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夏休みが間近に迫った。
暑い暑い部室。
そこに佇むのは−…
「何でアンタがいるのよ」
田邉を一睨みした。ヤツは動じない。
「いや、何となく。」
コイツは最近この言葉を真顔に近い表情で言うようになった。
前みたいにヘラヘラしてたら軽くあしらえるのに…。
最近事柴さんがよく相手してくれるようになった。
基本警戒心丸出しの顔だけど、ふとした瞬間に目を丸くしたり笑ったり。
少しずつ「友達」になれてきてる。
出来ればそれ以上の関係になりたいところだが…。
「何、描いてんの?」
「えーっと…」
ホラ、受け答えをしてくれる。
性格上無視が出来ないみたいだ。
「油絵やってんの。
私あんまり技術ないけど…綺麗な水が描けたらなぁって…」
何かを慈しむような目。
最近はホントに色んな表情を見る。
まだ知らない彼女を発見できて新鮮だ。
はっとした。
いつの間にかコイツのペースに乗せられてる。
「ま、田邉には関係ないけどね」
照れ隠しに聞こえる。
部員は興味深そうに物影から見てる。
あー、もう。
暑さのせいで頭が回らない。
何か一緒にいると変な汗も出てくる。
夏だから?
「…っ、早く部活行けば?」
そんな
「口撃」は効かない。
「部活ないもん」
昨日も聞いた。一昨日も。
何だろう、でも田邉といるとこう、ふわふわした気分になる。
こんな感覚は初めてだ。