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しかし、いくらAKIRAにライバル心を抱いた所で、急激に技術が上昇する筈も無い。地道な練習を日々重ねる事が、呉鉄栄を成長させる。人生はどうなるか分からない。だからこそ努力は続けられる。いつしか誰もが認めるスーパー選手になるという遥かなる夢に向かって前進が出来る。
人生は悪いもんじゃない。そうポジティブに考えて辛い練習を毎日こなしていた。試合前と試合後の過酷な練習が終わると、素振り1000回をしてから寝る。そして早朝にも打撃練習を取り入れてもらい、寝る時間を捻出する暇さえ与えられない。
だが、ここでくたばるようではたかが知れてると感じた呉鉄栄はそんな毎日に愚痴一つ零さずに一生懸命練習に励んでいた。そんな高卒一年目の頑張りを見ているチームの選手たちも、いつの間にか早朝に起きてきて練習をしていた。呉鉄栄の頑張りがチーム内に広がって、練習に意欲的に取り組む選手たちが圧倒的に増えてきた。
本来、努力している姿は誰にも見せてはいけないが、見せないようにしても、バレテしまう事だったある。そんな事例が今回は上手くあてはまって、チーム内のムードを明るくしていた。これを機に、呉鉄栄はボンバーズのムードメーカーとして選手たちに慕われるようになった。
元々、愛くるしい顔立ちをしていたので、同性の選手たちからもモテモテだったのだが、それがより拍車を増したのだ。
「へい、呉鉄栄。踊ろうぜ!」
チーム内でハイテンションな役回りの選手がダンスバトルをしかけてきた。しかも試合中にだ。
「はい、躍らせて頂きます!」
呉鉄栄がベンチで踊りを始めると、選手どころか監督までもが笑みを浮かべて笑っている。味方の笑う姿を見ていると、こっちまで嬉しくなってしまい、ここが自分の居場所なのだと再確認する呉鉄栄だった、