13 「大変身! レッドドラゴン顕現」
愛の力でルビィが華麗な変貌を遂げる!
「あんな大軍に勝てるのかしら…」
ルビィはショックから立ち直りきれてないようだ。
これこそ俺の出番、ルビィのモチベーションを上げ
最高の状態で竜にしてやらねば。
「もちろんだ! お前なら勝てるさ! なぜなら…」
「…なぜなら?」
ルビィが上目遣いで期待を込める。
お前なら勝てる、その確実な理由を教えてやろう!
「炎の竜なら、フロストジャイアントと相性が良い! 焼き尽くしてやれ!」
――(静寂)――
…あれ?
ルビィの反応が無い。
それどころか目が死んでる!?
ルビィは下を向き、わなわなと震え…
「バッカじゃないの! あんたってホント馬鹿ね!」
あれぇー!?
何で?
属性的な相性が間違ってたのか?
ひょっとして冷気属性って炎属性より強いってオチか?
ルビィは腕を組んでそっぽを向いてしまった。
頬をぷっくりと膨らませているようだが…
ポンッ!
あっ
変な音と共に、ルビィの額から角が生えた。
怒ると本当に角が生えるって面白いな…
って、遊んでる場合じゃないんだぞ。
あの角は竜気が第二段階、もう解除できない状態になったって事だ。
「とにかく、早く変身しよう! 巨人達が迫ってきてるぞ!」
「もう…知らないんだから!」
そんな俺達を脇で見ていたカチナが溜息と共に教えてくれた。
「海さん…ちょっとデリカシーが無さ過ぎると思いませんか?」
「デリ…えっ?」
「ルビィさんはそこは、愛し合う二人の力があればとか、
愛してるからとか言って欲しかったんですよ!」
えぇー…
今そんな事言ってる場合じゃないんですけど!
あと3分で俺達死にそうなんですよ。
俺の呆れ顔から内心を察したカチナが続ける。
「確かに生き死には大事ですが、乙女にとってはこれも命懸けなんです!
男の子がそれをわかってあげなくてどうするんですか!
むしろ不安になった時こそ、愛を確かめたいんです!」
怒られたよ…
いや、ここはルビィとカチナの言うとおりだ。
それが愛だろうと恋だろうと、義務感や使命感だろうと。
とにかく俺のやるべき事、それは気持ちよくルビィを送り出してあげる事だ。
その一点だ。
確かにキスをするなら雰囲気出したいってのは、考えてみりゃ当たり前だ!
ここまで苦境を潜り抜けて培った絆を、今こそ愛に昇華させる時!
正直、恥ずかしいけど! やる時はやるぜ!
俺はルビィの方へ振り向き、ザッと足音をわざと立てる。
真剣な顔で一度ルビィを見つめ、そこから笑顔を作る。
「ルビィ…その、すまなかった。
気持ちが焦るあまり、お前の気持ちを考えてやれてなかったよ。」
ルビィはそっぽを向いたままだが、耳がピクっと動いた。
片目を開けてこっちをチラ見してきた。
「ルビィの、明るく輝く太陽みたいな笑顔が俺は大好きだ。
自分も苦しい時に、俺に気を使ってくれる健気さが愛おしい。」
ルビィの手を優しく握る。
成すがままに任せてくれた。
再び期待を込めた眼差しで見返してくる。
「でも俺達はまだ始まったばかりだ。
絆を深める時間が…明日が必要だ。
こんな所で立ち止まってなんかいられない。」
ルビィの腰に手を回し抱き寄せる。
まるで羽毛のように軽い体のルビィは伏目がちになる。
もう城壁に手が届きそうなくらいにフロストジャイアント達が迫ってきた。
だが一歩遅かったな。
目をしっかり見開いて見ててやがれ!
「二人で明日を作ろう。
俺達だけの明日を。
愛してるぞ、ルビィ。」
目を伏せ、互いの唇を重ねた。
「ん…っ」
ルビィが喉を鳴らす。
普段でも甘い声が更に甘く、
そして酸っぱい様な刹那さが混じる。
俺はルビィの唇に沿って反魔力を注ぎ込んだ。
俺達二人は赤い…妙に桜色の混じったマナの風に溶け込んでいった――
一瞬にして竜巻と化したマナの暴風に俺は弾き飛ばされる。
館の脱出の時より、遥かに激しく急速に周囲のマナが吸い寄せられ
灼熱と共に発光しルビィを包んだ。
俺が見上げると脇にいたカチナが両手で顔を押さえている。
「海さん、何て大胆な! キャーッ! キャーッ!」
首と腰をくるくる回転させるようによじって照れている。
正直、やや死にたい気分だ。
30歳童貞としてはね…恥ずかしさで悶絶死してもおかしくないぜ。
「お二人の愛! 確かに見届けました! カチナ感動ですッ!」
「そりゃいいけど、伏せてないと風に飛ばされるぞ。」
ルビィを中心に赤いマナが発火し炎の竜巻と光の太い束となって天に昇った。
前回の変身の時より勢いが数倍だ!
これ俺達も巻き込まれて死ぬんじゃないの…
と、思ったらカチナが風の盾のようなもので覆ってくれていた。
兵士達が皆逃げ出した後で良かった。
直径100mのファイヤーストームだ!
空はいつの間にか暗く厚い雲で覆われており、
ルビィが光の柱と化すと、雲も赤い光を纏った。
地上の竜巻と光の柱は消え、ルビィの姿もそこには無い。
どうやら無事成功してくれたようだ…
炎があちこちにチラチラ燃え残っているなか、
俺は城壁の下に置いてあった騎竜具を取りに走る。
あそこまで言ったんだ。
騎乗して一緒に戦ってやらなきゃな!
空に再び精霊魔王ロンガロンガの姿が浮かんでいる。
が、胸部からは雲の中に達しているためその顔は見えない。
見たくも無いし、見えた所で仮面姿だがね。
「ななな…なんじゃあこりゃあーッ!
ビーッチ! アメイジーングビッチ! 糞赤い小娘ビッチが!
竜になった! なっちまいましたよォーッ!」
姿を見せる前に教えてくれるとはね!
ジャイアントたちのハカもかくやという程の声量の咆哮が天に轟く。
俺の耳にはそれがルビィの声として翻訳されて聞こえた。
「ハーハッハッハ! 燃える愛の戦士ルビィ! 華麗に誕生よっ!」
…なんだそれ。
普通にドラゴンって言ってください。
「凄い。 ルビィさんご機嫌ですね。 やっぱり愛が世界を救うんです。」
あー…俗っぽい。 愛とは口に出すのやめましょう。
お願い、恥ずかしくて死にそうだから。
って言うか、咆哮だけで機嫌が分かるものなのか!?
カチナにはルビィの声が聞こえてるのか!
雲を割り、ルビィこと赤き竜がその雄大な姿を現した。
フロストジャイアント達は口々にルビィを指差し、おののいている。
「んん…何か変だぞ。」
「凄く大きくて強そうですけど…どこが変ですか?」
「なんというか…その…デカ過ぎる。」
前回の館の時より、遥かにでかい気がする。
なんか巨人ばかり見てて遠近感狂ったのかなあ。
「きっと愛の力です! お二人の愛がいっそうルビィさんを強くしてるんですよ!」
死にたい。
俺の華奢な童貞ハートがむわぁ! って疼くよ!
ルビィは真っ直ぐフロストジャイアントの隊列に向かって降下し、
すれ違いざまに炎のブレスを浴びせた!
ただブレスを吐くだけではない。
吐き続け、横へ「振った」のだ。
それだけで数十人のフロストジャイアントが炎に包まれ地面を転がった。
ルビィはその混乱の隙に俺達の目の前に着地する。
「海! さあ乗って!」
「もちろんだ!」
俺は尻尾に飛び乗り、ルビィの背中を駆け上り首筋に辿り着く。
騎竜具はもちろん反応しないので、とりあえず手綱だけでもルビィの首に巻きつける。
これでハーネスを固定すれば振り落とされる心配だけはないだろう。
「きゃっ! 背中がくすぐったいじゃない。」
そんな事言われましても。
土足厳禁だったかもしれない。
高級ドラゴンだな!
「よしオーケーだ! いつでも飛んでくれ!」
「飛ばすわよ! しっかり掴まってなさいな!」
ルビィはブレスを吐いてフロストジャイアントを燃やしながら叫ぶ。
機嫌も上々のようで何よりだ!
でもブレス吐きながらしゃべれるのは何でだ。
ルビィこと赤い竜がひと羽ばたきするだけで、強烈な吹き降ろしの風が起こり
竜の巨体が浮き上がる。
「キャアッ!」
叫び声!?
俺が振り向くと、そこにはカチナがバランスを崩し落ちそうになっていた。
咄嗟に手を差し伸べると、上手くそれをカチナが掴んだ。
「カチナ! どうして!」
「私もお二人の仲間ですから!」
「危ないぞ! 騎竜具が無いと振り落とされる!」
ハーネスの予備をカチナに渡し、自分の体と結索する。
これで何とか大丈夫だろう。
「あっ、もしかして愛し合う二人のお邪魔をしてしまったなら申し訳ないです。」
「あのなぁ…まあ地上にいたら炎のブレスの巻き添えもあるから、この方が安心か。」
ルビィがもう一度大きく羽ばたき終える頃には、もう空高く飛び上がっていた。
「やあねえ、カチナ。 愛し合うだなんて! もー…ふふっ!」
恥ずかしさで胸が引っ掻き回されるようだ。
うふふっ、と上機嫌で笑うルビィ。
だが外に聞こえるのは恐ろしい竜の咆哮だ。
「なあルビィ…言おうと思ったんだが。」
「どうしたの?」
「お前、前回より更に大きい竜になってるぞ。」
「ホント!? 愛の力でパワーアップしたのかしら!」
連呼しないで。
童貞ハートはもうグズグズよ!
「余裕で前回の1.5倍はあるな。 魔力王の時の水晶竜くらいのサイズだ。」
「素敵です! 愛の深さが強さになるなんて!」
カチナが目をキラキラさせながら嬉しそうに言う。
ドラゴンを目の当たりにした事より、恋愛の方が大事とは乙女ですな。
俺としては時間制限のほうが気になってしまうが。
だが、考えようによっては好都合!
「一気にカタを付けさせてもらおう!」
「燃やし尽くしてやるわ! 愛の炎で!!」
勘弁して。
俺が恥ずかしさで炎上しちゃう。
ルビィが大きく旋回し、フロストジャイアントの隊列に踊りかかった。
さあ、ここから反撃の大攻勢だ!
巨大な赤竜となったルビィは霜巨人を圧倒する。
だが、精霊魔王ロンガロンガにはまだまだ戦力があったのだ。
目には目を、炎には炎を。次回、伝説のタイタンバトル編 14話 大炎上決戦
巨大な巨人が大きく巨大化し天を突く。




