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竜種少女と静かに暮らしたい  作者: るっぴ
第二章「伝説のタイタンバトル編 巨人族との大乱闘!」
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1 「異世界大Uターン」

今回のヒロインはルビィになります。

小柄だけど元気な子犬のようなルビィと、海の冒険にお付き合いください。

「さあソーサリスに戻るわよ!」


ルビィが取りつくしまもなく俺の襟首を引っ張る。

相変わらずの馬鹿力だな!


何を言っても通じなさそうなので、俺は憮然とした。


せっかく抱き付いてくれてるクリスタの感触をじっくり味わう暇も無いとはね。

有無を言わさずクリスタごと俺はベッドの上に開いた黒い星門へ放り込まれた。


そこはつい30分前までいた星の世界だ。

もう見飽きてるんですが。


「やあ、星渡り。久しぶり」


俺に星渡りと呼ばれた小さな妖精がそこにいた。


「あっ! 魔法使い! せっかく送り出したのに、まだその世界に居たの!?」


そうか。ソーサリスから戻った時は星渡しにやってもらったから、

星渡りから見たらそんな感じなんだろうな。

説明するのもややこしいから黙っておこう。


俺と3人の竜種少女達が全員星門に入ると星渡りがなにやら呪文を唱え始めた。

何かに突き飛ばされたようにガクン! と加速する。


俺達は宇宙の流星と化した。

そして再びソーサリスの地へと舞い降りるのだった。


せめて1年、いや3ヶ月でいいから、いやいや1週間でいいから休暇を…

俺は本気で星に願いを込めたよ。


まあ今は俺達が星になってるようなもんだけどね。



ヒュボウッ!


黒い星門を再び通り、異世界ソーサリスへ突入した。

さあどこに落ちる!?


なんて、思う間も無く水中に落ちた。

また風呂か!


俺はクリスタと抱き合いながらお湯の中から体を起こした。


「ふう…こんな形で風呂に入れられるとはね。」


言いながら俺の視線はクリスタの胸元に吸い寄せられる。

水を吸ってクリスタの体にぺったりと服が張り付き、体のラインが露わになってる。


クリスタは体をひねって両腕で胸元を隠し、ちょっとすねたような表情でこちらを睨む。


「だっ、ダメですよっ!」


ルビィが俺の頭を両手で挟むようにつかみ、右に90度グイッと回した。

痛い! 折れちゃう!!


「殺す気か!」


「ほんっと! 海は相変わらずスケベね!」


健全な男子と言って頂きたい。


浴室の入り口から婆様とエミィが顔を出した。


「おお、戻ったか。海よ、久しぶりじゃの。」


「お兄ちゃん! おかえりなさい!!」


エミィが飛びついてた!

俺はエミィを支えきれずに再びお湯の中へと倒れこむ。

そのまま湯船の中で足をバタバタさせて顔をぐりぐりと押し付けてくる。


魂の妹よ、元気そうで何よりだけど俺そろそろ呼吸困難になりそうだから助けて!

あと竜種のパワーでぐりぐりされると内蔵が口から飛び出しちゃう!



そのまま上がって着替えよう…と、思って風呂場を出ようとしたら

クリスタに手でストップの合図をされた。


「海くんはそのままお風呂です。ちょっと汗臭かったですよ?」


「おっとゴメン。 でも俺の中での時間は魔力王を倒した直後だからね。」


お言葉に甘えてひとっ風呂浴びる事にした。

エミィがスポーン! という効果音でも出しそうな勢いで服を脱ぎ始めたが

クリスタに首根っこを掴まれて引っ張っていかれている。


体を洗って湯船に入ると、疲れが押し寄せてきて危うく寝そうになったので

急いで体を冷水で覚まし風呂から上がった。


リビングに入ると皆が俺を待っていてくれた。

クリスタがまた涙目で目の端を人差し指でこすりながら言う。


「海くん、改めて…おかえりなさい」


「ああ、ただいま。クリスタ、みんな。」


ルビィもアクエリアスも、婆様もエミィも口々におかえりと言ってくれる。

俺は不覚にもぐっと来て目頭が熱くなったよ。


こちらでは大分時間が経ったみたいでおかえりと言ってくれてるが

再会を喜ぶほどの時間は俺の中では経ってない。

代わりに、魔力王を皆で倒し平和を取り戻した感動がとても鮮やかだ。


俺はこの場所を、皆の笑顔を守れたんな。

そう思うとうっかり涙目になってしまった。



「それで、また新しい事件だそうですが…」


「うむ、人間教の事なのじゃが、まずはあの時の爆発の所から話をせねばならぬの。」


全員で食事の祈りを捧げて再会の宴が始まる。

俺が持ってきたコンビニの弁当やお菓子も供すると、

姦しい嬌声を上げながらクリスタ達は喜んで食べていた。


「お願いします。」


婆様に向かって言うと、「疲れてるだろうに、すまんの。」と前置きを一つ。


「まず、一年前お前が魔力王の結晶を取り込んで起きた爆発、

 あれは研究され今ではザ・マナサージと呼ばれるようになった。」


「マナ・サージ?」


「うむ。あの魔力王ドルゲスタがただの魔法使いであった時に研究していたもので、

 極限まで魔力を圧縮して開放させると爆発に等しい現象が起こるのじゃ。」


俺は無言で頷く。


「その魔力による爆発は物質界には何の被害も無い。

 だが世界中に普遍的に存在するマナを刺激し、非活性化していたマナをも目覚めさせたのじゃ。」


ちょっと要領が分からなくなり始める。


「要はあの時を境に、ソーサリス全土にマナが満ち溢れたのじゃ。

 お前が呼び水となって井戸が満たされたようにの。」


「呼び水…ですか。」


「世界中にマナが溢れておる。今では目で見えるほどにな。

 お前は竜の伝説を蘇らせただけでなく、伝説の時代をも呼び起こしたのじゃよ。」


絶句してしまった。

伝説の時代だって!?


「そうじゃ。マナが溢れたのは世界だけではない、生きとし生けるもの全ての体にマナは溢れてるのじゃ。

 多くの者達が溢れるマナで満たされ、本来の姿を取り戻した。」


「本来の姿…?」


「ああ、長い時の中でマナは徐々に非活性化し、世界と体からマナが減っていった生き物は変化していた。

 それが本来の姿に戻ったのじゃ。今後何万年もかけてまたゆっくりと非活性化していくまではな。」


またぞろカーラマンみたいに腕が6本の人間が外では溢れかえっているのだろうか。


「このユーピガルも、人間の大半が亜人種デミヒューマノイドに戻った。

 エルフやドワーフ、丘小人ホルビット、獣人、巨人、トロール…もろもろにな。

 人間のままで居たのは3割程度に過ぎぬ。」


「そういやドワーフとかエルフとか見た事ありませんでしたね。街中のせいだと思ってましたが。」


「長い平穏のなかで歴史から姿を消していたのじゃ。どこに隠れているのか誰もが不思議がっていたが

 まさか血脈の中だったとはの。じゃが、考えてみればわしら竜種もそうだったのじゃ。」


「なるほど…じゃあ今日から俺の二つ名は涸れ川じゃなくて呼び水の海って事にしよう。」


婆様はけたけたと妖怪じみた笑い声をあげて手を振った。


「ならぬならぬ! わしが付けた有難い二つ名を変えようじゃなんて罰当たりだて!」


俺はハハと形だけ笑いながら、心の中だけでクソババアと悪態をついた。

なんでそんなに気に入ってるんだか…


「それで、その変化したのが問題だったのじゃ。今やソーサリスは人間じゃない者が大半、

 それでも人間は都市に集まる習性があるのか、街中じゃあどこでも最大勢力らしいがの。」


「ははあ…何か分かってきましたよ。人間だけのコミュニティが出来てきたんですね?」


「その通りじゃ。異人種に満たされて人間達は寄り添うように集まっていった。

 特に権力者、貴族や豪商などは変化したものが極端に少なかったため、

 自分達は神に選ばれた、純粋で神聖な人間だと喧伝するようになったのじゃ。」


「なるほど。」


「そして誕生したのが人間教じゃ。血の純粋さを何よりも尊び、他種族を疎んじておる。

 貴族や豪商達が中心にいるだけに資金力にモノを言わせて爆発的に勢力を伸ばしたのじゃ。

 まあ、内々で血筋を自慢してるだけなら良いのじゃがの…」


「何か問題のある行動でもしてるんですか?」


お菓子を頬張って嬉しそうな顔をしていたルビィに突然火がついた。


「奴らはね! 異種族の代表として私達竜種を目の敵にしてんのよ!

 正面から殴ってくるならまだしも、ネチネチと嫌味ったらしい!」


婆様がルビィをたしなめてから俺に言う。


「まあそんな所じゃ。彼等から見れば竜種が異種族の代表に見えるのは仕方あるまい。」


「確かに。経緯から察すれば、竜が異種族を引き連れてきた、

 人間を変化させたと捉えられても無理からぬ事に思えますね。

 何より、その責任の一端は明らかに、そして間違いなく俺ですし。」


クリスタがテーブルに身を乗り出す。


「海くんは何も悪くありません!」


嬉しいけど顔近い! 近いよ!

頬に食べかすがついてなければ、そのまま抱きしめたいくらいだよ。

婆様が手を上げてクリスタを制す。


「おおよそのあらましはそんな所じゃ。元より竜種はこの館に軟禁されているようなものじゃったが、

 いよいよ風当たりが強くなってきての。ご覧の有様じゃ。」


婆様が立って窓際に立ち俺を手招きする。

窓を少し開けて外を覗くと…


道場は衛兵に包囲されていた。

なんて有様だ!


時間は夜だが、かがり火まで焚いて寝ずの番らしい。


「恩に着せるつもりもないが、それにしたって恥知らずも甚だしいなこれは。」


思わず俺は呟いてしまった。


窓の隙間から見えるだけでも衛兵と衛兵が手を伸ばせば触れるくらいの間隔で並んでいる。

婆様の言うには、人間から守ってる名目らしいが…

じゃあどうして衛兵はこっちを向いて立ってるんだ?

逆じゃないか!


「良く言われることですが…どんな化け物よりも、人間の心が一番怖いってのは本当ですね。」


などと分かった風な口を利いた。

だが、本番はこれからだったんだよ…



俺は衛兵ばかりを見ていて、その奥に居る人間教の集団に気付いていなかった。

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