・4・とある悪魔と悪魔
魔界、と呼ばれるそこには、様々な異形の生き物が蠢いていた。
魔力の澱みから生まれ、ただ破壊衝動と闘争本能に従って、自分以外のものと戦い続ける。
力を蓄え、やがて知性を身につけると世界を見る目が開く。
力には『位』がつき、それが絶対の世界。
その生き物は、【悪魔】と呼ばれる。
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宙に浮かぶ、巨大な目玉があった。
白い眼球に、血のように紅い虹彩。
その周りを黒い霧が漂い、無数の紫色した触手がウネウネとしている。
ジーンカイルは、いつものように漫然と宙に浮いていた。
彼のする事は二種類しかない。
戦うか、ぼんやりするか、だ。
かつては自ら進んで行っていた戦闘も、4位まで昇った今はさして興味もなく、たまにくる挑戦者を返り討ちするのみ。
ほとんどは、魔界を意味もなくうろついたり、他の悪魔の戦闘を眺めたりして過ごしていた。
悪魔には、友人や家族といった概念が存在せず、自分とそれ以外の敵という認識が一般的だが、彼には珍しく話し相手と呼べる悪魔がいた。
5位の悪魔、ディスカイルである。
ディスカイルとは、ジーンカイルが6位の時からの付き合いで、悪魔としてはめったにない"温厚な悪魔"だったディスカイルと戦闘をしなかった事がきっかけだった。
悪魔の戦いは、通常なら勝つか死ぬかである。
しかし、ジーンカイルとディスカイルの戦闘が始まり、お互いが半分ほど身体を負傷したところで、ディスカイルが戦闘をやめた。
当然ジーンカイルは戦闘を続けようとしたが、ディスカイルに打ちのめされ、意識を失ってしまった。
死ななかったのである。
自分を殺さなかったディスカイルに興味を持ち、彼につきまとうようになったジーンカイルも悪魔らしくはなかったのだが、そんなこんなで二匹は奇妙な関係を続けていた。
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宙に浮くジーンカイルの下には、ぴくりともしないこれまた巨大な青いウナギがいた。
額に銀色の捻れた一本角が生え、ヌラヌラした体の中ほどにコウモリのような皮翼が二対、べたりと地面にたれている。
ジーンカイルの"話し相手"、ディスカイルである。
ディスカイルもすでに5位の三段まで昇り、『位』の上昇を目指して戦闘をする必要はない。
何をするでもなく、無為な時間を過ごしていた。
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不意に、ジーンカイルがはっとしたようにディスカイルを見下ろした。
「来るぞ」
短い言葉にディスカイルが跳ね起きると、彼の体の下に光を放つ魔法陣が出現した。
「なんだ、召喚か・・・」
「いいんじゃないか?ヒマだろ」
拍子抜けしたディスカイルは、また寝そべる姿勢に入ろうとした。
しかし、ジーンカイルに体当たりされ、その身を吹き飛ばされる。
「っおい!何をする!!」
ジーンカイルは魔法陣の上に陣取り言った。
「美味そうな匂いがする。――――これはオレがもらう」
魔法陣の光が強くなり、辺りを照らした後には、ジーンカイルの姿はない。
「まったく・・・なんだったんだ」
呆れたように呟いて、ディスカイルはまた無為な時間を再開した。




