狩るもの、狩られるもの
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「なにが裏世界の人間全員が敵だ! かっこつけた挙句、銃の警戒を怠ったな。銃の警戒は裏世界の人間同士の戦いにおいて基本中の基本だ、バカがあ!!」
倒れた仁を見下ろし、折られた右肘を左手で押さえながらガルゴは興奮した様子で大声をあげた。
「はぁ、はぁ、はは、念のためもう1発。心臓でも撃ち抜いとくか。それからボスに連絡だ。」
そう言ってガルゴは銃を仁に向ける。
「ガキが調子に乗るからこうなるんだ。」
そう言って引き金を引こうとした瞬間ーー
仁は目を見開いた。
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「いっ!」
久々の料理のためか、指先から血がポタポタと垂れる。
その血を見て桜は頭が真っ白になる。
あの日以来いつもそうだ。
血を見るとあの日のことを思い出す。
あの日の景色が頭を支配する。
それが嫌で、苦しくて、ただただ無心に叫び悶え続ける。
自分の叫び声だけが部屋の中に響き渡る。
醜い、私は醜い。
苦しい、生きることが苦しい。
「あああああ!!!!!!!!」
叫びながら床に膝をつく。
すると、ふとテーブルの上の写真が目に入る。
写真の中の仁が自分を見つめているような気がした。
「はあ、はあ、はあ。」
息を荒らしながらも桜はなんとか冷静を取り戻した。
「がんばらなきゃ。私はもう1人じゃないんだ。」
そう言って桜は立ち上がった。
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パァン!!もう1度その音が鳴り響く刹那、
仁は体を華麗に身ごなして起き上がり、銃弾を交わす。
「お前……なぜ生きて……!」
そのスピードに乗ったまま腰をひねって小刀でガルゴの喉を掻き切った。
「ガカッ!!」
真っ赤な液体が辺りに飛び散り、それと同時に黒人特有の大きい図体が力なく地面に倒れ落ちた。
「やっぱ鈍ったなガルゴ。俺を殺すつもりなら銃弾5発は撃ち込んでおくべきだった。」
仁は息もせず終始苦しげな顔で倒れているガルゴを見ながら小刀を握っていたのとは反対の手を広げた。
するとパラパラと言う音を立ててあるものが落ちた。
「銃弾1発程度、小刀持ちなら斬れる。」
落ちたのは真っ二つになった銃弾だった。
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ガチャリという音を立てて、ドアが開く。
「あ! やっと帰ってきた! もう、遅いよ。」
「お前何やってんの?」
「何って、見たらわかるっしょ?」
テーブルの上には数枚のお皿が並んでいた。
「勘弁しろよ。疲れたんだよ。」
「意味わかんない。そもそも食事は疲れを癒すものでしょ。食べてよ、こう見えて私料理できちゃう系女子なの。」
すると仁は桜が右手の人差し指に切れ後が残っているのに気がついて、ため息をついた。
「ベッドの下に怪我や病気の時のための必要最低限のものは置いてある。ばんそうこうを取り出して貼っとけ。」
「な、なな、なんで気付いたの!?」
「お前な、殺し屋舐めんなよ。」
「こ、これはたまたまよそ見してしまっただけで……!」
「いいから。貼っとけ。」
そういうとテーブルの近くに座る。
そして手を合わせる。
「いただきます。」
そんな仁を見て桜は目を丸くする。
「んだよ。なんか文句あんのか? せっかく食ってやろうとしてんのに。」
「い、いや。なんというか……似合わないなって。」
「ほっとけ。だいたいなんだこのドス黒い物体は。」
「いやいやどこからどう見ても男の子が大好きなハンバーグでしょ。」
「これがあ!?」
「失礼な。文句は一口食べてからいいなさいよ。」
言われて仁は嫌そうな顔しながらも一口食べてみる。
「……なんでうまいんだよ。」
「でしょー! なんでも見た目がすべてじゃないのよ。最後は中身!」
こんなに楽しい夜なら明けないでほしい。
だが楽しい時も、苦しい時も、時間は平等に流れてしまうのだ。
仁と桜の逃亡生活1日目が終わりを告げた。
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「ハハハハハハ!」
夜の路地裏で6人の若者たちが笑い声を上げている。
「おい。」
若者たちに話しかけたのはスーツ姿に7:3分の髪。いかにも真面目そうな男だ。
「はあ?何か用かい、お兄さん。」
若者たちの中心にいる金髪のチャラチャラした男がそう言った。
「静かにしろ、迷惑だ。」
その言葉に若者たちは爆笑した。
「ハハハハハ!お兄さん説教がしたいの?オレらがどんな奴らかわかってないようだから」
金髪の男の言葉と同時に若者たちはナイフや鉄パイプを手に持ち出した。
「その体に教えてやるよ!!」
武器を手に、襲いかかる金髪の男。
若者たちが想像していたのは恐れおののくスーツの男の姿。
しかし、実際に目の前にあったのは、
ーースーツの男の〝笑顔″だったーー。
そして次の瞬間、金髪の男は体に強烈な痛みを感じた。
しかし一瞬の出来事だったため何が起きたのか理解できなかった。
いや、理解しがたかったのだ。
右腕の感覚が……ないーーー!!
そう思ったとき不意に目線が足元へと行った。
右腕が、落ちていた。
「がああああ!!!右…腕……がああ!!!」
「だから静かにしてくれっての。少しでも騒がれると迷惑なんだ。……寝付けないから。」
時刻は朝4時を回っていた。
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スーツの男が携帯を取り出し、手慣れた手つきで電話をかける。
「もしもし旦那? すいません、また殺っちまいました。6つです。」
スーツの男がそう告げると携帯から低く太い声が聞こえてくる。
「わかった。手配しよう。」
「あれ、旦那。今どこかの隊集めてんすか? 呼吸の音がたくさん聞こえますけど。」
「フッ、さすが耳がいいな。実は西の町で4時間前銃声が鳴ってな。」
旦那がそう言うとスーツの男はため息をついた。
「またどうせどこかのしょぼいチンピラでしょ?」
「それがそうでもないらしい。第4隊に捜索させたところ、ガルゴの死体が見つかった。」
「なっ! ガルゴの!? あいつはうちでも戦闘派の奴じゃないっすか。撃たれたんすか?」
「いや、どうやら銃声はガルゴのもので、ガルゴは小刀で斬殺されたようだ。喉を搔っ切られてる。それに、ガルゴの小刀がなくなっている。」
「つまりそいつは、ガルゴから小刀を奪って斬り殺したってわけですか。」
電話からは旦那の唸り声しか聞こえてこない。
相当お怒りのようだ。
「てことはそこに集めてるのは第4隊。これから敵の捜索に行かせるんですね?」
「ああ。」
その言葉を聞いてスーツの男は笑いを堪えきれずに吹き出した。
「旦那。それオレも行かせてくだせえ。そんな楽しそうな話聞いてワクワクしないわけがないでしょうがっ!」
スーツの男は目を輝かせながら言った。