-4-
事柴さんが部室から出て来た。
明らかな仏頂面。
もとがそんなに可愛い訳じゃないから、どっちかと言うとギャグっぽい。
ひと睨みして彼女は口を開けた。
「…何の用?」
共通の話題なんてない。
捜す。ない頭を振り絞って考える。
「…下山君、いる?」
美術部の部長の事だ。
彼の話は何度か聞いたことがある。
ヘタレだの宇宙人だの。
事柴さんはきょとんとした。
「先輩?いるけど…呼ぶ?」
初めて嫌そうな顔以外の顔を見せてくれた。
なんかこう、胸が締め付けられるような感じ。
俺は笑って返事をした。
「いや、良いよ。
また明日。」
「先輩、田邉大輔って知ってます?」
「いや、知らないな…」
訳がわからない。
塾も同じじゃなさそうだし…。
そもそも何をしに来たの?
「ああーっ、もう!」
イライラしてきた。
何なの?
何をしに来たの?
部長に用はなかったの?
じゃあ、何で部室前をうろついてたの?
何で…どうしてそんな顔で私を見るの?
何の用もないのにわざわざ来て、微笑みかけてくるのはどうして?
「…わかったよ、タラシだからだ。」
でも、そんなヤツがなんとなく気になる。
そりゃそうだ。
毎日来るんだもん。
「あんたねぇ、部活は?!」
「今日はないよ」
「毎日来てるけどさ、何の用?
こっちは暇じゃなーいの。」
田邉が笑った。
「事柴さんと話したい…じゃダメ?」
顔が熱くなって来たのがわかる。
タラシなのに。
他の子にも言ってるだろうのに。
この気持ちは何?