戦いが始まる
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ねずみ色の汚い空から落ちてくる透明な雨が地面を汚した赤い雨と醜い涙を洗い流す。
龍間仁が殺し屋となったのはそんな日のことだったーー。
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「よお、探したぜ?」
仁はある背中に話しかける。
「お? テメェは〝レッドタイガー社″の仁じゃねえか。」
「〝マムシ″の第4隊長ガルゴ。相変わらず黒人の見た目にそぐわない日本語の上手さだな。」
「俺っちを探しただなんて何の用だ? まさか俺っちを殺しにでも来たか? なわけないよな。そんなことしたらウチとお前んとこは全面戦争だ。」
真剣な顔で言うガルゴと打って変わり、仁は高らかに笑い声をあげた。
「お前最近この辺りの住宅地を陣地にして借金取りしてんだってな。マムシの旦那は本当に金好きだなあ。」
「なにが言いたい?」
「借金取りは楽しいか?」
「あ?」
「お前は2つ勘違いをしている。1つ俺は楽しければ何でもいい。全面戦争など怖くも何ともない。そしてもう1つ、俺はもう〝レッドタイガー社″の殺し屋じゃない……!」
仁はガルゴの腹を思い切り殴る。ガルゴは吐血した。
「テメェ、何の真似……だ」
「お前の言ってた〝まさか″だよ。」
言葉と同時に仁は左足でガルゴの顎を蹴り上げる。反撃にガルゴが懐から小刀を取り出して仁の顔を狙うものの、
「遅い。」
仁はガルゴが小刀を持つ右手の肘を殴る。ガルゴの肘が鈍い音を立ててひね曲がる。
その拍子に小刀を落とす。
「あ…があ……!」
「金集めなんてしてるから戦いの勘が鈍るんだよ。」
仁はガルゴが落とした小刀を手に取る。
「お前、なにが目的だ……!!」
「あるゲームを始めてな。裏世界の全員、特にテメェら〝マムシ″は俺の敵だ。」
勝ち誇った顔で仁は小刀を空に掲げてガルゴを睨む。
「死ね。」
するとガルゴは先程までの見苦しい悶絶の顔を消して、うすら笑顔を浮かべた。
「お前がな。」
パァンと言う甲高い音が辺りに響き渡った。
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本当に何もない部屋だな。
桜は部屋を見渡しながらそう思う。
何というか生活感がない。
……暇だしテレビでも見てようかな。
そう思ってリモコンを探す。するとある1枚の写真を見つけた。
小さな男の子がお母さんとお父さんだろう人と手をつないで笑っている、微笑ましい写真。
「この男の子、仁……?」
ここにあるぐらいだから仁なのだろうが、それが信じられないほど純粋な笑顔をした男の子だ。
もしかして仁の両親も亡くなったのかな…。
「よし!」
そう言うと桜は写真を机に置いて台所へと行く。
「私が昔の笑顔に戻してしんぜよう。」
桜は鼻歌を歌いながらおもむろに冷蔵庫を開けた。