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「ペッシャール……！」
旋回してこちらに向き直るディアーブルを睨みつけながら、ブラッドは絞り出すようにその名を呼んだ。
帝国の言葉で「漁師」の意味を持つペッシャールは、公国内でも名の知られた優秀なパイロットだ。超音速で戦場に飛来し、前進翼が可能にするアクロバットにて敵を翻弄する。ラ・モールのような量産性と汎用性を捨て、シリーズ・エーギルを克服するためだけに生まれた精鋭の機体とパイロット。
「銛に貫かれた魚」のペイントが、一つの機体に施されているとは限らない。ただ、いまのところ公国が脅威と感じているディアーブル乗りは魚のペイントを施しており、同時に二機以上を確認したことはない。
『通達します。ペッシャールと思われる機体を確認しました。作戦遂行状況に関わらず、生還を第一として行動してください』
アビゲイルから再度、通信が入る。
「撤退しろってか……！」
『できなければ活路はありません。幸運と奇跡は二度も重ならないんです。拾った命を無駄にするつもりですか？』
その問いに答える余裕はない。
方向を変えたディアーブルはコールがに向かって直進している。その胴体にマズル・フラッシュを確認する前に、ブラッドは操縦桿を倒して回避。パーツの隙間を機銃の弾丸が通りすぎる。
背を向けあったのち、互いに鋭く旋回。ブラッドは左手をシート脇のレバーに伸ばし、コールガに魔力を叩き込む。
発動条件 COMPLETE＿
コード・マジックを発動＿
これより殲滅を開始します＿
発動直前で待機状態に入っていたコード・マジックが発動。ヒレは赤く発光して瞬時に魔法陣を形作り、現れた炎弾がペッシャールに襲いかかる。
