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名探偵・藤崎誠シリーズ

100万円玉

作者: さきら天悟

204X年、日本政府は発表した。


「新貨幣、100万円玉の使用を義務付けます」


これは政府が考え抜いた打開策の切り札だった。



203X年を超えると、日本政府は存続の危機を迎えた。

隣国との衝突、と言った外因ではなかった。

2000年を超えてから騒がれたCO2問題でも無かった。

Ai、人工知能の台頭だった。

Aiは人から仕事を奪って行ったのだ。

自動車の自動運転により、タクシーや宅配業者の仕事を奪い、

企業の中間管理職は、公平だと言う理由でAiの方が優れていた。

また映像関係では原画からアニメーションを作るAiが登場した。

このAiは2枚の原画をスムーズな動きで結びつることができた。

これにより多くのアニメーターに職を奪って行った。

多くのメディアは人の仕事を奪うAiを攻撃した。

「これ以上Aiを普及させるべきではない」と。

だが、本当に人の仕事を奪っているのは、Aiではなく経営者だった。

メディアはスポンサーである彼らを批判するなどできるはずもなかった。




100万円玉と言っても、金属ではなかった。

皿と言った方がいいかもしれない。

直径10cmの陶器製である。

各窯の名工が製作を担ったのだ。

有田、伊万里、瀬戸、常滑、美濃、備前など30か所以上で作られている。

偽物対策は万全だ。

1つ1つ手作りのため、真似できるはずがない。

もし、真似できたなら、もう一角の陶芸家になっているはずだ。

とは言っても、科学的なセキュリティーも万全。

1枚1枚形状、色彩が政府データベースに登録されるため、

照合すれば、本物か偽物か一発で分かるのだった。


この新通貨により、多くの人が職を得ると想定された。

陶芸家らは勿論だろう。

富裕層の外国人向けのみやげモノ屋も繁盛するだろう。

あと運搬業者、警備会社だ。

大金を無人で運搬するわけにはいかない。

それに金を運ぶ時、多くの警備員が常に必要となる。




じゃあ、ネットで送金すればいい、って?


使用の義務化であるため、ネットでの送金は課税対象になるのだ。

送金額の0.3%を納めなくてはならない。

政府はこの財源を失業対策に充てると宣言した。

メディアや経営は反対できなかった。

多くの失業者が拍手喝さいを送ったからだった。

本音では反対だったが、野党ネオ共産党が台頭し、

これ以上の貧富の格差は資本主義の瓦解を呼ぶことになると予想できた。



ある経済評論家だけは、大みえ切って反対した。


「円は急激に下落する」と。


その通りに下落した。

当たり前だ。

日本円が使いづらくなったので価値が下がったのだ。

しかし、円が下がると、輸出企業の景気が良くなった。

この円の動きを、当然政府は織り込み済みだった。

しかし、その後急速に円高になった。

この通貨制度を外国も真似したからだった。

もちろん、これも日本政府は織り込み済みだった。



だだ1点、この100万円玉には弱点があった。

それは・・・







100万円玉発効から10年が経った。

その年の秋のことだった。

南海地震が起こったのだった。

大阪、名古屋は津波の襲われた。

しかし、東京でもっと恐ろしいことが起こった。

高層ビル群が倒れたのだ。

想定をはるかに超えた長周期振動は

自慢の耐震構造を凌駕していった。

そして、恐れていた、多くの100万円玉に被害が出たのだった。


しかし、これも想定済みだった。

これを発案した元総理大臣太田と

老いても名探偵の藤崎誠は。

壊れたり、焼かれたりした100万円玉は価格の1/5の20万円払うと、

新たな100万円玉と交換できるシステムだ。

その金額は千数百億円と昇り、被災者や復興にあてられたのだった。

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