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一層、地獄の器

「いこう。ぼくから離れるな。そして、これはマリア君がもってけ。」


マリアは涙まみれになった顔で素直に首を振った。彼女は自分のアイディと森のアイディを合わせてスカートのポケットに入れた。


ぼくらは森の死体を後ろに残して、前に歩き続けるしかない。死んだ人の願いと未練を背負ったまま。


地雷屋が銃に撃たれて撤退したとしても、この空間はその自体が恐ろしい武器だった。

後ろで聞こえる長たちの奇声を聞く度に、脅えて震えているナミとマリアの気配を感じた。


「心配するな。銃と熱カメラがある限りここではやつらは問題ない。」


ぼくは熱カメラを指さした。


「あの、おじさん、これはなんですか?」

「熱画像カメラよ。ここでやっとどう使うのか分かったよ。」


温度の設定したら、微妙に温度が違うピアノ線とかが良く見えた。熱カメラでぼくらは危険地役を安全に通過する事が出来る。


しかし、この迷路は上にあった迷路と違って、出る方向についてちっぽけな手がかりさえいない。どこがどこなのかは後にしても、ある時は梯子があってそこを降りたり、ある時はくねくね曲った坂道があったりする。


「おじさん。だ、大丈夫なの?道迷ったんじゃないんですか?」

「大丈夫。余計な心配するなナミ。」


以前だったら「強がりするな、ぼけ」とかマリアが一言いうタイミングだったが、マリアはなんにも言わなかった。彼女がどんな気持なのかはぼくもよく知っている。

森は彼女にとっては「ハスタ」だった。


「マリア、大丈夫。道はちゃんと分かっているから。ワナもこの熱カメラがある限り問題ないんだよ。」

「道をど、どうやって分かるの?」

「ヘンゼルがお菓子を残したから。」

「なにそれ。だっさいよ。」


マリアはちょっとだけ気分が解れたようだ。ぼくは彼女たちに地面の血痕を見せた。


「やつは足をやられて血を流したよ。やつが逃げた方向が出口に決まってるじゃん。」

「あ、そうね。」


地面には何かがもそもそ動いた血痕がそのまま残っている。やつは痕跡を変な方向に残して追い手をまこうとしたか、全ての痕跡を隠す事は失敗した。


地雷屋にも「出血」というタイムリミットが付けているせいだ。


出血量を見たら地雷屋はぼくの追撃を避けて逃げるのも背一杯だった。もっと動いたらもっと血を流す。もちろん、やつは逃げた途中でも手榴弾とかのワナを設置したが、熱カメラがやつのワナを全部見せた。


元々なら自分が緊急撤退する道にワナを設置する訳はない。つまりここにいるワナは丁寧に設置していない、ただの「急ごしらえ」の物だ。当然にそんなに危ないワナはなかった。


むしろ、安全ピンが付いているクレイモアを一個ぼくに虚しく捧げただけだ。


手榴弾一個とクレイモアが一個。


ワナはそれにしても、地雷屋がどこをやられたのかは分からないが、早く止血しなきゃ地雷屋だとしても死ぬしかない。しかし、問題はこの血痕をもうすぐ長のやつらも発見するはずだ。長と仲間もただでここまで降りた新人じゃないから、血痕が何を意味しているのかすぐ分かるはずだ。


「マリア、ナミ。ここからはもっと早く歩くから気をつけて。」


彼女たちは首を振ってぼくの背中に手をつけて、ティーシャツを握った。


「ナミ、な、なにすんだよ?」

「もう、一人で離れるのはいやですよ。」


ナミは不安な目でぼくを見上げた。マリアもぼくの服を握って後ろを見るながらフンと鼻であしらった。こいつ、素直じゃない性格だな。


ぼくは仕方なく彼女たちと一緒に血痕を追跡した。今までの血痕は、もうパイプの熱気で干上がってどす黒い色に変えたけど、どんどん鮮明な赤い色が見えてきた。地雷屋に近づいている証拠だ。

後ろの彼女たちも緊張して、ティーシャツがひっぱられて絞首刑をするようにぼくの首をしめた。


「けっ。けっ。あんたたち、ちょっと。地雷屋にやられる前にぼくを殺す気かよ。けっ。けっ。」

「あ、ごめん。」


マリアとナミはやっとティーシャツを話した。


「おじさん。私聞いたよ。後ろで血痕がどうって。」

「ナミ、ぼくも聞いたよ。心配しなくてもいい。」


長はやっと血痕を発見したようだ。ぼくが撃った銃声をやつらも聞いたから、きっと血痕を追い掛ければせめて一枚のアイディでも手にいれると考えるはずだ。やつらはアイディを収集する事に夢中になっているから。そうじゃないだとしても、


それが地雷屋の血痕だと気づくんだろう。地雷屋のいらいらする話声が悲鳴と共に消えたから。どっちにしても、ぼくらには有利ではない。ぼくがまた出発する瞬間だった。


「森田アア!森が死んだ!森が死んだよ!ふははははっ!ざまを見ろよ!地雷で腹に風穴がこんなに大きくあげたよ!」


長の話声は完全に狂人その物だった。どこかで肉を切るような恐ろしい声が聞こえて、ナミとマリアは不安になってぼくのティーシャツを握った。


ぼくは彼女たちに文句を言うのも忘れて長の話声が聞こえる方向を睨んだ。


「おいい!森田!森も死んだ!君とぼくが戦う理由なんでないんじゃないか!俺と同盟しよう!力を合わせてこの建物を出るのだ!」

ナミとマリアはもっと不安な顔になった。

「ナミ、マリア。何度も、何度も心配するなって言わせるな。長が千鶴にあんな事をして殺した時、やつとは一緒に行かないだと決めたよ。」

「・・・・。」

「そして、森は確かにぼくの仇だったよ。けど、森が言った事はぼくの大事な道連れが言った事と同じだったよ。」

「な、何ですか?き、聞いてもいいですか?」

「自分の変わりに白い羊を救えって。」


ぼくはナミの頭を撫でて二人を安心させるために微笑んだ。


「さあ、いこう。当分は長のやつらはここまでは来ない。」


ぼくはナミとマリアにまた微笑んだあと、前に歩いた。


人間を信じて。歩くのよ。


一歩踏み出す度に、ハスタが言ったもう一つの遺言がふっと思い出した。


人間を信じて歩く。


彼女のその遺言は、彼女と分かれて、森と出会って、長と戦って、ここまで来たぼくにはもっと深い意味になっている。


今のぼくは人間を信じて歩くのがどんなに難しい事なのか分かっている。


考えて見たら、この建物の一番恐ろしい「武器」は「不信」じゃないのか?


人を疑って、人を憎悪する。


信じらないから裏切って、信じらないから不安になって。


人が人を本当に信じる事が出来るなら、この建物でも無駄な争いはないだろう。


まあ、ほとんどの人はそれをただの理想論だとあざ笑うだけだ。


しかし、ハスタはぼくに見せた。

自分の可憐な身で見せた。


「競争より慣用を。憎悪だけじゃない和解を。理解を。ここ出る方法はそれだけ。」


ふっと森の最後の姿が思い出して目の前がかすんで見えた。よりによって、ハスタが言ってくれた話をぼくの仇である森が自分の身を犠牲して証明した。あの満足した顔を見たら、やつは死ぬ瞬間!あの瞬間、ぼくを信じていた。


ぼくを。


やつにとって一番信じられないぼくが。


きっと、ナミとマリアをここから出ていかせるだと。


森田ゆう、仇に信用されてどうする


ぼくはその場で足を止めた。ナミとマリアは背中で不安な目でぼくを見ているはずだ。

熱カメラにはやっと青いどころが見えた。温度が変えて青系の色で表示される。この水蒸気地獄が終わっている。


「あれが出口のようだ。」


マリアとナミはぼくを見つめて首を振った。ぼくは森が持っていた斧をマリアに渡した。


「後ろを頼む。出口だと安心させた後、襲撃する方法もあるから。」

「わかったよ。」


ナミはゼミようにぼくの後ろに付いている。ぼくはなんか言おうとしたかすぐ諦めた。

そして、目の前に見える出口ってぼくの想像とは完全に違う場所だった。


「これがプラス1層なのか?」


ぼくが立っているどころはプラス1層が一番よく見える広い「テラス」だった。

機械とパイプだれけの迷路は壁が崩れて、道はテラスの壁の向うに繋がっている。このテラスはなんとギリシャとか地中海風の真っ白な壁とインテリアだった。


「な、なんだ、こりゃ。」


地中海風のテラスには白いテーブルと椅子などが勝手に倒れていて、このテラスがどこなのか言っているようだ。


ここはカフェだ!


この地中海カフェの向うにはなんと有名な紳士服ブランドの看板が見える。その横には他の名品ブランドの看板があって、ぼくはどんどんここがどこなどころか分かった。


「まさか、ここは紳士服で、この上には子供服。その上には家電機器と子供むけのオモチャと書店とか。その上には。あ、フードコートはゼロ層にあったけ。なんだよ、このでたらめの構造は。」


なぜ、再参加者たちがここをプラス1層だと呼ぶのか分かった。

ここは典型的な「デパート」だった。見た事があるんだろう。建物の中央には柱がない構造で、このテラスでは下の構造が全部見る!


つまり、建物の内部で四角の空間が空いている構造で、ここではこのくそったれの建物の一階が見える!


「ナミ、マリア。様子を見てくるからここで待ってろ。」

「だ、だって。」

「心配するなって言うのも疲れたよ。全部殺されたらどうするんだ。ここは狙撃で狙い安いどころだ。」


ナミもマリアも不安な目で向うとデパートの周辺を見つめた。


「ほら、ぼくには狙撃銃もあるんだ。自慢するのもそうけど、どんなやつがいても簡単にはやらないから。」


ナミは不安な目でやっとぼくの服を放した。ぼくはすぐ身をかがめてテラスの欄干の向うにはってきた。ぼくが鏡の破片をガムテープで銃剣先につけて欄干上に出す時だった。


タタタタター!


まさか!ぼくが隠している欄干に鉄の雨が叩くようだ。


「くそ!まじか!これは!この銃は!」

「おいおい!どうですかあ!よくも私を倒したのに残念ですね!私の止めを刺したらいいのに、何を考えたんすか!油断したとしてもほどがあるんですよ!」


まさか!あの武器を持っている人は!


「へへん!地雷地役をすり抜けて、もう私は終わりだと思ったんですか?ざァァァァんねんですね!」


ぼくはふっと取引をした時の事を思い出した。ぼくは主催側にタンクとか無茶な事を要求したが、本当は地雷屋やつが持っているものが欲しかった。


自動小銃。


この射撃速度と銃声は映画や動画で見た自動小銃とそっくりだった。

まさか、地雷屋が自動小銃まで持っているだとは!やつが銃を撃つ度に、向うにいるナミとマリアも悲鳴をあげた、ぼくも連続で聞こえる銃声でビックリして身をかがめた。


「おいおい!しっかりしない!モグラのようにずっと潜っているつもりですか?無駄ですよ!後ろには人殺しがいるんじゃないですか?」


地雷屋やつが言う通りだ。後ろには長の一味がいる。やつらがここにたどりついたら、地雷屋と長に挟んで攻撃されるかま知らない。


くっそ!一旦やつが持っている小銃がどんな自動小銃なのかが重要だ。詳しくは知らないけどAR-15シリーズなら装弾数を知っている!


ぼくは銃剣に付けている鏡を欄干の上に出した。しかし、このプラス1層はどんな層より大きいで、隠す場所もいっぱいあった。もっと絶望的なのはやつは探知機を持っている事だ。


テラスに隠しているぼくを正確に狙うほど、やつはここにいる全ての人の位置を分かっている。そして、自動小銃、探知機よりももっと。もっと、絶望的な事は「道」だった。


「くそ。まさか、下に降りる道ってあるなのか?」

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