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竜種少女と静かに暮らしたい  作者: るっぴ
第三章 「時計仕掛けの大司教編」
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9 「聖門教団」

祈りな、あんちゃん。 その間に撃たせてもらうからよ!

   ――ブースターギャング、<過剰摂取>ブノワの言

吹雪いてきたのでアクエリアスを抱き寄せトレンチコートの内側に入れてやる。

大丈夫ですよ、とは言ってくるが嫌がるどころか照れた笑顔だったので安心した。

通りをひとつ過ぎると、目星をつけていたマーケットが見えてくる。

アクエリアスは「こんな夜中でも開いてるんですね。」と感心したように言った。

まあ俺の世界やここの生活スタイルの多様性を説明する必要もないだろう。

客が十分出入りしてるのを見れば分かるだろうから。


デリカテッセンのコーナーを見つけ、アクエリアスに好みのものを選ばせる。

ここは注文に応じてサンドイッチやらの好きな組み合わせを選べるタイプのようだ。

ハムやチーズ、フライドポテトも買っておくか。 冷めちゃうかな? まあいいか、

クッキーやチョコも喜びそうだし適当に。 でも、あまりかさばるのもなあ…あとは缶詰程度にしとこうか。

スパムミートにアンチョビ、果物、と…おや?

コーナーの角にうず高く積み上げられた、えらく安い肉の缶詰が目にとまる。 スパムの10分の1だ。

実質、ただ同然じゃないか。 こりゃいいや。 多目に買っておくとしよう。

ソイレンズ肉…? 聞いた事ないなあ。 まあ肉の名称じゃなくて、メーカー名や商品名なんだろ。 さっきのレストランの肉の名前も良く分からなかったし、気にしたら負けだな。

不況世代の日本人なめんな。

結構な量になった。 これだけ買えばアクエリアスも満足してくれるだろう。

竜気を炊くとかなりカロリー消費が激しいらしいからな。 アクエリアスがルビィ並みに痩せてしまうのも悲しい。 普通の女性から見ればうらやましい限りだろうけれどもね。


二人共に両手に紙袋を抱えて、特にアクエリアスはホクホク顔でジャック=フェレオルの家に向かった。


てっきりアパルトマンかと思っていたが、着いてビックリ一軒家だ。 大都市の街中、しかもグリーンエリアの一軒家なんてやるじゃないか。

竜種の長代理見習い補佐としてはちょっと負けた気分だ。

しかも娘がいるとか言ってたな。 奥さんと言わなかったのは別れたのか逃げられたのか。


庭の表門が開いてたので玄関まで進んでベルのボタンを押す。

アクエリアスは不思議そうな顔をしてたので、これが呼び鈴なんだよ、と教えてあげた。


ん…?


出て来ないな。 学生らしいから寝てしまったか。

それにしては何か違和感を感じる。 何だろう…何か異変がある。 無意識がそれを感じとっているのに知覚できて…

わかった! 電気だ! 玄関のポーチや庭からここまでも照明が無かった!

ソーサリスではある方が変だが、ってそれは今はどうでもいい。

俺はドアを直接、強くノックした。 駄目だ、返答がない。

何があったのか。 ドアを壊してでも中に入るべきか!?

くそっ、俺もスマートデッキがあればジャック=フェレオルと連絡が取れるのに!


俺の様子から自体を察したアクエリアスは庭を指差しつつ、俺の口をふさいだ。


これは!


足跡だ! 降りしきる雪で庭側には俺の膝上まで新雪に覆われていたが、そこにかなり新しい足跡がある。

出ていった跡は無い。 ドアがロックされている事を確認し、アクエリアスと頷きあって庭のほうへ回る。


テラスのガラス戸が割られている!

小声で竜気を炊けるか聞いたが、駄目だと言う。 あまり無茶はできないか。

じゃ、魔法で、と短く指示する。アクエリアスは魔法も得意だ。

今回の旅の相手に選ばれた理由もそれが一因だ。

割られてたガラス戸からリビングに入る。 暗くてよく見えない。

足元のガラス片がチャリチャリと小さな音を立てる。 音の質からして普通のガラスではないな。 強化ガラスか防音か。


「海さんッ!」


突如突き飛ばされ、床に転がされる。

アクエリアスがきゃあ! と短い悲鳴を上げ、鈍い打撃音が聞こえた!

打ち倒されたアクエリアスが俺の上に折り重なる。

ガラス戸が派手に割れる音で振り返ると二人の影が庭に飛び出し、高く跳躍して庭の外壁を越えていった。

二人でその影に向かって魔法を打ち込むも当たらなかった。


「アクエリアス、怪我の具合はどうだ? おかげで助かったぜ。」


「鉄の足で蹴られただけですから大丈夫です。 それよりジャック=フェレオルさんの娘さんの安否を。」


サイバーレッグの蹴りが平気なのか…頼もしいやら、呆れるやらだ。

それはともかく、ジャック=フェレオルの娘さんとやらが無事だと良いが。


「もう20.30分すればジャック=フェレオルが戻ってくるとは思うが、確かにこのまま待つ訳にもいかないな。 まだ暴漢の仲間が居る可能性も万が一で残ってる。 よし、俺は1階を探すから、アクエリアスは2階を探し――」


「パパの事を知ってるの!?」


ん? どこからか声が…アクエリアスが天井を見上げている。 2階からか? えらく薄い床だな。


「その声はジャック=フェレオルの娘さんかな?」


「はい! フランセット・トゥラランです!」


「何とも透き通った可愛い声だ。 こりゃあのジャック=フェレオルが天使と言うのも分かる気がするな。 本当に有翼人に変化したのかい?」


無事だと分かった途端、俺は軽口を叩いてしまう。 元気な返事と共に、天井の角近くにあったボードがパカッと開いて、にょっきりと足が生えた。

白い大きな翼が続いて現れ、何枚かの羽根を散らす。


「パニックルームにいたのか!」


「そ、そうなんです。 助けてくださ~い。」


天然ドジっ子か…梯子付いてるだろ、普通。 だが、今の俺は無駄に2mの大男だ。 フランセットの下に行って体を支えてやる。


「きゃあ! どこ触ってるんですか! えっち!」


うわぁ、面倒くさーい。 年の頃は11か12くらいの女の子だ。 面倒なので引き摺り下ろすようにして抱きかかえる。 ブロンドヘアーで碧眼の、あどけない顔がやや赤く染まっている。 白いパジャマが本当に天使の服みたいに見える。



「やあ、こんばんわ。 屋根裏の天使を助けに来たよ。」


とりあえず友好的な意思を示し変な事はしないよ、という意味を込めてちょっとおどけた事を言っておく。

羽根がパタパタと鼻をくすぐってきて、何ともむず痒い。

フランセットは危険が去って安堵したせいか、俺の顔を見つめて「あ、ありがとうございます…」とだけ呟くように言う。 そのままじっと俺の顔を見つめている。

東洋人が珍しいんだろうか。 アクエリアスがなぜか咳払いをした。 ああ、降ろしてやらないとな。

立てるか? と聞きながら足元から床に降ろしてあげようとしたが「あっ た、立てません。 怖いのでもうちょっとこのままで…」と、しがみつかれてしまう。


そこへ玄関のほうからバタバタと音が聞こえてきた。


「フランセット! 無事か!? 何があった!」


ジャック=フェレオルが飛び込んできた。 遅かったじゃないか。 奴は安心した表情を浮かべ――ないで、俺の所へ大股で駆け寄る。 人を殺しかねない鋭い目つきで…


痛ッ! 俺を殴った!?

なんでや!


「貴様! 娘を傷物にしやがって! お前のようなデクを信用するんじゃ無かった!」


うわ、もう滅茶苦茶面倒くさい勘違いをしてやがる。 俺は憮然とした表情のまま、フランセットに向かって頷き誤解を解くように促す。


「違うのパパ! 彼はとっても紳士的に私を抱いてくれたわ!」



俺はここで死ぬかもしれない。

多大な誤解を受けつつも襲撃者をかわす事に成功した海達。

避難の為、一時魔法院に戻る事になる。

次回、時計仕掛けの大司教編 第10話「一時撤退」

予告どおりに進まない事も、ある。

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