3000億
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「そのなりで18歳!?」
桜は驚きの声をあげた。
仁は大人っぽい顔つきと高身長のせいですごく大人びて見える。桜は仁を24、5くらいに思っていた。
「うるせえな。歳なんてどうでもいいだろ。そんなもん知っても楽しくねぇ。」
「待って、じゃあ私とあなた3つしか歳違わないの!?意外、意外過ぎる……。」
「ぎゃーぎゃーうるせえな。さっきまで泣きわめいたり震えたりしてた癖によ」
仁が気怠そうに返事する。
「待ってよ。あなた18歳なのに殺し屋なんてやってるの?」
「正確にはやってた、だ。10歳からな。だが勝手に裏切ってそのままにしてくれるほど俺らの業界も甘くはねえよ」
「それってつまり……」
「うちの事務所の連中がいつか俺を仕留めにくるだろうってことだ。今からその時が楽しみだぜ♫」
桜は呆れたようにため息をつく。
「やっぱりあなた狂ってるわ」
桜は今仁を連れて3000億の隠し場所へと向かっている。父親から場所は聞かされていたものの、実際に見るのは初めてだ。
「それにしてもこんな山奥に隠すとは、お前の親父も徹底してんなぁ」
「そろそろよ」
生い茂る木々の隙間から心地いい風が吹く。ところどころに見える桜の木は春真っ盛りであることを象徴している。
「確かこの辺のはずなんだけど……」
辺りを見回すがそれらしきものはない。360°緑色だ。
だが少し前方。緑に囲まれながらも騒然と立ち尽くし、その存在感を大きく知らしめているピンクがある。
「なあ。お前の親父金のありかを教えたときに他になんか言ってなかったか?」
「確か、〝あの金は桜に任せる″って言ってたわ」
「ふーん。桜に任せる……ねぇ?」
そう言うと仁は桜の木の下に行き、持参したスコップで地面を掘り始めた。
「ちょ、ちょっと!?」
近くによるとピンクはさらに存在感を増した。その大きさは山で見た木々の中で間違いなく1番だろう。
言わばこの木はこの山のシンボルのようなものだ。
「なんでそんなとこを掘り出すのよ。ほんとあんたわけわかんない!」
「そうか? お前の頭の回転が悪いだけだろ。」
「ちょっとそれどういう」
「ビンゴだ」
そう言って仁は手で見てみろと合図を送る。桜は言われるがままに仁が掘った穴を見る。
「あ!」
穴には無数の札束があった。間違いなく探していた金だ。
「〝桜に任せる″はお前に任せるという意味と、桜の木に任せるという意味。山に桜の木は何本もあるがこの木は山の中でも飛び抜けて大木だ。となれば1番怪しいのはこの木の近くってことだ」
「なるほど…。てかこの穴意外と深いわね」
「まあお前の身長くらいの深さだわな」
「あっさり言うけどこの穴掘るのに1分もかかってないわよね?」
「それがなんだ?」
こいつ、足腰化け物か! 心の中で桜はツッコミをいれずにはいられないのだった。
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札束をお互いに5つずつ取り出して、残りは再び穴に埋めた。1つ100万で合計1000万。
仁は「揃えたい道具があるから金は俺に渡せ」という。普通に考えればクソ野郎だが、桜にとっては自分の命に関わることなのでもちろん異論は唱えなかった。
山を降りると辺りはもう暗くなった。
今日は色々とありすぎた。本当ならもうこの世にいないつもりだったのに、無様にも生き続けることになってしまった。
助けてくれる人はできたけど、どこか奇妙な人で元殺し屋。
昨日の夜にはこんな日になるだなんて思ってもみなかった。
色々とありすぎて疲れたが、それでも桜は感じずにはいられなかった。
両親が死んで以来の幸せをーー。
仁は謎が多いし、意味がわからない。不安を感じないと言えば嘘になる。
でもそれでも。〝隣に誰かがいる″桜にとってはそれだけで充分幸せなのだ。
「お、いいの発見ー!」
そう言って仁は人のバイクに近寄る。そしておもむろにバイクをいじる。
「ちょっと何してんの?」
するとバイクがいきなり唸り声をあげる。
「よっしゃ、上出来だ。早く乗れ」
「鍵ないのにエンジンつけたの!? てかこれ人のだし……」
「バーカ、お前知らねえの? 今お前15歳だろ?15の夜は盗んだバイクで走り出すのが常識ってもんよ」
どこか聞き覚えのあるフレーズだ。
桜はため息を吐いた後、
「バカはどっちよ」
そう言って笑いながらバイクにまたがるのだった。