・3・妬みは不幸を呼び寄せる
開戦が一ヶ月先に迫り、ついに高位悪魔の召喚が決行される事となった。
「召喚の間」には、召喚を行う悪魔使いたちと、その筆頭【道士】が魔法陣を造り、それを離れた場所から国王と宰相をはじめ、幾人かの大臣たちが見守っている。
「召喚の間」に兵士たちに先導され、目隠しに手枷をつけられた乙女たちが入ってきた。
目隠しは醜悪な姿を持つ悪魔を乙女たちに見せないためであった。
生贄の乙女たちを見渡して、道士は驚きに目を見張った。
ある一人の乙女の魔力が、自分と同等かそれ以上だと見抜いたからである。
【道士】を名乗れるのは、【悪魔使い】の中で最も魔力が豊かで、最も高位の悪魔を使役できる者である。
並の悪魔使いが大抵10位〜8位の下級悪魔を使役するのに対して、道士は6位の悪魔を使役できた。
今回は自分の悪魔を還し、他の7位を使役できるエリート中のエリートの悪魔使い五人と魔力を合わせて、5位の高位悪魔を召喚するつもりだった。
彼らの魔力を合わせて5位を召べるか召べないかであるの対し、その乙女はたった一人で彼らに匹敵する魔力を有しているように見えた。
道士の中に、驚愕とドロリとした嫉妬の念が湧きあがった。
しかし、それはすぐに霧散する。
自分は誉れ高い【道士】であるが、相手はこれから悪魔に食い尽くされる【生贄】なのだ、と。
そして、道士はある事を思いついた。
あれ程の魔力なら、召喚の魔法陣を一人で維持できるに違いなく、彼はそれを実行する事にしたのだ。
道士は兵士に声をかけ、その乙女を魔法陣の中に座らせた。
本来そこは悪魔が出現する場所であったが、道士はかまわなかった。
そして、魔法陣と乙女の魔力を繋いだ。
道士の突然の行動に動揺していた悪魔使いたちだが、乙女一人で維持された魔法陣に、道士と同じ驚きと嫉妬の色をみせた。
その様子に道士は満足気に嗤い、召喚の儀式を開始した。
サブタイトルの意味は、後で分かります。