表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Demon Meets Girl  作者: 有寄之蟻
本編
14/21

・14・闇夜の客




その女がやって来たのは、二人が姿を消す日の二日前の夜中であった。


その日は珍しく連日の催し事もなく、アジュリーンは庭園での惰眠を満喫したせいか、目が冴えていた。


ジーンカイルとの添い寝が既に習慣になり、寝台にもぐったはいいものの、ころりころりと寝返りを打つ彼女に、ジーンカイルが声をかけた。


『――――眠れないのか』


アジュリーンはころりと彼の方へ向くと、滅多にないしかめ面で頷いた。


ジーンカイルは、宥めるように月色の髪を撫でる。


『眠りの術をかけるか?』


アジュリーンは首を横に振り、視線を宙に彷徨わせた。


『何を迷ってる?』


ジーンカイルに目を戻し、アジュリーンは躊躇いがちに言う。


「・・・・・・眠くなるまで、外に」


『外か』


ジーンカイルはバルコニーの方へ視線をやり、


『行こう』


体を起こすと、彼女の手をとって寝台から連れ出した。


バルコニーへの窓を開け、ゆっくりと外にでるアジュリーン。


少し遅れてやって来たジーンカイルは外套を手に持ち、薄い夜着をまとう彼女にそっと羽織らせる。


アジュリーンはジーンカイルを見上げ、やっといつもの笑みを見せた。


「ありがとう、ございます」


『あぁ』


ジーンカイルは彼女の肩に手を回して引き寄せる。


その体に体重を預けて、アジュリーンは闇色の空を見上げた。


雲一つない夜空には、幾千の星が散らばり輝いている。


少し冷たい風がその頬を滑っていった。


ほぅ、と息を宙に吐き出す。


静かな夜、という空間にも魔力は満ちる。


()がある内のそれとは異なるひんやりとした硬い魔力。


身に染みる感覚は、内にあるものを浄化し(カラ)にしていくよう。


それもまた一つの心地良さ。


そっと瞼を下ろして、深く息を吸い込んだ。


――――その時である。


『こんばんわ、夜更かしさん達』


背後から、艶めいた声がかかったのは。


「っ・・・!」


『誰だ』


驚きに息を詰めたアジュリーンを背に庇い、ジーンカイルは何者かと対峙する。


室内に続く窓の前。


淀んだ陰から音もなく現れたのは、一人の女であった。


刈りあがった金髪に、糸のように細い双眸からのぞく色は、(みどり)


張り付くような布は純白で、その淫靡な体の線を浮き上がらせている。


肉厚な唇が目を引くその顔は、官能的な美しさを持っていた。


ジーンカイルは視線を険しくする。


『悪魔か』


殺気を飛ばし、体から魔力が滲みだす。


『あっは!そんなに警戒しないで〜?』


女は堪えた様子もなく軽快に笑う。


そして、すっと右手を突き出し、


『4位三段、"淫獄の悪魔"キュべルージュよ』


艶やかにそう名乗った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ