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Demon Meets Girl  作者: 有寄之蟻
本編
7/21

・7・契約




魔法陣の中で起こった出来事を、かろうじて意識を保って見ていた道士は、自分は狂ってしまったのかと思った。


先程まで激怒していた悪魔が、生贄の乙女を見た途端、急激に大人しくなり、ついには泣き出したのだ。


道士の常識をはるかに超えるそれらに、もうまともに考える事もできない。


ただ目が開いているから見ている、という状態で魔法陣の中を眺めていると、悪魔が乙女に近づいていく。


そろそろと、酷く慎重に歩み寄った悪魔は、これまたそっと乙女に手を伸ばした。


乙女の顔にできた一筋の切り傷に触れると、ポゥと青い光が生まれ、傷が癒えていく。


"悪魔が人間の傷を癒した"


それも命令でもなく、主人でもない生贄に!


道士は、襲ってきたあまりにも大きな衝撃に、それこそ意識が飛びそうになった。


悪魔は次々と傷や火傷に触れ、癒していく。


乙女は初めこそ驚いた様子だったが、しまいには悪魔の手に身を委ねているように見えた。


悪魔は片膝をつくと、乙女の右手をとった。


その手に軽く口付けると、悪魔は静かに言った。


『オレは"先見の悪魔"ジーンカイルという。お前の生ある限り、お前を守る盾となり、お前を支える杖となり、お前の敵を屠る剣となる事を誓う。どうかお前の(しもべ)となる事を許してほしい』


ありえない。


道士の粉々にされた常識が憤慨する。


あの(・・)高位悪魔が人間にへりくだるなど。


ましてや、服従の誓いを自ら乞う(・・・・)なんて。


まずい、と道士はぼんやりと思う。


それは、誓願の言葉。


本来なら、とっくの昔に失神してしまった国王にするものである。


通常、召喚された悪魔は召喚した悪魔使いとこれを行い、主人はその悪魔使いになる。


しかし、高位悪魔のみ、召喚するのは悪魔使いであるが、服従の誓いは国王になされ、国王が主人となるのである。


もっとも、多大な代償を払った上で、一時(いっとき)の"労働"をして(・・)もらう(・・・)立場であるが。


『どうか"許す"と言ってくれ』


悪魔の懇願する声。


止めなくては。


思いながらも、道士の体は動かない。


生贄の乙女は理解しているのかしていないのか、しばし黙っていたが。


「・・・・・・許し、ます」


小さく発した言葉と共に、魔法陣が光を放つ。


――――儀式は完成してしまった。


『有難き幸せ』


悪魔は満面の笑みを浮かべ、乙女を抱き寄せる。


そして、衣装の胸元を不意に裂くと、心臓の位置に口付けを落とした。


魔力が渦巻き、光が乙女の胸元へと吸い込まれていく。


光が飲み込まれたそこには、紅い契約の刻印が刻まれていた。




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