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道連れ

「私、殺しても無駄だよ。」


彼女は微かに微笑んで自分のアイディを見せた。このアイディって人の人生を圧縮した物だった。


ぼくは彼女のアイディを見てまた涙が出だ。彼女の年齢はぼくとほぼ同じ。彼女のアイディの書いている金額もぼくとぼぼ同じだった。


-12567円。


「これマイナスだよ。はは。これを誰かが持っていたらどうなるかずっと思っているよ。まさか賞金からマイナスの部分を共済するのかしら。」


ぼくは彼女のアイディを見て何の話も出なかった。そして、あっという間に彼女は柳刃の取っ手を握って彼女自分の喉に付いた。


「な、何をする?」

「死ぬのは怖くない。散々見たわ。そんなの怖くない。」

「なんだと?」

「彼。死んだ男がよく言ったよ。我らは何もないマイナス組ですけど獣にはなるなって。」


彼女の白い首から血が出た。


「私たちの目的はアイディ稼ぎじゃないよ。このタテモノを出るのが目的。」

「出る?」

「あんたも見たでしょう。「ダウン」って書いている文字と矢印。そうよ、このゲームは誰より早く降りて生き残るゲームよ。」


ぼくが考えていた回答がこの女の子の口から出た。


ダウン。


やはり、そう考えるしかないんだ。誰より早く降りる人間競走馬ゲーム。


「あら、あんた知らなかったの?」

「いや、分かっている。」

「なら、協力する方がいいよ。きっと、このタテモノから出るから。」


気高い瞳。


短い時間だかこの空間で見た人は全部狂っている。


アイディのために人の頭をさりげないにブッ壊す人。

ワナを作って何も知らない人を後ろで刺す人。

なにも知らないふりをしながら接近して無防備の人を刺す人。


まるでその姿はアフリカとかのサバンナやジャングルで自分より弱い物を殺して食う「獣」と同じだった。


そんな恐ろしい状況の中で、見た彼女の瞳を見ると話を聞くだけでなんと涼しい気分になった。

しかし、このタテモノを出る?


そんなの出来るのか?


ここは何もかも狂ってる人、いや獣だらけだ。彼女もこの状況から切り抜けるためにそんな話をしているかも知らない。


ぼくは彼女のアイディの後ろを見た。そこには社員らしい彼女の写真があった。タテモノの外ではこんな姿だったのが?


「ハスタ?」

「そうよ。それが私のあだ名。本名は・・・。」


本名?ぼくは彼女の話を急に止めた。


「それはいい。その辺にしろ。ぼくと関係ないから。」


薄々アイディに本名が書いていない理由を分かる気がする。ぼくだって上で二人を殺したあとだ。そんな状態で本名を名乗るのはなんか変だ。


「水は・・・。」


ぼくは水をごくごく飲んだあと恵比寿からもらったビンにも注いだ。すぐ500ミリのボトルが満ちてぼくはそれをサブバックに入った。


「水はここに置くから勝ってにしろ。この以上ぼくに関わるな。好意はここまでだ。」

「え?あんた何をするつもり?」

「この空間を出るのもいいけど、ぼくにはここで殺さなきゃならないやつがいる。」」


ハスタの顔は変になった。


「殺したいやつ?」

「いや、殺さなきゃいけないやつだ。」


そうだ。太田のやつ。やつだけは殺さなきゃならない。

ぼくは機会を失ったが今度やつと出会ったら容赦なく殺すつもりだ。


あいつだけは許さない。


ぼくは不意に死んだ男の屍体を振り向いた。

ぼくは全然有利な状況じゃない。太田じゃなくてもやつに接近する前に他の人殺しに殺されるかも知らない。さっきのハプニングは運がよかっただけだ。ハスタが指摘していた通り変な部分でミスしたらあとは想像も出来ない。


「好意は感謝する。しかし・・・・。」


ぼくは彼女の上下をじろっと見た。スタイルいい女性だ。多分、こんな状況じゃなかったら胸がどきどきして話さえろくに出来なかっただろう。彼女も何かを考えたあと彼女からぼくに話をかけた。


「なら提案する。」

「なに?なんの提案?」


変だかぼくは引き続いて彼女の話を聞いている。彼女の話には魔力でもあるかもな。


「あんた新人でしょう?」

「え?どうして。」

「時間がないから本論だけを話すから。情報が必要じゃない?なら、私がその情報を提供するわ。」


情報。ハスタはぼくよりここの状況を詳しく知っているらしい。

ぼくは何度、危機を越えてここまで来たが情報はないとこの前はどうなるか分からない。彼女はぼくの顔をみて気さくいに喋った。


「仲間じゃなくて同盟。各自の目標をためにちょっとだけの「道連れ」。どう思う?」


彼女がそういいながら顔を差し出して、ほくの鼻と彼女の鼻が連れ合うほど距離になった。

近いで見たら彼女の目がどんなにキラキラしているのかすぐ分かる。ぼくの顔が真っ赤になったが、それを隠すため様子を見るふりをした。


実はこの行動はリリィの事もあって故意にハスタがどう出るか見ようとするワナだった。銃で彼女の胸を狙って万が一何があったらすぐ打つつもりだった。


距離は30センチ。他人の呼吸の声まで感じられる距離だ。


ぼくは高校二年生の事件以来、人なんか信じていない。人ってどんなに邪悪な存在になるのか、ぼく自分の身で散々経験した。


ぼくが太田の奴隷になった日、昨日までぼくと一緒に遊んだ友だちはぼくをいじめる敵に変えた。誰一人ぼくに話さえかけてなかった。


なら、彼女はどう反応するが?あんたはどうなるんだ?しかし、ハスタの反応は全然ぼくの予想外だった。


「ならばお決まりね?短い間だけど、どうぞよろしく。道連れさん?」


おいおい、ぼくはなにも言えなかったよ。彼女は軽くぼくのほっぺを掌で触った。

え?攻撃じゃない?この距離ならあの新人狩りのリリィ見たいに十分攻撃出きる距離だった。ぼくは彼女が変なマネをしたら打つつもりだったか、なにも出来なかった。ただ彼女の瞳を見るだけ。


「え?何か? あの名前が・・・・」


彼女はついにサブバックにあるアイディを覗いた。


「どぺるぞるとなあ?あだ名が長いね。なら「どーちゃん」でいいでしょう?どーちゃん、一旦ここから撤退しよう。話はそのあと。」


彼女の行動は余りにも自然だったので、ぼくは何にも出来ずに彼女の後ろに付いた。

ハスタが自分の仲間を過ごす時、彼女も合掌した。そのあと彼女は屍体からアイディを回収してぼくに渡した。


「なぜ?」

「死んだ人の名前は斎藤長次郎さん。東京中央区・・・。」

「いや、ちょっと待って。なぜぼくにそんなのを教えてくれる?」

「同盟の条件の一つね。死んだ人の家族や知り合いにこの死を伝えてくれる事。」

「え?」

「私もあんたもここで名前もなしに死ぬのは悔しいから。せめてそれだけは手伝ってよ。名前と住所と・・・。」


彼女は噛み締めて話を続いた。


「分かる?」

「・・・。」


ぼくは答えなかった。ぼくには重い話だった。ハスタはこんな虚しい死をどれぐらい見たのか?ぼくも分からない。


急に彼女が言った「タテモノを脱出する」話が理解出きる。彼女は死んだ斎藤さんのアイディを自分のアイディに連結した。チラリ見ても死んだ男のアイディは価値がないものだ。


残高-14590円。


持っていてもお金にならないアイディだ。しかし、ハスタはそれを宝物ようにちゃんと保管した。そこには生前の斎藤さんが息子らしい子供と一緒に笑っていた。


そのアイディの写真を見る瞬間、酒呑童子に殺された「あけみ」の叫びがぼくの頭の中で響いた。彼女は死ぬ瞬間までぼくに何かを言ったはずだ。


ぼくは歯を噛み締めて涙を我慢した。ハスタは死んだ人の名前と生きていた証拠を家族に伝えるって言った。ぼくは「あけみ」の話だけは、せめて彼女の事情さえ聞いただけでもよかったのに。

ぼくはハスタがしている事をみて自己嫌悪に落ちた。


せめて。


しかし、ぼくはその瞬間あの自己嫌悪を太田やつへの怒りに変えた。

そうだ。そもそもあの時もあいつが悪かったんだ。新人狩りなんか来なかったら「あけみ」とあの老人は死ななかったはずだ。


そうだ!酒呑童子が来る前に、もはや二人は新人狩りのリリィに攻撃されてもう死ぬ運命だったんだ。


悪いのは太田だ! 


そう考えたらなんかすっかりした気持になった。そう、太田を殺す事こそあけみさんへの罪滅ぼしになるんだろう。あけみさんの恨みも背負ってぼくが太田を殺すだけがあけみさんへの罪滅ぼしだろう。


ハスタはそんなぼくを見てなんか勘違いをしたのか、ぼくの肩を軽くたたいた。

彼女はそのあと口笛を吹いて自分の仲間を呼び掛けた。


オランダ風の施設から数人がキョロキョロしながらでてきた。ぼくはハスタの仲間を見て失望した。

ぼくが考えたハスタの仲間って少なくとも若者の男が何人ある集団だと予想した。


ラクロス連中と中隊のように「戦士」集団はその人数だけで有利になる。一人でここで降りて来たぼくも薄々若者で男の「戦士」がどれぐらい重要なものだとをすぐ気づいた。


しかし、ハスタの集団って言うか、グループって言うか、この人達は全然役に立たないそう人だけだ。


一人は14才頃の中学生。

一人は同じく中学生ほどの男子。

老人の男も一人いるし、リーダはハスタだった。


これでは脱出のどころが生き残るのも難しい構成だ。多分、死んだ斎藤さんがこの組の攻撃組だっただろう。


さっき見た死んだ人の体格を考えれば、斎藤が盾になる間、この「仲間」たちが手伝う戦略なのさ。

今、盾である斎藤さんが殺された。ハスタがどれぐらい困った状況なのかは言う必要もない。


ぼくはこの「ハスタ組」の装備を見てもっとため息がでた。ごん棒と竹で作った原始的な弓。これでは当然にラクロスやつらに相手にならなかっただろう。


中学生はぼくが持っているやりを見てちょっと驚いたそうだ。やつの目をみたら、何を考えているのか簡単に分かる。


「この槍が欲しいのかよ。」

「あの、いいえ。そ、それじゃなくて。」

「そんな目で見ても無駄だよ。この槍はぼくも必要だから。」


ぼくは薄情にやつの願いを切った。当然だ。この槍をこいつに渡したらぼくも銃とスリングしか持っていない。


そして、ぼくがどうやってこれを手に入れたのか?ワナにかけられて死の寸前で考えた一手で、これも敵と戦って手に入れた戦利品だ。

武器になる物はここにもたくさんあるのに、中学生はなんか文句あるって顔でぼくを見ていた。


「七人のさむらい」かよ。ぼくは「さむらい」なんかじゃ絶対ないが、ハスタ以外の人がぼくを見ている目はその映画の中の百姓達とそっくりだった。


「おい、ハスタ。情報と交換する条件だったよ。忘れないで。」

「分かったわ。薄情なあなた。」


ハスタはわざと冗談をしてプッと笑ったあと、人達を導いた。さっき仲間を失って悲しいのに、ぼくと仲間を考えてわざと冗談をしたんだろう。ハスタのすぐ後ろには小学生の女の子がぼくをちらちら振り向いた。


あ、そうか。ここは殺人なんか平気でやっちまうどころだ。


女性性なんか想像しなくでもどうなるのか分かる気がする。人って法律がなかったら恐ろしい事もさりげないにやる動物だ。


女の子をレイプするのも同じだ。


彼女たちはきっと男であるぼくが怖いだろう。

さっきラクロス二人組も女子が自分達のワナに落ちて喜んだ。そんな状況でぼくが加勢しなかったらこの少女とハスタは多分・・・・。

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