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Demon Meets Girl  作者: 有寄之蟻
本編
5/21

・5・「召喚の間」にて悪魔は怒る




魔力の奔流に流されたそこは、広間のようだった。


ジーンカイルの下には、魔界にも現れた召喚の魔法陣。


それを囲むように六人、魔法陣の先に数十人、そして広間の最奥にも数人の人間たちがいた。


しかし、目的のものが見当たらない。


ジーンカイルは広間の隅々まで目を凝らす。


魔界に現れた魔法陣の魔力は、ジーンカイルが経験した事のないほど上質で、甘美な香りを放っていた。


本来()ばれたディスカイルから召喚を奪ったのは、その魔力を食らうためである。


ジーンカイルは魔法陣を囲む人間たちに目を向けた。


それぞれがそれなりの魔力を持っているが、六人合わせても5位の悪魔を()べるほどとは思えない。


その上、魔法陣の魔力と全く異なっている。


ジーンカイルは、苛立ちに身を震わせた。


彼から溢れた魔力が風となり、魔法陣の結界にぶつかってバチバチと火花を散らす。


「――――あ、悪魔よ!汝の名を問う!汝は"豪嵐の悪魔"ディスカイルであるか!?」


悪魔使いの一人が唐突に語りかけた。


召喚した悪魔の名を問う事は、悪魔召喚の基本中の基本であるが、現れた高位悪魔の力にあてられて、人間たちは呆然としていたのである。


ジーンカイルは、気だるげに答えた。


『否。我は"先見の悪魔"ジーンカイルなり。我を召喚したのは誰だ』


魔力風は結界にせき止められど、遮る事のできないジーンカイルの殺気に、広間の人間たちは震えあがった。


目隠しされている乙女たちさえ、その声と魔力に失神する者も現れる。


一人、道士のみが慄きながらも儀式を続けようとしたが。


「其方を召喚したのはこの私――――」


『違う!嘘をつくな!』


「ヒッ・・・」


ジーンカイルは言葉を聞き終える事もなく否定し、結界は轟々と雷のように鳴った。


『貴様らの誰も魔法陣と繋がっておらぬ!これを使い我を召喚したのは誰ぞ!』


その怒りに大臣らは失禁し、悪魔使いたちは腰を抜かした。


高位悪魔は戦争の勝敗を決めるほどの強大な力を持つ。


使役できれば勝利をもたらす。


しかし、その機嫌を損ねれば――――国が滅ぶ。


そもそも、悪魔使いらが召喚を試みたのは、5位の悪魔、ディスカイル。


その上の、4位のジーンカイルを()ぶつもりなど皆無だったのである。


なんの因果か、ディスカイルとジーンカイルは話し相手という奇妙な関係があり、たまたまディスカイルが召喚された時、ジーンカイルがそばにいた。


さらに偶然が重なったのは、その魔法陣を造る魔力が、ジーンカイルを動かす程の上物だった事。


人間たちにとっては、災難だったとしか言いようがない。


しかし、重なった偶然の一つは道士の行動も含まれる。


彼が儀式を始める前に、魔法陣に繋げた一人の生贄の乙女。


道士はカチカチと鳴る顎を必死に押さえつけ、ガクガクと震える手で魔法陣を指差した。


「そ、そそそこにっ。あああ貴方を召喚した者はそこにおりまするっ」


ジーンカイルはその指の先を見た。


彼の体の真下。


そこに座り、ジーンカイルを見上げる一人の乙女の姿が。


吹き荒れる魔力風に髪や服がはためき、白い肌には切り傷や火傷ができている。


魔法陣の中心で身を守るものもなく、隠された目でジーンカイルを見つめるように、じっと上を向いている。


その、乙女は。







三話サブタイトルはここに繋がります。

ちょっとした事が、後で大変な事を招いたりする。

憐れ、道士。






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