・9・そして、戦争は始まり、
ついに、青の国と緑の国の戦争が始まった。
戦争には幾つか規則があり、その期間は十日間と決まっている。
その間に、どれだけ相手の戦力を削れるかで勝敗が決まる。
主に戦うのは悪魔使いが使役する下級悪魔で、敵陣の悪魔を消していく事が目的である。
もちろん、使役している悪魔使いを殺せば契約が消滅し、悪魔が魔界に還るので、悪魔使いを減らす事も有効な手である。
そこで、悪魔使いを守る重装歩兵の実力が試される。
そして、二国に近接する国が中立な立場で判定を下す役目を負い、今回は黄の国が担当する事になった。
十日間の内に相手の戦力を四分の一まで減らせば、勝利となる。
もし、十日目までにそれが実行できなかった場合、最後の切り札である高位悪魔を一騎打ちさせるのである。
戦場は二国の国境を含む平地。
お互いを睨むようにして両陣営が配し、その頭上と最前列に、様々な異形の悪魔が蠢いている。
両陣営を見下ろせる高櫓で黄の国の兵士が戦太鼓を打ち鳴らし、戦いは始まった。
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戦争は奇妙な展開を見せた。
青の国・緑の国共に、軍勢にほとんど被害がでないのである。
青の国には、"先見の悪魔"がついており、敵陣の作戦を先読みして、効果的に攻撃を仕掛けている。
緑の国はどうやら天候を操る高位悪魔を召喚したようで、青の国の軍勢にのみ、豪雨や疾風が襲い、時には雷が落ちてくる事があった。
両陣営とも確かに奮闘しているはずであるが、一日、二日、三日と戦闘を繰り返せど、被害は微々たるものなのである。
自陣の被害が少ないのは良い事である。
悪魔使いは国の主要な戦力であり、数が減らないに越した事はないからである。
しかし、敵陣の被害が少ないのは困りものであった。
戦争に勝利するには、敵勢力を減らさなければならないのだから。
そんな両国の困惑と焦りを他所に、十日間は過ぎ去り、決着が着くことはなかった。
十日の内に勝敗が決められなかった場合は、高位悪魔同士の戦闘である。
そこら一帯が灰燼に帰す可能性もあり、悪魔を使役する国王と護衛の近衛を残し、両陣営は平地を引き上げた。
高位悪魔の一騎打ちにも、これまた規則がある。
悪魔は魔界では物質を持たない、いわゆる精神体であるが、召喚された際、召喚主か生贄の魔力で肉体を構築する。
ゆえに、たとえ首を刎ねようが心臓を潰そうが、魔界に還るのみで死ぬ事はない。
よって、先に相手の首を落とした方が勝利、という事に決まっていた。




