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Demon Meets Girl  作者: 有寄之蟻
本編
15/21

・15・彼は彼女に逆らえない




『三段だと?』


『遥か昔の、だけどね』


目を見張るジーンカイルにあっけらかんと言って、キュべルージュは腰に手をあてた。


『敵対しに来た訳じゃないわ。アンタ達にイイ話を持ってきたのよ』


ジーンカイルは警戒を解かない。


『なんだ』


『アンタ達、今面倒な状況にいるでしょ?人間共に恐がられて、つまらない事押しつけられて、閉じこめられてるじゃない。それを解決してあげる、って話』


『なぜそんな事をする』


『"上"の指示よ』


人差し指を立て、上を指すキュべルージュ。


『誰だ』


『あら、分からないの?』


意外そうに首を傾ける。


『アタシ達の"上"と言ったら、"あの方達"に決まってるじゃない』


『・・・なぜ?』


はっきりと困惑し、思わずジーンカイルは体から力を抜く。


キュべルージュはニッコリと笑みを深めると、ジーンカイルの背からひっそりと彼女を見つめていたアジュリーンに目を合わせた。


それに気づき、視線を遮るように動いたジーンカイルに、『あっは!』とまた声をあげる。


『イイわぁ。そう、主人は大切よね。えぇ。分かるわぁ』


うっとりと細目をさらに細めて、何度も頷いている。


『答えろ、キュべルージュ』


硬い声音の言葉に、キュべルージュは優しく微笑んだ。


『悪魔の中にはね、人間に召喚された時に自分の主人を見つけるヤツが結構いるのよ。アタシもそう。ずっと昔、アタシが4位三段だった頃、アタシが()ばれたとこにいた人間と終生の契約してね。魔界に帰りたくなかった』


ジーンカイルの背に隠されていたアジュリーンが、そろそろと顔を覗かせる。


『でも、高位悪魔は戦争以外でここにいちゃいけない。人間を魔界に連れて行く事もできない。どうしようもないでしょ?』


『だが、お前はここにいる』


『そう。今も主人と一緒にここにいる。魔界の(くらい)は欠番。他の誰かが入ったでしょうね。――――助けてもらったのよ。今日アタシがアンタ達のところへ来たように』


『さっさと言え。まどろっこしい』


ジーンカイルは苛立たしげに急かす。


『あら、せっかちね。仕方のない子。そうね。簡単に言えば、そういう魔界に帰りたくない、人間の国にもいられない悪魔と主人のための場所を、"上"がつくったのよ』


呆れたように彼女が告げると、ジーンカイルは険しい顔で黙り込んだ。


すると、じっと話を聞いていたアジュリーンが、キュべルージュの前へ進み出る。


はっとして動こうとしたジーンカイルを手で制し、彼女はキュべルージュを強く見つめた。


「・・・そこに行けば、ニコと離れなくていいんですか?」


『えぇ、そうよ』


キュべルージュは大きく頷く。


『そこはね、この大陸からうんと離れた海の上にあってね。人間は誰も知らないから、魔界に帰らなくてもとやかく言われないわ。それに、そこにいるのは同じような悪魔と主人だけだから、気楽よ』


アジュリーンは数瞬黙って、


「行きます」


と短く言った。


『っ!アズ!』


「ニコは?」


焦ったように声をあげたジーンカイルに、振り向いて問いかける。


『っ・・・オレは』


「ニコはわたしと離れてもいいんですか?」


『いいわけない!オレはずっとお前のそばにいる!』


その言葉にアジュリーンは破顔する。


「じゃあ、行きましょう?」


首を傾げ、上目遣いのそれに撃ち抜かれ、真っ赤になって硬直する事しばし。


我に返った後、ジーンカイルはしっかりと首肯したのだった。




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