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竜種少女と静かに暮らしたい  作者: るっぴ
第一章 「竜の魔法使い伝説編」
22/86

22 「仕込みと訓練」

「――なるほどね。」


婆様の語りを一通り聞き終えた俺は嘆息した。

魔力王が攻めてくる理由も、最終目標もこれで分かった。


「それでその貴族って奴は…」


「数年後に病死したそうじゃ。魔力王とは何の関係もなく、ただの不摂生でな。」


コミュ症の引き篭もりが理解者を失って狂った、と言えば何か胸を詰まらせるものがある。

だが、それでクリスタ達を殺されたんじゃたまったもんじゃない。


説得や懐柔はちょっと無理そうだな。

俺の得意技、火事場のクリティカル舌技も通用しなさそうだわ。



ぱっと思いついた事が2つほどあったので、その準備にまずとりかかろう。

俺は婆様に相談を持ちかけた――




何はともあれ、俺が竜の魔法使いとしての条件を満たすのが一番だ。

それさえ叶えば細かい事を考える必要も無いのだから。


異世界から来た魔法使いが竜種を竜に変化させ敵を倒す。

あの碑文の伝説が真実であるとして、それは本当に俺なのか。俺がその条件を満たしているのか。


唯一の頼りは、俺が使える能力である反魔力だけだ。

これが竜に変身する鍵となるのであれば俺は魔法使いとしての条件を満たしている。


でなければ、俺は伝説に振り回された只の道化だ。

反魔力が体内にある限り、永久に魔法を使えるようにはならないのだから。



クリスタにその事を相談し、訓練と実験を手伝って貰うようにお願いしてみた。

彼女は二つ返事で快諾してくれた。


「クリスタも忙しいのに、本当にいいのか?」


「もちろんです。信じてますから。」


胸にぐっと来る台詞を言ってくれる。何とかしてやりたい!


「俺に使えるのは反魔力のみ。だから竜に変化する鍵はこの力を上手く使う事だと思うんだ。」


クリスタは真剣に頷く。


「だから、この力をクリスタに使う。それでどうなるか試してみよう。」


…と、試そうとしたら婆様が飛んできて殴られた。

本当に竜になったら道場が壊れるから外でやれ、だと。



はて? なぜ婆様は竜の大きさを知っているのか。

一瞬だけ俺はそんな疑問を抱いたが、実験の事で頭が一杯だったためすぐに忘れた。


この道場はかなり大きく、象の群れが余裕で入るほどだ。

何せ超人的な身体能力を持つクリスタ達が飛んだり跳ねたりして訓練できる広さと高さがあるのだから。


庭に出ると、婆様やルビィ達がくっついてきた。

見られてるとやりづらいんだが…



俺はクリスタのお腹に手を当て、反魔力を練り始める。

引き締まった腹筋の上に柔らかなぷにぷにの…


クリスタが身じろぎして照れたので、咳払いを一つして誤魔化した。

集中しろ俺。


ふっ!と気合の掛け声と共に反魔力をクリスタに触れた右手の先から押し出す。

クリスタが「ああっ…!」と呻き声と共に倒れそうになるのを俺が支えた。


「何か腰から下が突然重くなったかと思うと力が抜けて、感覚が無いようにふわふわして…立てないです。」


その場に座らせて休ませる。

やはりこうではないのか。



連続での実験は無理そうだな…

と思案しながら周囲に視線を泳がせるとルビィと目が合う。


俺は両手を肩ほどまであげて手をわきわきと握ったり開いたりしながらルビィに迫る。


「ルビィ君、これは竜に変化するための高尚な実験なのだ。よもや協力を惜しむまいな?」


「ひっ…分かったわよ。分かったからその手やめて! 怖いしキモいから!」


体がダメなら頭だ。

レオンハルトに使った時は気絶しかけたようだが、竜種なら別かもしれない。


俺はルビィの頭を両手で挟むようにして反魔力を両手に集中させる。

なんでこの子は顔を赤らめるのか。

顎をつまんだり、頬を包むようにしてるわけでもないのに…


反魔力を手から押し出すと、ルビィは一瞬にして目の焦点が合わなくなり気絶した。

ほどなく起き上がったが、滅茶苦茶に引っかかれた。

竜じゃなくて猿だろお前。



念の為にアクエリアスに竜気を発動してもらい、その状態で反魔力を使ってみたが

やはりダメだった。竜気のおかげか気絶こそしなかったが、

クリスタと同じように体から力が抜けるのだそうだ。



煮詰まった。


反魔力を彼女達の体に使うのは間違っているのか?

何か外部条件や儀式みたいな何かが必要なのだろうか…


翌日、彼女達の体力が回復した所で同じ実験を騎竜具を互いに持ち合い、

それを介して反魔力を伝えてみたが結果は変わらなかった…



残された時の砂は尽きようとしていた。




カーラマンの宣言から7日、予定より遥かに早く魔力王の軍勢が街へ迫った。


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