ホワイトクリスマス
終業式を迎えたクリスマスの日。
並中学校3年2組の僕、綾小路隼人は新聞部の部室で窓の外を眺めていた。
外では雪が降っていて、景色を白く染めている。
アスファルトの地面はもちろん、木にも純白の雪が積もっていて、まるで絵本のようだった。
時刻は午前11時。
終業式の日のため、ほとんどの生徒は下校してしまっている。
残っている生徒はただ2人、僕と岩崎貴博だけだ。
「綾小路先輩、明日から冬休みですね」
「そうだね」
貴博が僕に明るく話しかけてくる。
その姿は、まるで人懐っこい子犬のようだ。
「だけど貴博、下校したんじゃなかったの?」
「クリスマスくらい……もう少しここにいたいんです」
貴博は僕の胸に顔をくっつけて呟いた。
長い睫毛が儚げな瞳を強調し、細身の身体とピンク色の頬は、どことなく華奢な少女を思わせた。
そして何を思っているのか、彼は僕の背中に腕を回し、僕が着ている深緑のブレザーに幾度か顔を小さく擦りつけている。
「た、貴博?」
「綾小路先輩、膝を少し曲げてもらえますか?」
「え? こうかな」
とりあえず言われた通りに膝を曲げて、小さく前屈みになる。
すると、その刹那。
「メリークリスマス、綾小路先輩」
「!!」
__チュッ
唇に伝わる、温かくて柔らかい感触。
貴博は踵を上げて、僕にキスをしていた。
「……ちょっ、貴博!?」
「僕からのささやかなクリスマスプレゼントですよ」
ふふ、と無邪気に笑う貴博。
小動物のような目で自分を見ていて、胸がキュンと高鳴るのが解った。
僕は返事をする代わりに、貴博の髪を撫でながらお返しのキスをしたのだった。
「貴博……今日、僕の家に泊まろうか」
「いいんですか?」
「もちろん。明日から休みだからさ、貴博とゆったり過ごしたいんだ」
「わぁ、嬉しいです! 綾小路先輩は天使ですね!」
「え、そうかなぁ」
「そうですよ。かっこいいし優しいし、僕の自慢の恋人ですよ」
「あはは、可愛い事言ってくれるじゃん。さあ、時間だからもう帰ろうか」