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Demon Meets Girl  作者: 有寄之蟻
本編
12/21

・12・それは彼女の望みが故。





「わたしは・・・・・・この国に負けてほしくないです」


ジーンカイルの問いに、アジュリーンはそう答えた。


『じゃあ、この戦争を手伝うのがお前の望みなんだな?』


彼が確かめると、小さく頷いた。


「でも」


『ん?』


「条件が、あって」


『なんだ』


訝しげに眉をあげるジーンカイル。


「ただ勝つんじゃなくて・・・この国の人も緑の国の人も、どっちも死ぬ人がいないように」


その言葉に、ジーンカイルは目を見張る。


アジュリーンの表情は、いつもと変わらぬあの微笑みのままだ。


『ずいぶんと欲張った条件だな』


呆れたような彼の声に、アジュリーンはわずかに眉を下げた。


「はい。・・・・・・国が負けたら、土地が取られます。わたしのいた村は国境に近いから、きっと取られてしまいます。・・・家族が緑の国に行ってしまうのは嫌です。でも・・・この国の人も緑の国の人も、どっちも国に待っている人がいるかもしれないから。・・・死なないでほしいんです」


普段言葉少ないアジュリーンがこれだけ長く話した事が、彼女の思いの強さを表していた。


ジーンカイルは、ス、と目を細めた。


視線はアジュリーンを向いているが、どこか違う景色を見ているように彷徨う。


じんわりと、彼の体から魔力が漏れだした。


やがて、意識をこちらに戻したジーンカイルは、険しい顔をする。


『アズ、誰一人死なない、というのは無理そうだ。すまない』


唐突な謝罪に、アジュリーンは不思議そうに目を瞬く。


『今少し"先読み"してみたが、どうしても被害はでてしまうようだった』


「先読み・・・?」


『オレは"先見の悪魔"だからな。一定の未来を見る事ができるんだよ。 ――――で、だ。あちらの国に()ばれる悪魔が知ってる奴で、何してくるか分かるから、被害を最小限に抑える事はできる。・・・それがオレができる最高だ』


告げられた言葉に、アジュリーンは目を伏せしばし考えるようにした。


そして、ジーンカイルを見上げて言う。


「お願いします」


『御意に。――――と言いたいところだが、それじゃあだめだ、アズ』


ジーンカイルは茶化すように笑うと、彼女の右手をとる。


『主人は(しもべ)に"命令"しなきゃな。そうすればオレは全力でお前の願いを叶えられる。――――我が主人殿、ご命令を』


アジュリーンはわずかに首を傾けると、(おの)が悪魔に命令を下した。


「・・・ニコ。なるべく人が死なないように、この国を勝利に導いてください」


ジーンカイルは満足げに笑うと、主人の手に口付ける。


『仰せの侭に、我が主人アズ』




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