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Demon Meets Girl  作者: 有寄之蟻
本編
11/21

・11・とある悪魔はフレンドリーだった件。





始まりの戦太鼓が鳴った。


『では、アズ。行くぞ』


ジーンカイルは、アジュリーンを丁寧に横抱きにすると、軽々とテラスから飛び上がった。


アジュリーンに配慮して、風を防ぐ障壁を張り、真っ直ぐに飛んで行く。


平地の中心に到達する頃、前方に人影が現れた。


緑の国の高位悪魔であろう。


平地の中心で、十歩ほど間をあけて両方は相対した。


その悪魔は、紺色のうねった長い髪を背中で一つに結び、光沢のある銀の()をしていた。


ジーンカイルよりは低いが高めの身長に、黒いローブのようなものを着ている。


その顔は、高位悪魔らしく凄絶に整っていたが、凍えそうなジーンカイルの美貌に対し、柔らかで温かみのある美しさであった。


銀眼の悪魔はにっこりとして、片手をあげた。


『やぁ、ニコ。久しぶり』


『あぁ。やっぱりお前だったか、ダイ』


ジーンカイルは肩をすくめる。


ダイ、と呼ばれた悪魔はアジュリーンに目を向けると、興味深げに目を眇めた。


『こちらのお嬢さんが君の主人?ずいぶん良い魔力持ってるじゃあないか』


『やらんぞ』


殺意剥き出しにジーンカイルが睨みつけると、『そんな事しないよ』と苦笑するダイ。


『初めまして。ボクはディスカイル。ニコとはちょっとした知り合いでさ。あ、ちなみに"ダイ"はボクの愛称ね。呼んでくれてもいーよ?』


人懐こく笑うダイ、もといディスカイル。


『アズ、絶対に呼ぶなよ』


真剣な声で言うジーンカイル。


じっとディスカイルを見つめていたアジュリーンは、釘をさしたジーンカイルを見上げ、


「・・・・・・愛称は、主人だけ?」


『そうだ』


『なんだ、知ってたのね』


ディスカイルは、つまらなさそうに口を尖らせる。


ちろり、流し目にアジュリーンを見て呟いた。


『呼んでくれたら、ボクもおいしい魔力もらおうと思ったのに』


耳敏く気づいたジーンカイルがキッとディスカイルを睨めつけ、背を向けてアジュリーンを隠してしまった。


『だからやらんぞ!絶対に!お前にだけは!』


おもちゃを手放さない子供のようなジーンカイルに、ディスカイルはクスクスと笑う。


彼は、ジーンカイルをからかうのが大好きである。


ジーンカイルの腕の中で、アジュリーンはとても嬉しそうに微笑み、そっと彼の胸に頭を寄せた。


それにどきりと硬直して、顔まで真っ赤にするジーンカイル。


二人の様子を見ていたディスカイルは、心底面白そうに笑ったが、すっとその顔を真剣なものにした。


『ニコ、ちゃっちゃと終わらせよう』


ジーンカイルは振り向くと、同じように表情を消し、


『オレは魔界に帰らない』


と言い放った。


『はいはい。お嬢さんと別れたくないんでしょ。ボクの負けでいいから。さ、どうぞ』


呆れた声音で言うと、ディスカイルは目を閉じて後ろを向いた。


『いいのか?』


『ボクは構わないよ。別にここにいたい理由もないし。・・・まぁ、魔界に帰りたい理由もないけど』


ディスカイルは、ハァとため息をつく。


『そうだな。あそこはつまらんとこだ』


ジーンカイルは懐かしむように呟いた。


一月前の彼が浸かっていた無為な時間に、アジュリーンと出会ってしまったジーンカイルは二度と耐えられないであろう。


すると、『そうだ!』とディスカイルがこちらを向いた。


『お嬢さん、やっぱりボクの主人になってよ!そしたらおいしい魔力がもらえるし、二人の様子見てるの楽しいしさ!』


名案とばかりに言うが、


『アズ一人では、オレを召喚するのでギリギリだ。諦めろ』


ジーンカイルは真顔で現実を告げた。


『そーだよねぇ・・・』


ずーんとして背中を見せたが、すぐにしゃきっとすると、ディスカイルは催促するように手をふった。


『いいからやっちゃって。また召喚された時にでも考えるから』


『そうか』


頷くと、ジーンカイルはアジュリーンを見下ろし、


『目を閉じていろ』


言って、彼女を片腕に座らせた。


アジュリーンは、ジーンカイルの首に腕をまわし、肩に顔をうずめる。


彼女の密着に今度はなんら反応せず、冷えた表情でジーンカイルは空いた片手を振りおろした。


鋭い風が(はし)り。


一瞬遅れてディスカイルの首が落ちた。


やがて体が崩れはじめ、ボロボロと散り宙に溶けた。


先に首を落とした方が勝ち。


勝敗は決した。


終わりを告げる戦太鼓が鳴り響いた。




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