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Demon Meets Girl  作者: 有寄之蟻
本編
8/21

・8・Az meets Nico.




ふと目を覚ましたアジュリーンは、自分が寝台に寝ている事に気づいた。


見覚えのない部屋。


正面の窓からは、橙の光が差し込んでいる。


『起きたのか・・・?』


弱々しい声の方を向けば、ぞっとするほど美しい男が一人。


紫がかった黒髪に、血のように紅い双眸。


寝台の横に椅子を寄せ、睨むようにアジュリーンを窺っている。


知らない顔だ。


その姿に覚えがない・・・しかし、男が持つ魔力はつい先程まで感じていたように思えた。


『体は大丈夫か?』


そしてその声。


アジュリーンの脳裏に、意識が途切れる直前の記憶がよぎる。






◆◆◆◆◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇






――――――――目隠しされた闇の中で。


『どうか"許す"と言ってくれ』


低い声が乞う。


そして、許しを与えた彼女の胸に触れた柔らかい感触。


焼けつくような痛み。


『有難き幸せ』


圧倒的な「力」をその身の内に隠して、彼はなんと名乗ったか――――――――。






◆◆◆◆◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇






「・・・・・・ジーンカイル?」


『・・・覚えていたのか』


ぽつりと落ちた言葉に、ジーンカイルはぴくりと眉をあげた。


『体の調子はどうだ。どこか痛む所はないか?』


問われて体に意識を向けるが、どこにも不調はなかった。


首を横に振ると、『そうか』とジーンカイルは息を吐く。


彼は僅かに眉を寄せて、そっと手を差し伸べてきた。


頬に触れる優しい感触も、傷を癒された時と同じ。


心がゆるゆると温かくなって、アジュリーンは手にすりよった。


ジーンカイルはしばし硬直したが、やがてそろそろと髪を撫で始めた。


『――――我が主人殿。お前の名を教えてくれ』


「・・・・・・アジュリーン、です」


『アジュリーンか・・・』


ジーンカイルは一瞬考えるように目を伏せた。


『じゃあ、アズにする』


アジュリーンは不思議そうに首を傾げる。


「アズ・・・?」


『愛称だ、アズ。オレの事はニコと呼べ』


「ニコ」


『そうだ』


ジーンカイルは満足気に笑んだ。


しかし、すぐにその顔から表情が消える。


『なにやら人間共が騒いでいる。なぜ召喚を行ったか知っているか?』


「緑の国と戦争を・・・」


『戦争か。それでダイを()んだのか。ふぅん?"豪嵐の悪魔"、ね・・・』


ブツブツと呟くジーンカイル。


『"先見"のオレでは役に立たないとでも?――――いや、それよりも、アズ』


「はい」


『オレの主人はお前だ。オレはお前の"命令"には逆らえない。逆に、お前以外の人間には従わない。分かるか?」


「はい」


『人間共は、戦争にオレを使いたがるだろう。そして、お前にオレに戦うように"命令"しろと言ってくるはずだ』


「はい」


『オレはお前の(しもべ)だ。お前が望むなら、戦争の助けをしてもいいし、この国を滅ぼしてもいい』


ジーンカイルの目は本気だった。


その綺麗な紅い瞳をじっと見上げて、アジュリーンは首を傾げる。


『お前はどうしたい?』


悪魔の問いに、アジュリーンの口がゆっくりと動いた。


「わたしは――――」




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