで?


今、太田と地雷屋も負傷さえたまま相当な距離を歩いている。この地図によると梯子と迷路がある道で、地雷屋も太田も足をやられただから、もっと歩きづらい道だろう。ぼくは獲物を追う狩人みたいに銀行の中を見つめた。


銀行はまるで戦争があったそうだ。銀行の家具とかかカウンタを中心としてバリケードが作られている。ここにも以前に大きな戦闘があった証拠だ。ぼくの目はすぐ鮮明な血痕を発見した。

銀行のカウンタには血がたくさん付いている。やつらはバリケードを無理やり越えて向うに行ったらしい。


「出口はそこか。」


ぼくはカウンタの向うにある巨大な金庫の扉を見た。ゼロ階にある扉も金庫に付いている部品だったか、これは実際に銀行で使う円形の巨大の扉だった。ぼくがカウンタを越える瞬間、ももりんがぼくの服を握った。


「また線だよ。」

「ああ、そうだな。」


今度もももりんじゃなかったら、地雷屋にやられたかも知らない。ぼくはカウンタじゃなくてあっさりとバリケードの山を登る事を選択した。


足を負傷されたやつなら、カウンタを越える方が容易いけど、ぼくはむしろバリケードの方が容易い。ぼくはカウンタの後ろに戻ってそこからピアノ線のワナを見て失笑した。


「ナミ、ももりん。こっちでおいで。ただの時間かせぎだよ。」


ピアノ線はただバリケードの両側に縛られていて何にもなかった。


多分、ちょっとだけでもぼくらのを足を引っ張る意図だったんだろう。ぼくはナミとももりんがカウンタを越えて来る間、カウンタの下から変な袋を発見した。


オリーブ色の袋。


それはちらと見ても「軍用」の袋に見える。そこにはなんと余ったピアノ線の束と地雷を設置する時に使う電線とかが入れている。そして、ぼくはその袋の中でなんか見覚えがある物を発見してニヤリと微笑んだ。


「これは使える。」


ぼくはオリーブ色の袋の表には親切に「設置方法」について絵本を見るように描いている。ぼくは「スイッチ」と袋まで持って金庫の扉の中に入った。


大体の使い方は動画で見て分かっている。ぼくは電線とぼくが持っている物を総動員して、また「それ」をサブバックに入れた。


「ゴミを捨てる日はじゃんと確認しなきゃこうなるんだよ。自分も危なくなるから。」


ぼくはわざとだっさい冗談をしたが、彼女たちはただぼっとぼくを見つめるだけだ。ぼくは彼女に手にいれた物について説明しようとしたか、金庫の向うでなんか音が聞こえたのですぐやめた。


ナミとももりんも緊張してぼくの後ろでついた。ぼくは銃を持ってコッソリと熱カメラのスイッチを押した。金庫の中も暗くて何にも見えない。熱カメラでその中で何があるのが良く見えた。


中には誰もいない。ただ、どこかで水がぼたぼた垂れている音だけ聞こえた。なんなんだろう、この水の音は?水の音よりぼくはこの部屋の状況がもっと気になった。ぼくはライトを照らして、ぼくは暗い金庫の中で飛び散っている血の痕跡を見て呆れ果てた。


「今更、仲間割れ?あの負傷で?」


飛び散った血の痕跡はどう見ても負傷で落ちた血はないようだ。誰かが誰かを刃物で刺した痕跡だった。


「おじさん。これなんですか?」

「仲間割れがあったそう。」

「え。どうして?」

「邪魔になったんだろう。地雷屋が太田やつにはもう「用心棒」として必要ないから。」


そう。太田が自分も負傷されたのに、地雷屋を手伝う義理はないだろう。元々あんなやつだったから。地雷屋だって太田にとっては自分のために犠牲になる無数な「メロス」の一人にしか見えなかっただろう。


しかし、地雷屋としてもそんな事を予測出来なかったのか?いや、そうではないだろう。保険として太田に何かをした可能性が高い。


例えば。爆弾のベストとか。


ぼくはふっと映画の中でイラクとかで自爆テロをする映像が思い出した。その映画でも爆弾を解体出来なくなって人が爆発された。


爆弾ベスト。


そういう可能性は高い。用心棒として取引をした二人としては裏切りの対策としてそんな物が必要だから。


それがここで状況が急に変えた?なぜ?地雷屋は自分の自動小銃をくれるまで太田に協力したのに?ぼくは機関銃が手榴弾に爆発するのを思い出して、すぐバーガーキングの廊下にあった地雷陣も思い出した。


「あ!」

「な、なによ。いきなり。」

「な、何でもない。いや、何でもないんじゃない。地雷屋はもう探知機がいない。あの時、爆発でやらてた時、それを失ったそうだ。」

「しかし、証拠がないじゃん。」

「証拠ならもう一つある。あの地雷が一杯設置されているどころでも爆弾は爆発しなかったじゃん。」

「あ、そう。そうよね。」

「爆死されるならあの時にやられたはずだよ。」


ももりんの顔は金庫の中ではよく見えないがきっと喜んでいるだろう。地雷屋は恐ろしい遠隔爆弾はもう使用できない。やっかましい地雷は残っているけど。


太田と地雷屋は仲間割れでばらばらになった。しかし、やつらの後を追い掛けているぼくにとっては、もっとやっかましい状況になったのだ。


三人。


ぼくの推測によると、競走馬ゲームがどんな形でも三人の内に入らなきゃ危ない。


最小のマジノ線が三人だ。


ぼくが知る限りこの下に残っているのは少なくとも五人。


ナミ、ももりんとぼく。

太田と地雷屋。


もちろん、地雷屋の性格では太田以外の人を残す理由はない。全部あの風呂の迷路で迷っているが、地雷にやられたハズだ。


とりあえず最後の三人。


太田と地雷屋の中で一人でも先に花畑にたどりついたらぼくら三人は危なくなる。地下にも施設はあるから、一番先に殺すべき人は自然、地雷屋になるんだ。


地雷屋はどう考えても再参加者で道を詳しく知っているから。しかし、ぼくにはやつらの位置を分かる方法がない。


これでは本当のレースになった。自分の命をかけて酒呑童子から逃げるゲーム。人々は、参加者たちは、今のこんな状況になるまでにはこのゲームの本質にとって完全に錯覚したかも知らない。


アイディを奪って、人を殺したりレイプしたら、法律がない状況の野蛮的な遊戯を楽しんでいて。しかし、このゲームは所詮「競走」ゲームだ。上にある壁画はそれをあきらかにそんな結末を見せている。


どう頑張っても、どんな強者になってもそれは重要ではない。そのすべては酒呑童子に食われる。それを避けるために下に降りるゲームだ。


そう、酒呑童子には完全に勝ち目がない。ならば、正解も簡単だ。


一人でも追い抜けて、どんな手段とどんな汚い方法を使っても自分だけが「三人」の中に入ったらいい。


ぼくはなんか長い梯子に人がたくさん付いている状況を考えた。その長い梯子で、自分が「三人」に入る方法って上から下にいる人の頭を蹴飛ばす事しかない。自分の後ろにある人頭を三人に砕けて梯子から落す。そして、自分も蹴飛ばされるのを守って梯子を上る。


もちろん、このタテモノでは下に降りるって差があるけど本質は同じだ。


自分じゃないならどうでもいい!


どんな手段を使っても前にあるやつを追い抜けて!

となりにいる同級生は全部受験では敵だ!

なんとしても生きる者が強者だ!


それ、どっかで聞いた事じゃないが?ぼくの父が先生の一部が、なんか大人の一般論だとぼくに言った話だ。


自分じゃないならどうでもいい。


あの中隊長が先着を取れって言ったのはこんな状況のためだったのか?自分じゃないなら。


「それはないだろう。ぼくはそんな大人にはなりたくなかった。」

「おじさん・・・。」


ああ、そんな人だけは。人の助けを無視して、自分だけが生き残ったらなんの意味があるのか?

ぼくがこの建物で見た人達は自分の命でそれを証明した。あのD4の一員だって森まで、自分の身で人は。人間は。


「おじさん。急がないと危ないよ・・・。」

「ああ、わかった。ごめん。」


この悲しいレースでぼくらはちょっとだけ有利などころに立っている。さいわい、やつらは全部足に怪我があって自由に歩く事ができない。

まさに、アキレスと亀の競走だが、あの物語は違ってきっとぼくらには勝算はある。地下にはまた長い道がある。


「ナミ、ももりん。ここからは走ってなきゃならない。分かる?」

「わかったよ。あんたこそ無駄な心配をするな。」


ももりんはナミと手を繋いでぼくを見上げた。ぼくは金庫の奥に開いている出口を見つめた。なんと下に降りる道は金庫の固い壁を崩して地下に繋がっている。ここは照明がないので真っ暗だか、ぼくは熱カメラの力ですぐ道を探した。


また、うっとうしい迷路だ。金庫の裏にはプラス1層のどこかで迷路が繋がっている。ここも暗くてよく見えないのでぼくらはただ熱カメラに頼って前に歩いた。これじゃ地図があっても、ここに一度通った経験があってもここを抜けるのは結構手間がかかる事だろう。


それを証明するように壁のどころどころには血痕と血が付いた手の跡が残っていた。太田と地雷やは仲間割れになったあと、バラバラになってここを通過したようだ。


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