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それが、ブラッドの想いだった。「空を飛びたい」だけの欲求で空軍に入ったブラッドは、初心を忘れぬまま、少年のような想いを抱いて空を飛び続けた。ひたすら自由に、思い通りに飛びまわることを夢見て、今に至っている。地に足をつけて死ぬよりも、空で操縦桿を握って死にたい──心の底からそう言えるほどに、ブラッドはパイロットという役割を愛していた。
ブラッドはソードフィッシュを加速させた。襲撃者に向かい、全速力で接近する。
とうに射程内には入っている。いつ死んでもおかしくはない。それでも、ブラッドは自殺行為の自覚もなかったし、自暴自棄になったつもりもなかった。
慌てた様子もなく、襲撃者は転回してブラッドの正面へ。
撃っては避けられ、撃たれては避けの攻防が数秒で行われ、二機はすれ違う。再び襲撃者を視界に入れようと操縦桿を倒したブラッドだったが──そこで異変に気付いた。
反応が悪い。速度が保てない。コックピットに流れるアラートに反応して視線を動かせば、モニタの端には機体の状態が表示されていた。
エラー。機体をかすめるようにして命中した弾丸に揺さぶられ、AIがバランスを保とうと操縦桿に干渉している。一瞬ではあるものの生じてしまった空白の時間、ソードフィッシュは襲撃者からすればいい的だっただろう。
無防備なソードフィッシュに、襲撃者はもう一度すれ違うよう飛びながら弾丸を浴びせる。コックピットと動力源に命中しなかったのは、幸福というべきなのだろうか。反重力機能が正常に動作しなくなったソードフィッシュは、他の友軍機と同様に力なく墜落していく。




