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──ペッシャールを追える。
ただ、ブラッドはAIと同調するための調整を施されているわけではない。魔力を消費して意識をAIにねじこんでいるだけで、肉体的にも精神的にも疲労が激しいというリスクを負っている。おおよそ、実用化に耐えるような技術ではない。長時間の使用ももちろんできない。
しかし、そうでもしなければペッシャールを超えられないのもまた事実。
短期決戦。ブラッドに残されているのは、この道だけだ。
コールガを操り、加速。本体とヒレの間に生じるラグを可能な限り縮め、イワシの群体のように攻撃をかいくぐる。ペッシャールの背後を狙う。
相手には、コールガの友軍機──ブローズグハッダとドゥーヴァの姿は見えていない。ブローズグハッダは雲の中に潜み、ドゥーヴァは完全なるステルス能力で戦艦の目すら欺く。苛烈さを増すドッグ・ファイトに、海上のレヴィアタンと護衛艦は介入する隙間もない。
実質的な一対一。
ブラッドは、その結末をAIの力を借りて予測する。ペッシャールの一手先を、二手先を読む。今までの行動から動きのクセを探し出す。そして──
戦力を確認。さきほどの被弾がコード・マジックにどれだけの影響を与えているのかシミュレートする。
七八パーセント。それが、AIがはじきだした、今のコールガが撃てるコード・マジックの威力だった。
普通の機体とパイロットを相手にしている場合は、それでも十分な数値である。しかし、一〇〇パーセントのコード・マジックすら回避したペッシャールを相手に二二パーセントの損失は大きい。
最低でもペッシャールを抑えこみ、可能であれば墜とすことが望ましい今の状況を考えると、三〇パーセントのパワーブーストを行わなければならない。あるいはコードの変更を実行し、ペッシャールに対応したコード・マジックを作り出さなければ。




