赤い文字
彼女はぼくを掌に何かを書いている。彼女は今、口から血を流れていた。
私。君。思うより。いい人じゃない。
私は君が思うよりいいとじゃない。
「ハスタ、あんたはいい人だよ。ぼくには恩人だ!」
彼女は微かに微笑んだ。そして、ぼくの掌に何かを続いて書いた。
私。胸の。赤い。文字。消える。かな。
私の胸の赤い文字はもう消えたかな?
赤い文字?
あ?まさか?
「それで「ハスタ」だったのか!「ひもんじ」の!」
彼女は本当に明るく笑った。ひもんじ!彼女が言う通りなら彼女も「白い羊」ではない。彼女はわざと「ハスタ」の名前を選んだ。一体、前回で、彼女が始めてここに入った時なにがあったのだ?
そして、彼女は最後の力を振り絞って、ぼくの掌に遺言を残した。
別れる。時。「笑顔」。私。勇者。さま。
別れる時は笑顔で!私の勇者さま!
彼女はももりんと別れた時と一緒にぼくにそんな言葉を残した。そのあと彼女の手がぶっつりと落ちた。ぼくは地図付いた彼女のてを握って彼女の頬を撫でた。
「ハスタ。いこうよ。下には水と食糧が一杯だ。見ろ!水だよ!ここでなんで眠っているの?え?いこうよ。ぼくは銃を手にいれたよ。ももりんも見たよ。これから一緒に降りるんだろう?ねえ?ねえ?」
彼女の返事はない。ぼくの胸にも彼女の心臓の音は感じらない。
「ハスタ。ハスタ。」
彼女は穏やかな微笑んで目を閉じている。こう見たら、眠っているようだ。ぼくはハスタが言った通り彼女に向けて笑顔を見せたか、すぐ泣いてしまった。涙が彼女の顔に落ちた。
ぼくはまた彼女をたきしめて泣いた。彼女の心臓の音は感じられない。ぼくの手には水ビンが残っている。
せめて、水でも飲ましたらいいのに!こんなの!
ボトルの蓋をあげて彼女の唇に水を注いだ。水はそのまま彼女の頬から虚しく地に落ちた。ほこりのせいで水が流れた部分が白く見える。ぼくは水で彼女の顔を洗った。
「せっかくの美人がこんな様じゃダメだろう?」
彼女がぼくに文句を言う話声が聞こえるようだ。合掌するように彼女の手を合わせて通路に寝かした。水ビンは彼女の枕もとに置いた。
「喉が乾いたら飲めよ。そして、別れる時は笑い顔で・・・。だっただろう?」
ぼくはもう一度無理やり笑顔見せた後、彼女のアイディを握った。ハスタのアイディ写真は彼女が働いたらしい病院のナース服のままだった。
写真の中の彼女は明るく笑っている。ぼくは彼女のアイディを首にかけて、彼女が持っていたアイディもサブバックに入れた。
一緒に降りるのだ。
一緒に。
彼女から背いて、ぼくはもう笑っていない。鏡でぼくを見たらきっと悪魔の顔と同じだと言えるかもしらない。ぼくは眉根をひそめてハスタを殺したやつを追跡した。
今、一番やるべき事はハスタの仇を取る事だ。虚しく死んだハスタがかわいそうで耐えられない。彼女が望んでいたのはこの建物を出る事だった。
知っているのかよ!
ただ、白い羊を導いてこのクソッタレの建物を出るのが彼女の唯一の願いだった!
アイディも19層への勝利もなにもかも望んでいなかった!なのに!なのに。そんな願いをこのタテモノは無惨に食って、彼女を殺した。
ぼくも「白い」だとは言わない。今日だけでも数えない人を殺した。ぼくはその「カルマ」でここで死んでも恨みなんかない。
太田を殺したら、胸を張って閻魔大王の前に行くつもりだ。ぼくはここで殺されても構わん。けれど、彼女だけはこの建物を出ることを願ったのに。
許さない。
彼女を殺したやつだけは絶対許さない。
彼女は隠れ場所から最後の力を出して、あのどころまでたどり着いた。このダクトの中は迷路と同じだから、率直にぼくがハスタを探した事も幸運だった。そして、ぼくはもう一つの血痕を発見した。ここに残っている足跡は当然ハスタの物ではない。
ぼくは銃を槍みたいに握ってなるべく静かに接近した。誰かが息をする声が聞こえた。
「だ、誰だい!」
向うからもぼくの足音を聞いて慌てて言った。近づいたら、やつは壁に身を寄って必死で槍をぼくに向けた。
あの槍!
「誰だ!スブスリエンマ?リエンのションディなら助けてくれ!足に傷付いた!あのクソアマ!」
ぼくはやつに別の武器がないだと確認した後、やつに身を現れた。
「クソアマ?どういう事だ?」
「え?て、てめえは?」
「心配するな。同じショウンディだ。」
ぼくはわざと恵比寿の階級章を見せた。
「あ、選抜隊か!たすかった!一人でここで死ぬかと思ったよ!」
「へえ。何があったんだ?」
「丁度「する」どころだったのにあのクソアマが足をナイフで刺して。あ、見なかったのか?結構べっぴんだったよ。」
「しらない。それより、仲間はなんだ?」
「あの野郎。一緒に女を捕まえたらいいのに。一人で行ったよ。こんな迷路じゃ。クソ。」
やつは狭くて複雑なダクトにあきれたようだ。ぼくは「槍」を見て、目から火が出るようだ。アイディの紐とのれんの棒を連結した槍。あれは作って「ペル」が最後に握っていた槍だった。
つまり、やつはペルが死んだとき、あの場所にいたやつだ!
「あんた脱営兵だろう。」
「な、なんだと?」
「中隊長の親衛隊は19層でみんな全滅された。」
「て、てめえ、何を言っている?」
「まあ。もう中隊も形態もなしに消えたからいいだろう。」
「そ、そっか。」
やつは緊張して力を抜いて、安堵のだめ息をついた。
「そ、そうなったら。おい、俺を助けてくれ。」
「ただで?」
やつは一瞬暗い顔になったかすぐまじめな顔でぼくを見た。
「アイディだよ。全部あげるから19層まで手伝ってくれ。」
やつはぼくの足物にアイディたばを投げた。アイディの金格はともかくちらと見ても相当な数だっ
た。ぼくは震える手でそのアイディたばから熟れた顔を発見した。
ペル。
ぼくが殺した「道連れ」は写真の中で明るく笑っていた。
「へえ、数は多いけど、これ全部抜け殻じゃん。」
「勘弁してくれ。どうぜ、ザコしかなかったよ。君みたいに一線戦闘部隊じゃないし。」
「そうか?なら。」
「ま、待って待って!わかったよ。これもあげるから!」
やつは隠していたうまい棒をぼくに見せたが、すぐぼくの水を発見してぼくに話をかけた。
「え?そっか?水?水!水ちょっと飲ませてよ!」
ぼくはわざとやつの前で水を置いて、水ビンを銃剣でビンを軽く刺した。
「え?てめえ?そ、それは19層の?」
「そうだよ。アイディはいいから、情報を出せ。」
「な、なんの情報?」
「リエンチョウは一体何だ?分からないのか?やつの出身地とか。」
やつは細い目でぼくを見つめた。やつも極度の乾きで唇が
「俺もよくは分からない。けど、なんとか傭兵だったそうだよ?」
「傭兵?」
「いるんだろう。イラクとかで会社があって。」
「あ、PMC、つまり民間軍事会社かよ。」
なるほど、やっぱりあのやつは軍の経験がある。イラクでPMCの傭兵で働いたら、実戦経験もぼくより多いだろう。率直にやつとは19層で決着をついた方がよかった。もし、19層のように撃戦とかをしたら、実戦経験が多い中隊長の方が有利だ。
「そ、そして、リエンチョウは再参加だと聞いた。」
「再参加?」
「そ、そう。「しゅてん」になんか恨みがあったとか?」
やつが再参加者だとは薄々気づいた。しかし、やつもハスタ見たいに仲間を失ったのか?わかんない。
「それより。もっといい情報ないのか?こりゃ、足りないんだよ。水を飲みたいならもっといい情報が欲しいんだ。」
「な、なんの情報?」
「分かんねのかよ?19層にはもう誰もいない。その以下に降りるチャンスだろう。一番馬になるいい機会じゃないか?」
「あ、そうか!」
「親衛隊のおまえなら色々見ただろう。強者たちを。」
やつはやっとぼくが何を言いたいのが分かった気だ。
「き、聞いたよ。ラクロスラケットを持っている二人組。」
「そりゃ、ぼくも分かっているやつらだ。その以外には?」
「あ、これはおれも見たやつだ。以前、我々が19層を占領した時、リエンチョウが何の条件もなしに通過したやつがいる!」
「条件なしだと?」
それは変な事だ。19層の植物園は中隊が占領しても、一人では絶対通過できないどころだ。
「どういう事だ。なぜ、あのやつは?」
「銃を持っていた。銃を?しかし、銃を持っていても中隊の人数なら一人では無理だろう?」
「よくは知らないが、リエンチョウはやつが持っていた「ブリーフケース」を見てすぐ通過させたよ。」
「ブリーフケースか。その中になにがあったのかわからないのか?」
「知らない。けど、リエンチョウがそんなに緊張したのは始めて見たよ。」
あのやつが緊張したと?中隊長はぼくが銃を狙っていてもホウキをみるように平気だった。きっとあのブリーフケースが危険な物だろう。これは記憶すべき事だ。
以外にこいつが言ってくれた話は役に立った。やつは水ボトルを見つめて舌なめずりをしている。
「おい、そろそろ水を飲ませてよ。昨日からずっと我慢したよ。」
「残念だな?」
「え?約束と違!俺が知っている情報を全部話たよ。」
「足りない。残念だけど。。」
「ずるいな!てめえ!あ!こ、これはどうだ!けちなやつ!これを言えるから、水をくれよ。」
ぼくの動きは止めた。
「なんの話?」
「三百万。いや、太田企業のオンゾウシの情報だ。」
「いらん。やつはもう死んだと聞いた。アイディはメロスだったか?確かに?」
「フン、俺は信じていない。これを見ろよ。これを!」
やつはパンツの中で隠していたアイディを出してぼくに見せた。ぼくはあれを見てビックリした。そこにあるのはほかならぬ、「太田」本人の写真だ。
「ツイッタ-とかでマセラティとかを自慢するやつを見た事がある。その上に後ろをみたらどうだ。確かな物だろう?」
果然、やつが言った通りアイディの後ろには目が回るほどの残高が印刷されている。一、十、千、万・・・。ぼくは太田企業をちょっとなめたかも知らない。零が多いので、数字はアイディのわくまで進んでいる。
なんと三億のアイディだった。そして、その表に書いているアイディの名は「マイダス」。太田やつらしいアイディだが、なんか太田を揶揄う気まで感じる悪趣味のアイディ名だ。
メロス。
こっちの方がやつが選んだあだ名だろう。ぼくが一気にやつだと気づくほどのセンスだから。
あ!考えて見れば、太田のアイディはもっとよく考えべき事だった。太田の残高なら「メロス」のアイディには相当の金額が残っているはずだ。きっと、その金額なら、仲間割れや大きい戦争が起きても可笑しくない。
しかし、メロスのアイディを拾ったやつも中隊の内部にもそんな気配は一切なかった!
猟師たちのアイディを見てぼくだって一瞬揺さぶるほどだ。アイディとそのウラにある金額は魔法ように人を中毒させる。
「な、ならば。」
「これが本物。つまり、これを持ってやつを殺したら、この数字は全部われわれの物だ!」
一億の大金。
足に鉛の固まりを付けて沈む感覚だ。一億。ぼくがこの建物を出て一生働いても、多分、一億円の金は手に入らない。




