表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

005


 呉鉄栄うーてつえいの野球人生はサラブレットそのものだった。高校時代はチームの頼れる4番として甲子園に導き、決勝戦で敗れはしたものの名誉ある闘いを果たした。そして昨年ドラフトでプロ入りを果たす。ここまでなら順風満帆だったのだが、金属バットから木製バットへの適応が中々上手くいかずに、今では持ち前のバント技術と守備を武器になんとか一軍にしがみついていた。


 しかし、この状況にいつまでも満足しているような呉鉄栄ではない。もはや野心的にチームの一番を打つことを目指すようになり、毎日素振りをしていた。プロの球威に押されるようになった呉鉄栄は自分にはスイングスピードが足りないのだろうと考え始めて、素振りに至ったのだ。


 目標は1日1000回。人と同じことをしていては自分は負けてしまうと感じていて、人よりも何倍も努力しなければとてもじゃないがチーム内四番を打つことは無理なのだと自分自身が良く分かっていた。


 だからこそ、努力は続けていた。だが、そう簡単に打撃力は上がらない。そもそも、高校一年目で一軍に合流している時点で十分合格点なのだ。


「お前の打撃は一軍クラスだぞ。もっと自信を持て」


 ついに今日の試合で打率を.198に落としてしまった呉鉄栄は誰が見ても分かるような暗くドンヨリとした空気を撒き散らしていた。そんな呉鉄栄に同情しているのか気を遣っているのかは不明だが、監督の声は優しかった。


「こんな自分を使ってくれる監督に、感謝しています」


「何を言うか。こちらこそ入団してくれてありがとうよ」


 監督の励ましの言葉で勇気を貰い、再び練習へと乗り出した。一軍打撃コーチも親身になって教えてくれて、自分は恵まれている環境なのだと改めて実感した。


「お前は足も速いから内野安打も狙えるぞ」


「内野安打ですか。打ってみたいです」


 まだ、一本も打っていなかった。いつも際どいところでアウトになってしまうののだ。


「そのためには走り打ちを習得した方がいいな」


 打撃コーチはそうだと言うのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ