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学年集会の日だった。
雨が降っているのにわざわざ武道場に移動なんて、正直かったるい。
俺、田邉大輔はそう思いながら、友人であり不良でもある蔵本と話をしていた。
現在中学二年。
これといった趣味もなければ彼女だっていない。
学校に通って、部活をして、塾に行って。
そんな毎日だった。
でも、気になる人はいる。
事柴基恵、美術部部長。
特に美人な訳ではない。
どっちかというと微妙なタイプ。
今までだったら絶対に好きにならないタイプだ。
でも何故か気になる。
初めて近くで見たのは、学活の時に蔵本の所に行って、何の係になるか話していた時だった。
彼女は保健副委員長もしていたから、学級委員ではなく、優先的に学級係になる。
暇そうにぼんやりと教室を眺めている彼女が印象的だった。
「ナベ、ナベって!
聞いてんの?」
蔵本の言葉にはっとした。
「ナベまた坂井に見とれてたんじゃないの〜?」
蔵本がけらけら笑いながら言った。
冗談じゃない。
蔵本が言った「坂井」とはうちのクラスの女子で、今時の女の子って感じ。
クラスで一番可愛いって言っても過言じゃない。
「考え事してたんだよ。」
「はいはい。
で、ナベ好きな人は?!
クラス変わったし、何人かいるだろ〜?!」
背の順に並んで座っていたので隣は事柴さんだった。
焦る。
いつタラシになったって言うんだよ。
「何人もいねぇよ」
「まずナベは坂井が好きだろー?」
そう、これだ。一番困る。
勝手に好きな人にされてしまったんだ。
「違うって言ってんじゃん」
でも蔵本は聞く耳を持たない。
「じゃあ二番目に好きな人はー?」
ふと思った。
隣に座っている彼女が好きなのかもしれない、と。
この会話を聞いていないことを祈って、名前を呼んだ。
「事柴さん。」
返事は横からやって来た。
「…何?」
あからさまに嫌そうな顔をして返事をした。
田邉ってタラシだから危ないって聞いた。
私は可愛くないから大丈夫と思ってたけど…女なら誰でも良いんだ。
正直見損なった。
二番目に好きな人?
冗談じゃない。
坂井さんも良い迷惑だよ…。
「何でもないよ!」
蔵本はそう言って、俺との会話を続けた。
正直、その会話はほとんど聞いていなかった。
いつもそうだ。
彼女は男子が嫌いなんだろうか。
女子との会話でしか笑ったところを見たことがない。
少なくとも俺はかなり嫌そうな顔をされる。
タラシだって噂が耳に届いているんだろうかと思うと、やるせなさが募っていった。