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ヒットを打つためにはどうすればいいかの疑問は尽きない。プロ野球界入りして人から観られる職業に就いたからにはパフォーマンス性が必要となってくる。人によってパフォーマンス性は違ってくるが、やはりいつまでも満たされない感情が眠っているのがベストだろう。野球選手はどれだけヒットを打とうが終わりなど見えない。いつまでも暗闇の中で車を走らせている気分だ。その結論に至らない限りはヒットを量産するなど不可能に近い芸当である……と、監督から教わった気がしてやまない。監督は選手時代に捕手のリード傾向をまとめたと言っていた。それについて否定も共感もしようとは思わなかったが、ハッキリと言えるのは監督のヒットを打とうとする気迫だ。努力して何としてでもやり通そうとする選手は結果に残る。まず、結果を残すために重要なのは考え方だ。部屋の中が多少汚れていても、仕事上では清潔感に満ち溢れている人がいる。そのような人物は考え方が普通の人間とは全く違うのだ。どれだけ頑張っても結果が出ないと嘆いている人間は、仕事と日常生活の自分を一緒だと考えがちだ。そうじゃなくて、仕事は仕事。日常生活は日常生活と切り離して行動しないと先は見えなくなる。ただでさえ野球関係の仕事は闇雲に走りっぱなしなのに、これ以上となるとハンドルを放したまま時速120キロのスピードで反対車線を走らなければいけない。その中で事故をしないと言い切れる人間がどれだけいるだろうか。まずいないに決まっている。自分の評価など気にしている暇があれば、野球に人生を注ぎ込まなければいけない。家に帰って投球データの確認をしながら考える事なのかと少々疑問に感じられるが、呉は決して間違ってなどいない。ヒットを打とうと今自分に出来るだけの全てを注ぎこむ。そうしないと昔の弱い自分に戻ってしまうのだ。それだけは避けなければいけない。
「監督から言われた通りに捕手のリード傾向をチェックしたけど、いまひとつ打撃のヒントは掴めないな」
だが、その道の先輩から教わった飛躍のチャンスは決して無駄にはならない。今はピンとこなくても試合を重ねていく内に監督が本当に言おうとしていた真実が分かってくる筈だ。今は何とも言えなくても年齢を重ねて真実を発見するのは造作もない。その結果、他人からどう思われようとも知ったこっちゃない。理想の自分を習得すれば万々歳なのだから。そういう意味では、目標到達のためのプロセスは結果よりも重視すべき点なのかもしれない。




