以夷制夷
相変わらずこのパーティのリーダはハスタだった。ぼくはアドバイスするだけ。ハスタ組とぼくは死んだ人からアイテムと役に立つ物を回収して下に降りた。
ぼくは秀平が隠していたアイテムを手に入れた。
「ライタの油?」
ジッポライター専用の油だった。しかし、ライタもないし、こんなの役に立つのか?このライター油以外には秀平を含めて、こいつら全部いい物は全然なかった。
そう言えばこいつらにいい物を持っていたら中隊を突破して下へ降りただろう。ハスタの話通りなら、下にはコンビニとか銭湯とかがあるから。
ぼくとハスタたちは長い階段を降りてまた新しい「層」で足を踏み込んだ。
「一体、どうなっている構造だ。例え、バブルーの怪物だとしてもこれはひでえ。」
ぼくは新しい層を見て話を失った。最初に思い出したのは豪華すぎるホテルのロビーだった。シャンデリアがぶら下がっていて、壁の装飾や置いている家具などのインテリアも豪華旅客船とそっくりだった。しかし、ここの本当の目的はただのそんなんじゃない。
シャンデリアの下には何とスロットマシンやギャンブル用のテーブルが列を揃えて並んでいる。椅子とテーブルには壊れた物も多いけどスロットマシンなどは、ただほこりがたまったいただけ新品に見える。
ここはつまり「カジノ」だ。
一体、何を考えてこんなのをここに?ぼくはカジノなんか「ドラクェ」の中でしか知らないけど、国内にはこんなに大きなカジノがあるとは聞いた事もない。
もちろん、外人さん用のカジノはいっぱいあるけど、このタテモノがただの外国人のために作られたのか?そんなのあり得ないんだ。
このカジノは上にある庶民的なラーメン屋、スイツ店と完璧に矛盾している。ラメン屋などの店はどう見てもない国内人のための店で、カジノに来る人がたまたま来る店とは思えない。
朝のワイドショで法律がどうだったと聞いた事があるけど、国内には一般の日本人が利用できるカジノはほとんどないんだ。
「何だよ。この建物は完全に狂っている。」
例え、バブル時期の貪欲でやたらめったら投資するのもほどがあるんだ。このカジノがこの建物の成立と滅亡に核心的な原因かも知らない。
内国人入る事ができるカジノがあれば?そして、その建物の中にある店たちを公開入札すれば?
そんな事実を当時に分かったらぼくだって投資したかも知らない。多分、上の商店街に投資した人達もそう考えたはずだ。
大金を稼ぐ!
それ朝飯前だよ!
しかし、結果はこの様だ。何らかの理由でカジノ計画は潰されて、このビルの開発計画も廃棄してこのタテモノはバブルの旧物になって放棄される。
この話、今もよくあるんじゃない?ショッピング・モル分譲詐欺とか、ここ入店してば高い収益は保障すると言う散らしとかメールとかよくあるんじゃない?
実際には商権が完全に死んだビルで、泣き寝入りする被害者さんをニュースとか見たことがある。
ぼくはこの建物を知れば知るほど恐ろしくなった。ここは形が違う物になった今も、人を貪欲で中毒させる。回収した何枚のアイディがカタカタ軽くぶつかる声にぼくは耳を傾いた。
この建物の中でこんなアイディをために一体、どんなに多い人が殺されたのか?今もこの中ではこんなプラスチックを得るために人はお互い殺している。
考えたら荒唐無稽な話だ。このアイディにはただ数字が書いているだけ、どこを誰を信じて人を殺すのか?その瞬間、ぼくの頭に意外な事が思い出した。
保障。
実際にこのアイディで精算されて本物のお金を貰った人たちがいたら十分成立する話だ。
二週回目。
ゲームではよくある話だ。ストーリを全部クリアした満タンレベルのやつらがサブキャラで新人ふりをして最初からゲームを始まるとか。二週回目をしているやつは何が必要で何が起るのが大体分かるから、本当の初心者よりとても有利になるんだ。なんかあったら本来のキャラで来る方法もあるし。
このゲームに二週回目のいいどころがあるのか?
もちろん、ある。
彼らはこのゲームがどうやって終わるのが、自分の目で見てこの中の地形を知っている状態だ。その経験だけでもぼくみたいに初心者に比べてとても有利になる。そして、色々初心者なら分からない規則を分かるはずだ。
そして、二週回目の経験したやつはこのアイディを実にお金に変えて満足しないまま、また建物に戻ったやつだ。当然、簡単な敵ではないだろう。多分、あの中隊長も二週回目のやつではないのが?
再参加者。
二週回目のプレイヤ。
ぼくはハスタを振り向いた。彼女の目は最初と同じにキラキラ光っている。
「なによ。」
「いや、別に。いこう。」
再参加者の事を思い出した後、ぼくはだんだん背が痒くなった。彼女はぼくが想定していた二週目やつにピッタリ合う行動をしている。
誰も知らない自分の道を知っている。
この中の状況も詳しく知っている。
そして、あの目はあとに何か起るのか分かるような目だった。
あ、そうだとしたら、ぼくも「二週回目」と同じ状態だ。ぼくは紙切れと恵比寿がくれた地図を手に入れて、このあとにはなにか起るか大体分かっている。
一旦、これが人間競走馬ゲームだと知っている自体が大きなメリットになるんだ。
ゲームが進行するといい武器を持っているやつはもっと強くなる。
人を信頼出来ない状況で新人さんは犠牲になって消える。
ゲームがどう終わるのかは分からないが結局、強者だけが残るはずだ。
あ、そのためのオッズか!
ぼくはアイディにあるオッズを思い出して恐怖を感じた。これが人間競走馬ゲームならばその終わり方はなんだ?
どう終わる?
競馬なら終わり方は複雑だ。競馬はその賭ける方によっていろんな賞金を貰えるゲームの方式がある。
復勝式、単勝式などの方式だ。その賭ける方法は些細な差異があるけど大きな共通点があった。
勝利を勝ち取る馬は本当に少ない。
単勝式は一番早いゴール着く一匹の馬を予測する方式で復勝式は1等から3等までの競走馬を旬番なしに当たる方式だ。
つまり、少なくともあの最後の三人の中に入らなきゃ生存の保障なんかないんだ。
もちろん、このゲームが単勝式で一人しか生き残るのがルールのなら三人の中でも安心なんか出来ないが、せめて三人の中に入らなきゃ最小の希望さえないんだ。
「どーちゃん。なによ。なんか話したい事でもある?」
「いや、別に。って言うか。このカジノはなんかカラクリはないのか?」
「中隊が玉将やつらと戦ったどころがここよ。ワナがないとは言えない。」
ぼくはスロットマシンの通路を這って歩きながら後ろをみた。もちろん、ぼくたちが降りた階段では敵が来ない。
「他の入り口はどこ?」
「そこよ。」
彼女が指で示すどころはシャンデリアが揺らしている古風な階段の上だった。それがカジノの正門だろう。ぼくはスロットマシンの後ろで地図を見た。中隊の地図ではここは玉将の領域だと書いている。この地図を作る時点ではまた玉将っていう連中が残っていたらしい。
「玉将ってなんだ?」
「中隊と同じ武装集団だよ。」
ももりんが代わりに答えた。ももりんが恐怖で怯えるのをみたら玉将も真面な集団ではないだろう。
ぼくはスロットマシンで血が飛び散った痕跡を発見した。どころどころが両側の決戦地で痕跡がいっぱい残っていた。痕跡を見るだけでここでどんなに激しい戦闘があったのが証言している。
「ここでごちゃごちゃする暇はないよ。」
ハスタが言うとほぼ同じに階段の上にさっき、後ろで攻撃したやつらが現れた。しかし、やつらの様子はなんかちょっと変だ。
「助けて!」
やつらは慌てて階段から転んだ。え?だった10分前にはぼくらを食う気勢で来たやつらが、今度は逆に他の勢力に殺されるのが見えた。
投げやりが飛んできて逃げるやつの背に立って、打たれたやつは悲鳴を上げながら倒れた。矢と手裏剣などの兵器が飛んできて逃げるやつらは狩りにやられる山羊と鹿に見えた。攻撃するやつらの腕も半端じゃない。
そして、耳にもう熟れた音が聞こえた。いや、耳には熟れない音だ。ブンーと空気を切って「ラクロス」ラケットから発射された石が逃げるやつに当たった。あのやつら、またここにいたのか!あのラクロスやろうの一人戦力でハスタ組のすべてを圧倒する。ぼくも自転車チューブがあったか経験は彼の方が確かに優勢だ。
やつは自分の経験と実力を威張るように一人もう一人正確に砲撃した。この建物の外で人の頭が壊れる音を聞いた経験がある人は何人あるか?
バシャッ-とビスケットが壊れるように人の頭が簡単に壊れて脳みそがこっちに飛び散った。恐ろしい光景にももりんは目を丸くなってカタカタ震えていた。
このまま動くのも動かないのも進退両難だ。下手に動いたらあの砲撃に露出されて被害が大きくなる。ハスタとぼくはスロットマシンに隠れていた。
何よりこっちの戦力はしょうもないので「勢力」を利用するのが上策だ。
あ、そうだ。柔道!
ぼくは幼い頃、じじいの影響で柔道と弓道を3年ほど習った。その経験が太田やつらの戦いではあんまり役に立たないがここでは「策」として意味があるかも!
柔道は相手の力を利用する武道だ。ぼくと同盟であるハスタ組はまさに戦力としてはないと同じだ。こんなぼくらが柔道みたいに力をよく利用することができるのなら!
ぼくは「中隊」の信号用鉄板を叩いた!
「ワラグラウウエオル!」
でたらめの中国語だかどうでもいいじゃん!ハスタはビックリしてぼくの手を握った。
「なにを?」
「ぼくだけで19階を突破するのは無理だよ。」
「でもこのままじゃ私たちは殺されるよ。」
「分かっている。生きたいのなら黙って見ろよ!」
ぼくはでたらめの中国語を連発してやつらの視線を引いた。ラクロスやつを含めた追い手たちは本当に中隊の信号が聞いて慌てている。
「えい!そいつら中隊のやつじゃないのか!なぜ中隊が節介をするんだ!」
やつらは攻撃を止めてこっちに文句をしている。ぼくの頭にはもう電球に灯がついた。
「ここは中隊の領域だ!それを忘れたのか!」
「ふん!あんたら中隊には十分上げ物を捧げただろう!この狩りにかまうな!」
やはり、小さな殺人集団は中隊と共生関係を繋がっている。弱いやつは強いやつに上げ物を上げて強いものは弱いやつの狩りと特定階の通過を許可する。なんだこれは中世の封建社会じゃないが?
ぼくは盛り上がる疑問を押さえてやつに叫んだ。ここが封建社会ならこの方法はもっとも有効だ。
「そうはいけない!19階までにはすべての物は我ら中隊のもの!さっさと引き去るほうがいい!
「こんな無茶な要求を無理強いするならこっちも考えがある!」
考え?ハスタはやつらの中に一人に見て取ってぼくに囁いた。
「あっちに立っている人は「玉将」の連中よ。」
「なら、むしろいい。あっちが強いほどぼくらが生き延びる確率は高くなるから。」
「なにがいいよ!」
ハスタはめちゃくちゃ怒ってぼくを殴る寸前だ。ぼくは彼女に向かってキザな微笑みを見せた。
「兵法には以夷制夷とかある。」
「何よそれ。」
「今ここで起る事だよ。」
ぼくはまたでたらめの中国語と一緒に鉄板を叩いた。中隊の信号を聞いて彼らの中で激論が始まった。ぼくはそんなやつらに油を注いだ。
「われら中隊こそこのタテモノの強者で玉将の残党なんか許さない!奴隷は所詮奴隷!負け犬は負け犬!ここで死ぬがよい!」
ぼくは半分遊びで「死ぬがよい」と中2病のセリフを使ったがハスタはもう気を失うほどに怯えていた。ぼくはドンドン彼の自尊心を攻撃した。「奴隷」とか「皆殺し」とか刺激的な単語を使ってやつらの腹が立つのを待っていた。
「中隊め!その生意気な口を剥ぎ取ってやる!」
「ならば、どんと来い。負け犬よ。」




