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終わった?

「うあああああああああああああ!」


太田が最後に残した志野くるみの話を考えたらぼくはもう正気じゃなかった。

ぼくが奴隷から逃げたあと、学校の中はどうだったのかよ。


なぜぼくは自分の代わりに新しい奴隷が選ばれた事を気づかなかったのか!


あの日、トイレでぼくに伸ばした手が忘れない。志野さんこそ勇気ある人で、ぼくよりいい人生を生きる資格があったのに!太田は、こいつはその可能性すら全部奪った。太田を逆らったと言うふさけた理由で、彼女をあんなに!


ぼくは太田を刺してまた刺した。


そして、銃剣を握っている手を誰かが握った。ももりんだった。


「もう、いいよ。死んだよ。」

「けれど!こいつは!こいつだけは許さない!」


ももりんは今度はぼく後ろでたきしめた。


「お兄さん、自分まで殺さないで。」

「なんだと?」

「お兄さんは自分まで殺そうとしているよ。やめて。もう。いいから。もう。」


ナミもぼくをたきしめて、ぼくは完全に崩れてしまった。


「そうよ。おじさん。もう終わったよ。すべてが。」

「ナミ、ぼくは。ぼくが卑怯に逃げて!あの人が!ぼくの恩人が奴隷になって悲惨に自殺した!クラスのみんなにレイプされて!」

「あなたの罪ではないです!知らなかったでしょう!」

「けれど!知らなかっただとしても!彼女は、志野さんはレイプされる瞬間でもぼくを心配して!」


ナミとももりんはなんにも言わなかった。ただナミがぼくの頭を撫でた。


「おじさんの責任じゃないよ。この人の話信じないでね」

「そう、おにいさん!ハスタねえさんもそう言ったんじゃない!あなたはいい人だよ!私たちを守ってここまで降りて来たから!」


ももりんもぼくの頭を撫でた。二人の少女はぼくを泣かせてしまった。少女たちの体温と心臓の音が聞こえた。まだ、生きている。


まだ。


ぼくは生き残って、太田は死んだ。やっと太田を殺した実感がやっと感じられた。

やっと太田を殺した。


いままで、頭の中で何度も何度も殺した太田をやっと殺したのになぜ痛快な気分じゃないんだ。日野を殺した時もそうだったし。なんだよこんな気分は。


この気持は。


この虚しさは。


この数年の間、ぼくが望んでいたのは太田とその仲間の死だけだった。


太田の死、そのゴールにたどり着いてその後の計画は全くない。ぼくはこれからどんな人生を生きてばいいのか?もし、この建物を出たら、ぼくはどんな人間として生きる事ができるんだ。


どんな人間として。


ぼくはもう十数人を殺した立派な殺人鬼だ。そんなぼくが日常に戻ってファミレスのみなさんと同じく平凡に生きる事が出来るのかよ!


ぼくの人生って、高校二年の時で永遠に止まっている。今太田を殺した後やっと気づいた。太田を殺しても、希望の扉なんかはぼくには開いていない。ぼくの時間は止まったままだ。


「けれど、いこうよ。みんな。せめてそれだけは。それは。」


そう、最後にぼくに残っている任務がある。

ぼくはアイディをオリンピックでメダルをかけるように首にかけた。ここには19層で死んだ中国人もいたたし、長のアイディもあった。ぼくはそのアイディをかけたままその場から立ち直った。


「みんないこう。一緒に花畑まで。な、ハスタ、森、長。みんな。終わったよ。ゲームは終わったよ。」


しかし、体に力が入らない。ぼくはそのまま前に倒れた。アイディがガラガラと地面にぶつかる音が

聞こえた。


「おにいさん!」

「おじさん!」


そう。ぼくは最後の突撃で太田の銃に撃たれた。さいわいに腹に撃たれて即死は避けたが、止血ができないから血が。血が。


ももりんとナミはぼくの体のどこで血が出るのが分からないはずだ。当然だぼくの全身は太田と血で血まみれだから。ももりんは慌てて泣き出した。


「どうしよう!どう!」

「ももりん。これ。預かってくれ。君が代わりに・・・・。」

「やだよ!やよ!罰が当たらなきゃ行けない人は私なのに!なぜ、兄さんが!ハスタねえさんを裏切ったわたしが!」

「そんなのどうでもいいじゃん。」


ももりんは慌ててぼくの腹に「バンドエイド」をつけてくれた。有名キャラクターのバンドエイド。それもハスタがくれた物だった。ぼくは黄色いバンドエイドを見て微笑んだ。


「分かったよ。道連れさん。弱音はもう言わないから。」

「兄さん!」

「いこう。」


そして、ナミがどこから走ってきた。


「こ!これを使ったら!これがあるよ!」

「そう!ナミよくやった!私も手伝うから!」


ナミは倒れていたショッピングカートを持ってきてぼくをそこに乗るって手振りをした。ナミとももりんは無理やりぼくをカートに乗せた。


「もし分けないな。ちょっと格好つけたかったけど。」

「そんなのいう場合じゃないですよ!ももりんさんもはやく!」

「え?わたしまで?」


ナミのももりんの背を押して彼女もむりやりカートに乗せた。ぼくはももりんを抱き締めてカートに座った。ナミは全力でカートを押すながら、ぼくに言った!


「この人が言ったでしょう!救急車を呼ぶ事ができるって!」

「あ!そうだな!」


ぼくは取引の時に通信した周波数を合わせてすぐ取引をしようとする瞬間だった。


タタタタタタタタター。


後ろから自動小銃の音が聞こえてナミはその場で足が止まった。また敵がいるのか!いや、この音は!ぼくらはピラミッドの前の広場にいる。このままじゃ危ない!


そして、弱り目に祟り目でショッピングカートが売台の段差にかかって横に倒れてしまった。ナミの力では力不足だった。ぼくとももりんはカートと一緒に横に倒れた。


「ナミ!ももりんを助けて先に行け!」

「え?おじさん!だって!」

「ハスタがぼくに託した最後の遺言だ!君たちはこの建物から出るのだ!そのためには何でもやるんだ!ぼくは!」


ももりんはぼくを見つめた。


「だって!やだよ!約束したじゃん!一緒に出るって」


ぼくはやっと森と19層の中国人、そしてハスタがどう考えたのか気づいた。

人のために犠牲した人は笑う顔で死を選んだ。ぼくもきっとそう笑っているはずだ。


「希望だよ。君たちはぼくの、この建物の中で死んだ人の希望だよ。人が殺し合う建物の中で黒い羊だけじゃいなかったと言う証だよ。」

「・・・・・。」

「ぼくはもういいんだよ。星があるから。ぼくには星が見えるから。」


ぼくは村田銃を握って後ろを照準した。だった一発残っている銃弾。


それは、酒呑童子の足をちょっとだけは引っ張る手段になった。そう、やつを殺す必要まではない。せめて、彼女たちが逃げる時間だけを稼いでもいい。


ぼくは熱カメラと銃のスコープをレジカウンターに照準した。そして、レジカウンターの後ろでなんかゆらゆら為ている何かが見えた。


「おじさん。あれってまさか。」

「ナミ!何をしている!はやく降りろ!」

「し、しかし、あれって!」


ぼくもカウンターの上に立っている酒呑童子を見て吐く寸前だった。

フラフラ服のように揺らしているのは人の肌だった。


虎や熊の皮のカペット装飾のように剥ぎ取った人間の肌だった。酒呑童子はそれをマントのようにかけている。それは死んだ女の子の肌だった。


「このやろう!許さない!てめえも許さない!」


長を殺した事もそうだし!この酒呑童子は生かしておけない!この建物の主だとしても!てめえだけは!


ぼくは銃をそこに照準した瞬間、急に眩しい光と共にサイレンが聞こえた。


「な、なに?」


すでに酒呑童子の姿はどこに消えて、ぼくが見ているのは明るくて昼間ような食品館だった。今まで薄く照らしている照明が一気に明るくなっている。ぼくも、ナミも、ももりんも周辺をキョロキョロしながら長いサイレンの音を聞いている。


「お、おじさん。」


ぼくはふっとあの紙切れを思い出してそれを見た。


7。ベールは各状況に・・・・・・よく覚え・・・・・。


まさか、このサイレンは?


「まさか、ゲームが終わったのか。完全に。」

「え?ほ、本当なの?」


ももりんは笑って喜びでぼくを抱き締めた!ナミも一緒に抱き締めてゲームが終わった事を一緒に喜んだ。


終わった。


そこにはぼくが殺した太田の屍体が倒れていて、本当にぼくら以外にはこの建物で生きている人はいない。そして、サイレンが止まって今度はオールド・ラング・サインがどこかにあるスピーカで出た。


ぼくはオールド・ラング・サインを歌詞を聞いて完全にあきれた。


主催側やろうはここで死んだ人たちを最後の瞬間まで揶揄っている。オールド・ラング・サインの歌詞はここで分かれるどころだが、きっとまた出会おうって言っている。


こんな建物に二度と入るもんか!オールド・ラング・サインの向うから人の話声が聞こえた。そして、歌はゆっくりと終わってなんにも聞こえなくなった。


ぼくが持っている無線機とタテモノのどころどころに隠しているスピーカも同時にノイズような音が聞こえた。


「今までご苦労様。精算の時間だ。」

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