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照明はあるものの、空と比べれば室内の暗さは際立つ。とはいえ内壁と接触でもしてみればコールガとヒミングレーヴァ両方に影響を与えかねない。
念のため、AIに命じてヒレ部分を本体に近づける。モニタを注視すると、口内でさらに細分化された八つあるゲートの右端で緑色のライトが点滅していた。
注意を促す光点を目印に、ブラッドはコールガを操ってゲートを通過。専用の格納庫にコールガの本体を着底させる。ヒレはコールガの姿──キンギョ型を維持することもなく、格子状に組まれたメカニック用の足場の間にそれぞれ収まった。
次いで、コールガの機能が停止。前面モニタが消えてコックピット内部の照明が点灯する。
『コールガの帰投を確認しました。これにて作戦行動を終了します。お疲れ様でした』
アビゲイルの声を聞いて、ブラッドはようやく息をつく。飛ぶこと自体は苦ではないし、むしろ楽しんでいる方なのだが、戦闘機どころか飛行機として異質すぎる形状のコールガは扱いひとつひとつに神経を使う。気が休まらない。
シャワーでも浴びるか、それとも軽く腹に入れるか、と頭を巡らせながらコックピット上部を開放。外へ一歩踏み出そうとして、
『あ──少し待ってください』
「うん?」
コックピットの内部から通信の声が。近場の手すりに手をかけて、アビゲイルの言葉が続くのを待つ。
すぐに返答があると思われたが、わずかに間が生じる。ブラッドのことを呼んだわけではないのだろうか、と疑いかけた頃、ようやく言葉の続きが述べられた。
『コールガパイロット、ブラッド・ベイリーに通達します。すぐに司令室に向かってください』
「へ? 俺なんかした?」
『上官に呼ばれることと違反行為をすることをイコールで結ばないでください。任務の話に決まっています。……それと』
「おう」
『降りるときはきちんと通信を切ってください』




