03
単刀直入な切り返しに、今度こそ閉口。口喧嘩というか、口論というか、他人を言いくるめることが得意なオペレーターに、ブラッドが勝てる道理はないのだが、いつも同じパターンだなと思わないこともない。
ふてくされつつ、ブラッドはコールガに指示してレーダーからの情報を表示する。次いで、ステルス性の高いラ・モールに対応するためにモニタを全面表示。
シートにもたれかかりながらも視線を走らせる。──のだが、緊張感のかけらもない暇つぶしのような索敵だった。
その暇つぶしも、ブラッドにとっては苦痛でしかない。視界に入るのは蒼穹と白雲の帯。それらのことは嫌いではないのだが、見ている内に「飛びたい」という欲求がふつふつとわきあがってくる。
オートパイロットモードのような無粋な方法ではなく、自分の意志で操って、自由に飛びたくなってくるのだ。
──意識を反らそう。
ブラッドの思考がその結論に至るまでに、さほど時間はかからなかった。
「なぁ、アビゲイル」
『なんですか?』
「今回の作戦、参加するのは二機だけか? レヴィアタン相手に」
『火力として計算されているのは二機ですが、もう一機、先行してレヴィアタンに接近している機体があります』
一度アビゲイルの言葉が切れ、キーボードの打鍵音が聞こえてくる。
『ステルス特化の機体、ドゥーヴァ。今回、敵座標が細かく指定されたのは、ドゥーヴァがレヴィアタンに貼りついているからです』
「へぇ……もうそいつは撤退してんのか?」
『いえ。後続機が到着するまで貼りつくか、あるいは到着後も陽動役の任につくことが多いです。今回は陽動役をするようですが──』
打鍵音が止まった。
わずかな沈黙ののち、アビゲイルが言葉を継ぐ。




