13 「決闘と競技」
正直、勝算はある。奴の魔法剣と俺の反魔力は相性が最高だからだ。
問題は俺の身体能力だ…あんな反射神経してる奴相手に立ち回れるものか。
しかも反魔力は一度しか使えない。一度見せたらレオンハルトは対応し始めるからだ。
つまり一撃も食らわずにこちらが1発で決めるしか、俺の勝利の目は無い。
さらに奴は盛り上げるために少しずつ攻撃を加えて俺を追い詰めようとするのは確実だ。
無名の俺を相手に一撃で勝負をつけたらこの舞台を用意した意味がないからな。
トータルで考えて、俺が勝てる確率はせいぜい5%あるかどうか。
卑怯でも何でも策が要る。ここで使える手は…
うん。無いな。
そもそもそんな技の引き出し持ってないもの、俺。
クリスタが俺とレオンハルトの間に立ちはだかり抗議し始める。彼女が怒っているのはこの4ヶ月余りで初めてだ。
「レオンハルト、見損ないました! こんな不意打ちで海くんを人前で打ちのめそうだなんて! 卑怯です!」
…まあ負けるの前提だよな。
「ああクリスタ。今ここでその詐欺師から君を救い出し、目を覚まさせてあげよう。」
「海くんを侮辱するとはいくら貴方でも許せません! 彼は詐欺師ではありません! 現に私の治癒魔法を…むぐぐ」
俺は慌ててクリスタにかけよりその口を押さえる。ネタバレ禁止だ!
クリスタの肩に手をかけた瞬間、彼女は少しよろめき、俺が口を塞ぐために出した手は彼女の頬を抑えた。
よろめく彼女を支えるために反対の手を背中に回したその格好は、ご令嬢に熱いベーゼを迫る王子様といった雰囲気のポーズなってしまった。
直後にクリスタの唇に人差し指をあて「シーッ!こっちの手の内をバラしちゃダメだろ。」と諌める。
一連のポーズとアクションはレオンハルトに多大な勘違いを与えてしまったようだ。
奴はわなわなと震えつつ、凄まじいまでの笑顔を以って応えた。
「それが君の答えか! なるほど詐欺師らしい、隙を見て女性を無理矢理口説く手管はいっそ見事だ!」
誰か助けてくれ。引くに引けない状況を作ってしまった。俺自身の手で…
「海くん、取り合う必要はありません。このまま帰りましょう。いざとなったら街を離れ、竜種の立場も捨てましょう。」
そのクリスタの一言が後押しとなり、俺は覚悟を決めた。
駆け落ちする覚悟までさせたのならもう捨て身で挑むしかないだろ。
足りない実力は勇気で…ってそれは俺の持ち物じゃないから、舌先三寸で補うしかない。
クリスタに向かって精一杯虚勢の笑顔を作り、
「どうせ駆け落ちするなら、その前に盛大に恥をかいてからにしてもいいか?」
背中に冷たい汗が流れ落ちるのを感じる。
心を落ち着けるためにさり気なくクリスタの唇を押さえてた指をそのまま下へ滑らせ肌色の丘へと伸ばす。
ピシャリと手を軽く叩かれる。あれえ?
よし、気合入った。ちょっと気合の入れ方が普通じゃなかった気もするが気にしない。
「おい大魔道様よ! 聞いてりゃ好き勝手言ってくれるじゃないか。」
「やる気になったか詐欺師!」
「ならないね。そりゃもうサッパリ。」
「な…! 逃げるのか卑怯者!」
「逃げるも何も、俺がお前の都合通りに戦わなきゃならないのか、そこんとこがどうにもわからねえんだ。」
「勝った方がクリスタと結婚できる。そこに何の疑問がある!?」
「俺とクリスタはとっくに結婚しているからさ! 竜種と異世界人、単にこの国の法で認められてないだけでとっくに夫婦なんだよ!」
うん。クリスタも目が点になっているな。頭にクエスチョンマークが浮かんでるのが見えるようだ。
ニコのカタカナ字体を縦に90度回転させたようなシンプルな表情になっている。
いいのいいの。こういうのは言ったモン勝ちなんだよ。
さて、まくるぞ!




