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しばし目を閉じ、その後開かれた瞳に冗談や笑みの色はない。
「了解。戦闘開始」
通達を繰り返す。と同時、ブラッドの声にコールガのAIが応えた。
コマンドを確認_
待機モードを解除_
これより戦闘を開始します_
電子音声が告げると同時、コックピット内部は一変した。
モニタに表示されるのは、コールガの本体から見える全方向映像。一気に青く、明るくなった視界に目を細め、状況を再確認。敵機残数と距離関係は小さくまとめられ、前方には主砲の照準となる薄い円と十字が──しかし、撃つにはまだ早い。
コールガが戦闘状態に入ったことを確認すると、ブラッドは右足を踏み込んで加速。操縦桿を引いて一気に上昇する。
黒点はモニタ前方から消えた。しかし、相対距離を見てみると、距離の開き方はコールガの移動速度に対してあまりに遅すぎる。
ちらりと後ろを振り返ってみれば、数個の黒点が軌道を変え、エンジンブーストの燐光を散らしながらこちらへ近づいてくるのが見えた。
敵機は旧型。であるが、速度よりも火力を重視されたコールガが逃げ切れる道理はない。
なにせ相手は、三〇〇を越える友軍の中から、特に追走が得意な機体とパイロットを選ぶことができるのだから。
逃げ切ることは不可能。であれば、撃破するしかない。
三二七機、全てを。
そして、敵軍を全滅させることならば──コールガには可能だった。
ブラッドの操作に従い、コールガは尾を振りながら反転。真下を向いて、追走する敵機に顔を向ける。
先行して追撃をしかけているのは六機。その遥か下方で、ひとかたまりになっていた三〇〇の黒点が数個のグループに分かれてコールガの包囲を始めていた。




