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俺は水泳部だった。
と言っても真面目にしてるわけでもなく、ただプールサイドで遊んでるだけだったが。
もちろんシーズン中は真面目にやってたよ、一応。
そしてその部長(男)は保健委員長だった。
もしかしたら事柴さんと接触できるかもしれない。
でも事柴さんは男子が嫌いみたいだから、部長の所に行っても意味ないかもしれない…。
「中島君ー」
俺は部長を小声で呼びながら、そっと生徒会室のドアを開けた。
すると思いがけない光景が目に入った。
事柴さんが部長と談笑している。
あんな笑顔見たことがなかった。
正直部長が羨ましかった。
すると部長は俺に気付いてくれた。
「ごめん、ちょっと抜けるから、先に仕事してもらってて良いかな?
絶対戻ってくるから。」
事柴さんが笑顔で返事をした。
「はい。」
何なんだ、この光景は。
「田邉?聞いてる?」
聞いてなかった。
「もちろんですよ!」
「じゃあそういうわけだから、自主練ね。
面倒なら帰っても良いから。」
部長のお墨付きを貰った。
今日、美術室デビューを飾ろう。
実を言うと、事柴さんが生徒会室を出て美術室に向かうとき軽く睨まれたのだ。
何か共通の話題は…。
「ねぇ、きーちゃん」
部員の井口久美が迷惑そうな声を上げた。
「何、どうしたの?」
「田邉が美術室前うろついてんだけど…」
「ええ?」
久美は一年のとき田邉と同じクラスだった。
コイツがタラシだっていうのも久美から教えてもらったこと。
「よーし、私がいっぱつガツンと言ってこよう!」
「ごめんよきーちゃん…」
何がしたいんだ田邉は。
そう思いながら私は部室のドアを開けた。