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どうやらブローズグハッダはハリセンボン型のようだった。といっても、「ハリセンボン」と聞いてすぐに思い浮かぶような体を膨らませた状態ではなく、あまりなじみのない「しぼんだ」姿で飛行している。小刻みに胸ビレを動かす姿からは、顔に火傷痕のある異国人パイロットを想起しにくい。
とまどいを隠してブラッドは返答。
「こちら、ブラッド・ベイリー。感度良好。……あー、モン、でいいのか?」
『そっちはファミリーネームダ。チャンでいイ』
「オーケー。俺はブラッドでいい。今回はよろしく頼む」
『……了解。いつでも出発してくレ』
会話終了。同時に、チャンの操作で無線通信は切断された。
無駄な雑談は好まないのかもしれない、と予想しながら、ブラッドはコールガをオートパイロットモードに移行する。指示された座標を口頭で入力すると、コールガはゆっくりと加速し、前進。
側面モニタが消え、真後ろの背面モニタが点灯。追従するブローズグハッダと、雲の帯にもぐりこんでいくヒミングレーヴァが映る。
しばらくは景色に変化がない。よほど運が悪くなければ、状況にも変化は起きないだろう。敵機発見が遅れなければ、異常事態も大抵は回避できる。
ブラッドの口が開き、
『暇だ、とでも言うつもりですか?』
冷やかなアビゲイルの言葉に閉口しかける。
すんでのところで踏みとどまり、ブラッドはコックピット内を見まわした。
「……なぁ、このコックピットってカメラついてんのか? 俺のこと見てるだろ」
『安心してください。そんなものはありません。……というか、今まさに言おうとしてたんですか? 緊張感というものはないんですか?』
「俺の緊張感とか集中力はスタミナねぇの。短期集中型なの。本番に備えてんの」
『便利な言い訳ですね』




