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竜種少女と静かに暮らしたい  作者: るっぴ
第二章「伝説のタイタンバトル編 巨人族との大乱闘!」
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10 「城壁の大攻防」

タイタンバトル、始まります!

決めたら早いが俺達は城門へ向かって走り出している。


「なあルビィ。」

「ん? なあに?」


俺は息も絶え絶えだが、ルビィはスキップするような足取りだ。

ルビィが凄いのか、俺が情けないのか。

両方でした。


「さっきは重い話で、これからも俺はその事を折にふれ考え続けるが…」

「うん。」


「ひとまずは助けると決めた。

 ならば戦いが終わるまでは戦いに集中しよう。」

「そうね!」


「つまり、重い気分じゃ勝てるものも勝てない。

 ガツンと派手にいこうぜ、って事だ!」


「当ったり前よ!」


ルビィは八重歯を覗かせて笑った。

よし、ルビィはこうでなくちゃな。


「ところで…」


俺は振り返って訊ねた。


「なぜカチナが着いて来る? 危ないから避難してて欲しいな。」


「わたしですか? 大丈夫です! こう見えてもシャーマン見習い、

 戦いの術だっていくつか心得がありますよ!」


鼻息も荒くドヤ顔で言い切った。


「それに、先ほどのお二人の言葉を聞いてはじっとしてられません!

 虐げられたからと言って、相手が困った時に手を差し伸べないのであれば、

 いつまでたっても溝は埋まる事がないでしょう。」


そうは言うがな…伏して頼み込んでくる前に動くと、人間つけ上がるものなんだよ。

俺達はそれを経験してきた。

だが、口で伝えても理解できまい…そう思うと反論の言葉は消えてしまった。


城壁は5m程もあったが、ルビィは三角飛びで一気にに城壁の上へ登った。

城壁の上にいた兵士達がそれでルビィを竜種と認識し、

強力な援軍の到来に歓声を高らかにあげた。


俺が城壁の階段を昇りルビィの隣に着いた時には

もう巨人族も城壁にかなり接近して来ていた。


巨人族は丘巨人(ヒルジャイアント)

身長は3mを越え、ほぼ木の枝を切り落としただけの粗末な巨大棍棒と、

木を張り合わせただけの盾だけで、背中に何本かの丸太の槍を背負っている。


足は裸足、服は動物の皮の腰みのだけだ。

数は約500程度らしい。


城塞都市の兵力が各門に1000人程度配置されている。

実際に城壁の上にいるのが300ほどで、

あとは交代や補給要員、増援待機だ。


丘巨人はいくつかの隊にまとまって門を打ち破らんと進撃してきた。

遠くに次の巨人の隊が見える。


「海、どうする? 撃って出る?」

「いやあ、止めとこう。外に出たら、俺は一瞬でミンチだ。」


「出るのはあたしだけでいいのよ!」

「そうなのか…離れると心配だな。」


「大丈夫、あたしを信用しなさいな!」

「ああ、戦場でルビィ達程、頼もしい相棒は他にないさ。」


ルビィは鼻をフフンと鳴らし上機嫌だ。


「だがあっちにも後方に援軍が来てる。

できるだけ城壁で戦おう。」

「わかったわ!」


攻城戦は地味な形で開幕した。

兵士達は近づく丘巨人に弓矢を射掛け、

巨人は盾を掲げて防ぎつつ城壁にたどり着く。


丘巨人の長身でも城壁の上には手が届かない。

よって城壁を突き崩そうと壁を叩く。


兵士達は城壁に広がり回って、角度を付けて斜め脇から矢を射掛ける。

上から石や煮えた油を投げ落とす。

後ろの巨人が丸太槍を投げる。

落ちてきた石や崩した城壁の瓦礫を投げ当てる。


拮抗した攻めと防御が続いていた。


ルビィはというと、兵士から弓を借りて物凄い勢いで射掛けていたが、

すぐに弓の弦や張りを壊してしまい、兵士から呆れられていた。


地味な戦いがとにかく似合わないパワー型だし、性格的にも向いてないな。

口を波打つように、ふぬぬ~と何だか可愛らしく唸って、


「埒が開かないわ!」


埒が開いたら負けなのが城塞防衛なんですけど。

ルビィは巨大剣をひとつ、両手に握り

俺が静止する間もなく城壁の外に飛び出した。


低い身長――直接本人に言ったら怒るから黙っておこう――を生かし、

丘巨人達の足元を止まる事無く縫う様に駆け回り、

その足を片っ端から切りつけていった。


足元を切りつけられ、掲げてる盾を下げれば矢や岩が降り注ぐ。

丘巨人達はルビィを踏みつけたり蹴ったりして止めようとするが、

人間離れした速度のルビィを捉える事は適わなかった。


ふくらはぎ、アキレス腱を次々と傷付けられ丘巨人が雪崩にあったかのように

倒れ始め、大きく混乱し壊走状態になっていった。


ルビィが俺のとこへ帰還し、俺は水の入った皮袋を手渡してルビィを労った。


「お見事。一気に壊滅させたな!」


手を腰に当てて胸を張るルビィ。

ただし凹凸は無い。


「次の部隊が接近するまで間がある。しばらく休むといいよ。」


「次のも蹴散らしてやるわ!」


どうやら高揚してるご様子。

壊走していく丘巨人に見向きもせず、次の部隊が前進してくる。

先ほどの丘巨人に比べて綺麗に隊列を組んでいる。

少し違うタイプの巨人みたいだな。


城壁の兵士達は崩れた壁を木材で補修したり、

待機していた部隊と入れ替わったりで準備に忙しい。


カチナは負傷兵の手当てやら色々手伝っている。

先ほどは風の精霊の加護とやらで弓矢の威力を増していた。


「いってくるわ!」


唐突にルビィが飛び出した!


「ちょっ! 待っ…!」


まだ何百mも離れていると言うのに、敵部隊に向かって走り出していた。

褒め過ぎて調子に乗らせてしまったかな…


隊長が教えてくれた所、あれは石巨人ストーンジャイアントらしい。

身長は5mに達し、普通の食べ物に加えて石を食べる習性がある事で知られ、

肌が岩のように硬いのだとか。

その代わり、巨人族の中では一番動きが硬くて鈍い。


城壁の上から見てると、ルビィがまるで点のように小さくなった。


おっ、敵陣に飛び掛った!


ぺちん。


あっ


巨人に叩き落とされた…


砂煙を上げてボコられてる…


あっ


巨人と砂煙の中から抜けて逃げ出してきた…


てってって、と足音が聞こえてくるようだ。


砂と土まみれになり不機嫌な顔で、のそのそと俺の前に戻ってきた。

俺をジト目で睨み、ガーッとまくし立てる。


「あんなの勝てるわけ無いじゃない! ゆうに5mはあったわよ!」


「いや…ルビィが勝手に飛び出していったんじゃないか…あれは石巨人って言うらしいぞ。」


「身をもって知らされたわよ! 全身鎧を着込んでるみたいだったわ!」


正直、生きて帰ってきただけでも御の字なんだが。

ルビィのパワーとスピードがあるから笑い話で済んだが…


「しかし厄介だな。あれじゃあ弓矢も効果がなさそうだし。

 手を伸ばせばあっという間に、石壁を登られる。攻城戦にはうってつけの巨人だな。」


偵察の飛行部隊によると、数は400余りだという。

しかも後方には更に増援が来ているそうだ。


再び空中に巨大なシャーマンの映像が浮かび上がった。


「おお~ッ? 人間の中にも、ちったあやる奴がいやがりますネェ~ッ!

 特にヴァルベルデ城砦の赤い小娘とホークンモリアの銀髪と青いの!

 憎たらしいですンンンンッ! こんなに簡~ン単~ンに丘巨人を倒すとは!

 でも石巨人はそうはいかねェぜ、ってなモンですよ!

 さあ死ね。今すぐ死ね! 朝から晩まで死に続けろォン! ハウガレ~イア~ッ! ホロロロロ!」


俺とルビィは互いの顔を見つめた。

クリスタとアクエリアスの事だ!

ルビィの顔も、ぱあっと花が咲いたように笑顔になった。


「向こうも頑張ってるらしいな!」


「ええ、無事みたいで良かった! こっちも負けてられないわ!」


このロンゴロンゴとかいうシャーマンは俺達の事は知らないみたいだな。

余計な情報が仇となった事にも気付いてはいまい。


「使うわ。 竜気を!」


「えっ、待って! 敵の総戦力が把握できないうちは、迂闊に使わないほうが…」


遅かった。

本当に後先考えないタイプだな!

まあ俺の反魔力も試したい事があるし、何とかなるか。

万が一なんともならなくても仕方ない。


俺達竜種はあくまでも加勢、応援だ。

死ぬまで戦ってやるほどの義理も無いさ。

言う必要の無い事だから人間達には教えないけどね。


赤い光を伴うマナの風を纏う様にして、ルビィはニカッと笑った。

あの八重歯ぐりぐりしてみたいな。

と、不埒な事を考えつつ、


「なるべく竜気の吸収は抑え気味に頼むぜ?」


と言って背中をポンと叩いて送り出した。

ルビィは置いてあったもう1本の巨大剣も拾い、城壁を飛び出す。


石巨人は文字通り足並みを揃えてきて、一歩踏み出すたびに大地が鳴動する。

威嚇の効果も狙ってるんだろう。


二歩三歩と踏み出し、掛け声を揃える。


「ッオウッ! ッオウッ! ヴォアーッ!」


一斉に口から岩を吐き出した!

食べた石を戻す事もできるのか!

これだからファンタジーは嫌なんだ!


「ゼーィ! アッ!」


一斉に石を投げつけた。

岩の雨が城壁に降り注ぐ!


こんなのどうやって避けろってんだ!

俺の目前に岩が飛来し、視界を灰色一色に染めた。

おさらば。



…しない? 生きてる?

ゴトンと音を立てて岩が俺の目の前に転がり落ちる。


「大丈夫です、海さん。 私がお守りします!」


カチナが俺の前に立っていた。

紐の飾りや羽飾りが付いた木の短杖ワンド

カチナの目の前でくるくる回転している。


どうやら風か何かで盾を作り出してるらしい。

カチナと俺を中心に赤い煌きのマナの流れが見える。


「助かったよ…またカチナに命を救われたな。 本当、ありがとな。」


「どういたしまして。」


カチナはにっこりと笑って言う。

ルビィはどうなった!?


あちこち崩れ始めた城壁に身を乗り出してルビィを探す。

どこにも居ない。


いや、岩が何十個も重なって山になっている所がある。

まさかルビィが…!?


「こんな石ころ当てたくらいで、このあたしが泣くとでも思ってるのッ!?」


ルビィの声が響いた。無事だったか…

それにしても、殺すとか、倒すじゃなくて、泣くなのか。

こりゃ全然大丈夫だろうな。


ガゴンッ!


激しい音がして岩の山が飛び散る。

ルビイが岩の塊を蹴散らしたのだ。


西遊記の孫悟空か。

じゃあ俺が三蔵法師か。


今度パンチとかされたらお経を唱えてやろう。 お経知らないけど。


ルビィは何を思ったか、その場で岩を拾いあげ

石巨人にぽいぽいと投げつけ始めた。


石巨人も投げ返し、ルビィと地獄の雪合戦のような様相を呈している。


「あれ、真面目に戦ってるんだろうか。」


「ええ…ルビィさんは本気だとは思いますが…」


遠目から見てる上にパワーとサイズがそれぞれおかしいから、

絵的にはギャグにしか見えない。



ああ…普通の物理法則の世界に帰りたい。



常識が恋しい。

ちょっと長かったですかね?

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