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最近田邉が嫌な存在じゃなくなって来た。
むしろ最近は目で追ってしまっている。
もしかして…
「きーちゃん」
顧問に呼ばれてはっとする。
顧問の小南先生は40歳近いのに爽やかでかっこいい。
学校では私と一番仲が良いらしい。
「うん、どうしました?」
「いや、考え事してた?ピントが合ってなかったっていうか…」
田邉が今日も来てくれるか考えてました、なんて口が裂けても言わない。
「悩めるお年頃なんです」
「はははっ!きーちゃんはホント忙しい人だねぇ。
たまには一緒に息抜きしようよ。ね?」
「先生は息抜きしすぎ!もうちょっと頑張ってくださいよ!」
「あはははっ!!」
廊下を通ったとき、小南先生と談笑する事柴さんの姿が見えた。
警戒心こそ薄れて来たけど、あまり見ることの出来ない姿。
小南先生は去年担任だったから、出身大学も年上の奥さんがいることも知ってる。
でもどこかで嫌な噂を聞いたことがある。
事柴さんと小南先生が不倫してる、とか。
いやいや、まずない。
あの笑顔は社交辞令だ。そうに決まっている。
でも部室に顔を出しに行く勇気がなくて、今日は珍しく部活に行くことにした。
やっぱりか…
少し肩を落とした後はっとした。
アイツは私に気があるわけでもないし、彼氏でもないし、部活も違うんだから来ないのが当たり前じゃん!
それにまだ部活始まったばっかりだから来ないとも限らないし…
そしてまた焦る。
私は確実に今、田邉を意識している。
好きなの?そもそも好きって何?
無意識にぽつりとつぶやいた。
「…ホントに悩めるお年頃だわ…」