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悲しいせんとう

長と仲間が素足だったのはぼくの推測通りに「音」のせいだった。水がびちゅびちゃする音が聞こえてやつらはここに近づいていた。

長。


ぼくは点火プラグのスイッチを握ったまま、ちょっと躊躇った。もし、長がこのワナにかかったらどうなるか。本当に長はこんなやつらとあの千鶴にあんな事をしたのか?


高校二年生のやつはそんなやつじゃなかった。しかし、考えて見たらぼくに殺されたこのやつと長は女性を狙ってハスタ組を襲撃した。この建物で長も変えたのか?それじゃないなら・・・。


「え?これは?なぜ、水ビンが?え?これって?」


この話声はぼくが拳銃で殴ったあのやろうだ。まるで釣りをするようにやつが点火スイッチのケーブルを触れる感触が感じられた。


そして、どこから長が急に話す声が聞こえた。


「近づくな!ワナだ!やつは!ワナの・・・・。」


そう、ワナだ。ぼくはまた点火スイッチを押した。すぐ水蒸気の向うからとかんど爆裂音が聞こえて誰かがお湯に倒れる音がした。ぼくはすぐ点火プラグのケーブルを引っ張って点火プラグを無事に回収した。


「手が!手があ!」


ぼくは唾をごくりと飲んで、両手で声が聞こえる方を銃を照準した。死んでなかったのか。残っているのは長とあのやつ、そして森を追い掛けているやつしかいない。


「も、森田!森田あ!」


この声は長だった。


「森田!撃つな!話したい事がある!森田!」


ぼくはまた迷っている。話声が聞こえるほうに銃を撃ったら長まで殺す事ができる。しかし、ぼくは迷っている。


昔、長が言ってくれた「すまない」って言葉がぼくの頭から消えない。ぼくをかばったあの少女の話と長の「すまない」って話はぼくが生き続ける力になった言葉だ。ぼくは一人じゃないって、ぼくが悪くて太田にやられたじゃないって証明だった。


その長が。


なぜ。


なぜだ!


「森田!出るから撃つな!」


そして、うっとうしい水蒸気がゆらゆらして、誰かの形態が現れた。


「長。」


手と片目を傷付いた仲間を抱き抱えて、長はぼくはじっと見つめている。ビンを拾い上げたやつは片

目でぼくを睨んでいる。


「森田。」


長はなんか気が抜けた顔でぼくを見つめた。長い時間一緒だった長の仲間をぼくが殺した。長はなんと言えば分からないほど複雑な顔だった。


「森田。なぜだ。書店の戦いのように一緒に戦えばいいじゃん。なぜ、こんな事になったんだ!」

「長!ぼくこそ聞きたい事だ。なぜだ。なぜ、子供まで!」


長はちょっと起った顔で返事した。


「森田!そんなの重要じゃない!」

「ぼくには重要な事だ!長!」

「てめえも知っているじゃないのが!ここでは弱い物は殺される!ただそれだけだ!それだけだよ!」

「ふさけんなよ!てめえはそんな人じゃなかった!悪い人じゃなかったよ!なぜ!なぜ、千鶴を!」

「仕方ないんだ!あんな!俺もあの子供にあんな事まではしたくはなかったよ!俺も!俺も人間だから!」


長は泣いている。彼は涙を流れるながら震える声でぼくに言った。


「けれどよ!あんな事しなきゃ!俺のほうが殺されるから!どうしようもなかったよ!」


ああ、そんな事もあったのか。狼の中の「羊」。その羊はわざと狼のモノマネをして狼の群れの中で生き残ろうとする。


あんな事をテレビ番組で見た事がある。自分は悪い事をしたくはないが、回りの全てが悪いやつらなので、仕方なく状況に巻き込まれる人たち。


誰かが信号無視で横断歩道を渡ったら自分も何気なく渡ったり、助けを求める人の声を地下鉄にいる全ての人が「横にいる人もなんにもしていない、まあいっか」って無視する事とかだろう。


この中でも一番容易く建物を降りる方法は「黒い羊のふり」をする事だ。


ふり。


しかし、それはそう行動するのはただのふりなのか?そんな悪い行動が重なったら、自分が白か黒かどう分かる?行動は黒なので、心だけは白だと?そんなのあり得るのか?


ぼくもそうだ。


新人入りのベルが鳴した時、ハスタの遺言の通りにすぐゼロ層で上って白い羊たちと出会うべきだった。しかし、ぼくは心の声を無視して、ここまで降りた。


ぼくは正しいのが?


ただ、心の中で自分は「いいやつ」だと思えば全てが解決されて、ぼくは白い羊になれるのかよ!


「そんなのただのいいわけだ。仕方なかったって言うのも。ぼくらは選択した。」

「森田。」

「心でどう思うのかが重要じゃない。環境がどうだっか、状況がどうだったのも重要じゃない。どう

行動するのかだ。」


ぼくの声も震えている。千鶴の悲劇はぼくに大きいな波紋を残した。ただの口だけで、ただの思いだけじゃ誰も助けない。


「そうよ。どーちゃん。」


急に目の前でハスタが笑っているようだ。彼女は自分の選択と行動で見せた。

どう選択するのか、どう行動するのか、どんな人なのか決めるんだ。


長は悲しい目でぼくの話を聞いていたか、急に軽蔑する目でぼくを睨んだ。そして、長はぼくを睨むながらははははと笑った。


「森田!口だけは偉いじゃないか?森をかばっているくせに!俺に説教までする気が!」

「そ、それは。」

「てめえもいいわけばっかり言ってるんじゃないのかよ!行動でどんな人なのか決めるだとオ?なら、なぜ、森をかばうのだ!他ならぬやつらの奴隷だったてめえはなぜ、森を殺さなかったのかよ!」


長は森の事を言うながらなんか物狂いになったようだ。彼は恐ろしい目でぼくを問い詰めた。


「森田、てめえはまた森の奴隷なのか?昔の懐しい奴隷の記憶までも思い出したのかよ!」

「言い過ぎだ!長!」

「何が言いすぎだ森田ア!てめえ、自分の口で言ったじゃねえのかよ!行動が重要だと!森を殺さなかった行動はてめえの崇高な人間愛だったのかよ!」

「そ、それは!」


ぼくは長の話に言葉を失った。もちろん、ぼくはエレベータで森を見る瞬間、やつを銃で撃ち殺したかった。森を見る瞬間高校二年の苦しかった記憶が思い出してたまられなかった。


「ぼくが森を生かせたのは理由がある!」


森を殺したら、ナミとマリアはぼくを信じてくれないから。ぼくは長にどこまで説明すればいいのが分からなくなった。ハスタとの約束。ぼくが見たものたち。

しかし、全てを説明しても、長には「いいわけ」でしか見えないだろう。


「ぼくだってやつを殺したい!」

「へへん!言っただろう。森と一緒にいる限り、森田てめえが言った事は全部ウソになるんだよ!森はくた悲惨に殺さなきゃいけないやつだ。」

「長。まさか、君も森と太田とかと何かあったのか?ぼくは地元を離れた時からその後どうなったのか全くわからないんだよ。一体どんな事があったんだ!」


長の態度はちょっと変だった。長は森とD4にぼく以上の恨みがあるようだ。え?長がなぜ?  


「森田。どんな事?どんな事だと?」


長の顔はもっと怖く表情が歪んだ。やつはあざ笑いするようにぼくを見つめた。


「そう。そうだ。あの事!森田よ。あんな事がなかったら、俺だって真面に生きる事が出来るかも知らない。俺は!俺は・・・。そう。今の自分はあの時の「選択」から作られた「破片」だよ。」


破片、人の形だった「殻」。


なんと長はぼくが森に言った事を同じ話をぼくにした。そして、あんな事?考えて見れば、長が森をここで見た時も「あんな事」だと言ったな?


森と太田、そして長の間にはなんかある。ぼくが知らない何かがある!ぼくはふっとエレベータで眠った時の夢を思い出した。


校門から出る太田とD4。しかし、その中には「長」の姿もいた。あ!長も二年D組のクラスメートだ!確かに日野を拷問した時、「あの事件」だと言った。


長が言っていた「あんな事」。

日野が言っていた「あの事件」。

二年D組とぼくが夢で見た男子だち。


長が破壊されたと言う「事」も日野が言った「事件」、全部同じ事を言っているのじゃないのか?しかし、「あの事件」ってぼくは何にも分からなくて、とっかかりさえにない。高校二年のぼくは自分の苦しさだけで、ほかの事に気にする暇と力さえなかった。


「おい、長、言ってくれよ。あん時、なんかあったよな!それで、ぼくもあんたも全部ここで招待されたんだ。」


これがぼくの復讐劇じゃなかったのは、壁画の前でもう気づいた。ならば、ここで「ケロ」もそうだし、D4とあん時の生徒たちが招待されたのは、きっと理由があるハズだ。ぼくがここで生き残るためにも、その「理由」と「あの事件」がなんなのか重要だ。


「森田、てめえこそなんか勘違いしているんじゃね?あの事が何なのかと?招待されただと?これは招待なんかじゃない。」

「おい!長!」

「あの時二年D組の全てはここで罰を受けているのだ。あんな事をして。全部。」


長はまた泣いて唇を噛んだ。


「多分、君だけはあの事から自由だろう。無実かもしらない。つうわけで、ここで君を出会ったときビックリしたよ。君はあの事と関係ないから。」

「無実だと?関係ない?え?あんな事が何で?」

「それはてめえの親友の森に直接に聞け。俺は言わないから!」


あちゃ!油断した!長は涙をてで振り払ったあと、お湯の下に落ちてしまった。瞬間ぼくは長がどこにいるのかやつを失って慌てた。


長はぼくの視界から逃げたあと、水蒸気の向うでなんか恐ろしい話をした。


「仕方ない。森田、てめえまでここで殺すぞ。」

「長!」

「森田、もう終わった。俺を恨むなよ。」


この中で一番頼もしかった仲間だと思った長が、本当に敵になる瞬間だった。そして、ぼくの耳に聞こえるのは口笛だった。高低が口笛の音。


これは信号だ!


しかし、信号がちょっとおかしい。


長の仲間は全部七人で、ぼくが三人、少なくとも森とマリアが一人殺したハズだ。しかし、聞こえる

口笛の音は一人じゃなかった。負傷された仲間を加えても三人の信号じゃない。


あちゃ!長はただ時間かせぎをしていたのか!長にはまだ「仲間」がもっといる!


「カイロス!上ってきたよ!なんの事だ!」

「てめえらには無理だったのかよ?」

「女子だと聞いた!女子はどこにいる!」


上って来た。


まさか、この風呂の下にも長の仲間がいるなんで、そしてこの人数は半端じゃない。つまり、長は自分だけの「新しい中隊」を作ったんだ!


その新しい武装集団のヘッドが長で、よりによってあいつらが狙っている集団はぼくの仇、森がいるやつらだ。


人生、本当に皮肉だな?


あの時、だった一つの言葉でぼくを生かせた長は、これで敵になって、ほくは自分の仇である森を守るなんで。


「さっさと浴槽に!銃があったとしてもこの蒸気地獄じゃなんのやくに立たない!」


それを合図として、やつらはお湯がある浴槽に入る音が聞こえた。お湯の中にいたら銃で狙えない!

また、蒸気の向うには何にも見えない。ホラ映画の状況と同じだ。あのミルク色の蒸気の向うには長とその仲間たちがぼくをを待っている。


長の仲間は一体何人なんだ?


中隊と玉将のやつらは19層の戦いでほぼ全滅された。特に中隊の負傷者は玉将のやつらが後で全部殺したはずだ。19層の戦いで生き残ったやつは結構やかましい敵だったけど、問題は新人だ。


新人入りが19層で死んだ人たちの「補充」のためなら、その数は70人、或いは80人は十分に越えるはずだ。17層にいた中隊員だけで考えてもそうだし、それぞれ死んだ人が多いから。くっそ、新人についてはやっぱり森やつに新人が何人いたのか聞いた方がよかった。


確かに、長は「ほとんど」は新人だと言ったな?ならば、数は少なくとも20人以上。ハスタとぼくを追い掛けた中隊の親衛隊がわずか20人だと考えたら、20人はぼくにもきつい数だ。この水蒸気地獄であの数は本当にどうしようもない。


逃げるしかない。


ぼくは仕方なく登山靴を抜いてサブバックに入った。ここで音がしたら、すぐばれるはずだ。


「誰もここから出られないようにしろ!女子たちをおいて全部殺す!こっちには銃を持っているやつがいる!十分注意しろ!音がするどころに矢を放せ!」


長は非情に命令した。あいつは本当にぼくまでここで殺す気だ。


奪って殺す。


加勢したやつらも死んだやつと同じに、このタテモノの法則に忠実なやつだろう。そもそも、長が細かしい命令をする必要もなかった。


「もっと水を「バルブ」をあげろ!銃を持っているやつがもう一人いる!水蒸気がなかったら俺たちがやられる!」


もう一人だと?


中隊長だ。

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