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竜種少女と静かに暮らしたい  作者: るっぴ
第二章「伝説のタイタンバトル編 巨人族との大乱闘!」
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8 「ヴァルベルデ大城塞都市にて」

城塞都市へは1日半で着いた。

カチナがやたらと大荷物なのでそれを訊ねると、

毛皮を売って換金したいのだそうだ。


氏族の数少ない現金収入なのだたという。

街の外で暮らしてればそうなんだろうな。


夕暮れ前だったが、街へはすんなり入れた。

どうやらこの街までは俺達が指名手配されていないようだ。


カチナは市場で毛皮を売ってくるそうなので、

後に中央広場で落ち合うことを約束して二手に分かれた。


俺達は街中の衛兵に竜種の道場の場所を尋ねる。

上手くすれば匿って貰えるかもしれないからね。


俺達は旅の剣士という事にして田舎から道場に挑戦しに来たのだ、

というストーリーをでっちあげて話を引き出した。


だが、衛兵の口から出た話は芳しいものではなかった。


「詳しくは知らんが、あそこはもう誰もいないぞ。

 人員配置リストからも外されてるからな。」


そんな…ここの竜種達も追われてしまったのか!

教わった場所へ急いで向かうものの、やはりそこは空き家になっていた。

窓やドアは上から全て板が打ち付けてあって入れない。


「アテが外れたな…」


「そうね。 仕方ないわね。 あんまり期待もしてなかったからいいわよ。」


お互いに大事な言葉は避けつつ虚しい言葉を交わした。

俺とルビィはうらぶれた感情に陥っていたんだ。

むしろ人間と言う存在に呆れきっていた、というべきか。


「中に入れないかしら? 同じ竜種に向けて何かメッセージが残ってるかも。」


「衛兵はここには居ないけどすぐ近くの角に立ってる。

 どうしてもやるなら夜中しかないかな。」


ひとまず館の中に入る事は諦めた。

街を離れるまでに1度入ればいいだろう。

重い足取りで広場へ向かうと夕刻だと言うのに市場は騒がしい。

それは賑やかな喧騒ではなく、何かのトラブルによる野次馬の喧騒だ。



騒ぎの主人公はカチナだった。



俺達は人混みを分け入ってカチナの元へ辿り着く。

こんな時ルビィの馬鹿力はありがたいな。


カチナが商会の男に声を荒げ抗議している。


「そんな値段では取引になりません! どうか公正に扱ってください!」


「姉ちゃん、これでも公正じゃねえってんなら他所へ行ってくれ。

 ウチがお前らと取引してやってるだけでも有難いと思うべきなんだぞ?。」


「どういう意味ですか!」


「言わせんなよ。先祖返りして怪しい儀式だか何かをやってるような

 野蛮な奴らと誰も関わりたく無いんだよ。」


「私達は野蛮などではありません! 精霊の教えと導きに…」


「ほら、そういうのだよ。 頼むから他所でやってくんねえかなあ。」


俺は心底うんざりした。

ここでも同じ事が起きてるのか。

ルビィが俺の影から注意を促して、その商会の男の胸元を挿す。

人間教のシンボルらしい粗末な小さい金属の装飾品が見えた。


俺はカチナの肩を叩いて間に入る。


「あっ 海さん、ルビィさん。 すみません、お恥ずかしい所を…」


「いや、いいよ。 こっちもダメだったしね。 話は大体分かった。

 毛皮はひとまず今日は諦めて、また明日にしないか?」


「それが…」

「どうした?」


「いえ、海さん達もダメだったとなると、今夜街で泊まる宿賃も無くて…」


カチナが俺に耳打ちでそう囁いた。

そうだったのか…

俺達も文無しだしなあ。


「いいよ。 一晩くらい何とでもなるさ。 街の外で野宿したって構わないよ。」


ここにこれ以上留まってるくらいなら、裸で一晩過ごしたほうがマシだ。

投げやりな気分でカチナの背中を押すようにその場を去ろうとすると、


「ま、まあアンタらは普通の人間らしいし、アンタらから買うって事であれば

 もう少しまともな値付けしてやるぜ?」


俺は一瞬かっとなった。

こいつぶん殴る!

しかしルビィが俺の腕をぐっと掴んでてくれたおかげで、

その衝動は表に出る前に霧散した。


結局カチナが交渉し、ルビィが通訳するような変な形で取引が成立した。

それでも相場のほぼ半値だった。


俺は頭の先から足元まで不機嫌の塊のようになったが、顔と態度には出さないようにした。

カチナとルビィのほうが辛い立場だろうから、と思うと

年齢的には俺が一番冷静になっておかないといけないからな。


安宿を確保して食事を取ると、ルビィと明日からの行動の相談に入る。


「さて、道場で旅支度をしてホークンモリアへ向かう算段は崩れちまったな。」


「少し街でお金を稼いで武器を買って、武芸者を装って商隊に潜り込みましょ。」


「それはいいな。 でもルビィは腕があるからそれで万全だが、俺はどうしようか。」


「魔法使いでいいじゃない。 何とでもなるわよ。」


アバウトな考えだが、その楽観論はこの際頼もしいね。

賊が出て、かつ相手側に魔法使いが居れば俺の実力も発揮できるが…

まあいざとなったら雑用でも何でもやってみるさ。


「じゃあカチナとは明日が最後だな。色々世話になったよ。

 いつか必ずお礼をしに戻ってくる。」


「恩に着せるつもりはありません。

 長からもしっかりお世話するように言われてますし。

 お二人が街を離れるまではご一緒しますね。」


「族長が? ルビィはともかく、俺は妙に嫌われてるように感じたけどなあ。」


「長は言っておられました。

 竜は非常の力、なれば時が来るまで守るが我らの務め、と。」


「!! …竜の事に気付いていたのか!」


「あれ? 言ってませんでしたっけ? ふふっ

 それに私、こう見えてもシャーマンなんですよ。 まだ見習いですけど。」


流石はグレートスピリッツ。

何でもお見通しか。


「非常の力、ってどういう事よ?」


「本当に危機が迫った時のための切り札、って事だよ。

 だから逆に軽々しくその力を使えば竜自体が災いの元となる、って族長は言ってるんだ。」


「ふうん。 ちょっと説教臭いわね。」


ルビィが声を少し低めて文句がましく言う。

俺は族長が親切でそうしてくれてるのだと感謝した。

恐れから族長がそうしたのだ、とは露ほども思わなかった。


そもまま布団の上で明日からの路銀稼ぎの相談をしているうちに、

いつの間にか俺は眠ってしまったようだ。


だが、日が昇りきる前に激しい警鐘の音で目を覚ます。


「敵襲! 敵襲ーッ!!」


と衛兵達が叫びながら走り回っている。


ルビィとカチナは既に起きていて、いつでも動けるように荷物をまとめていた。


「敵襲って…どういうことだ?」


眠気を追い払うように頭を振りながら訊ねた。


「暢気ね! 巨人族の予言を忘れたの!?」


ああ、そうだった!

予言なんて外れてナンボの世界から来た俺は

どうしてもその手の事を重要に捉えられないな。


でも巨人族の相手は、まさにこの目の前の少女ルビィことレッドドラゴンだ。


「丁度良いわ! この混乱の隙に道場に入りましょ!」


「何て事考えてたんだ。 だが…大いに賛成だ!」


予言が何と言おうと、今の俺たちが即座に矢面に立つ必要も無い。

別に竜種を狙って挑戦状を叩きつけて来た訳でもないしな!


俺はルビィとにやりと、ちょっと悪い顔して笑いあった。

カチナは目が点になっている。


追剥強盗、ルビィ&海、華麗に復活だぜ!


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