3
「……さっさと吐けよ、くそ女はどこなんだよ」
「ひいっ……知りません。知りません」
「しらばっくれるなよ、パウリナ=トロンプールだよ」
酒場の一番奥には、最後に残った男に詰め寄るダニエルとそれを後ろから見守るジェシカの姿があった。私は彼らの名を呼んだ。ジェシカは銃を握る腕をもう片方の腕でじっと掴んでいた。手は震えていないが、非道く疲れた様子を見せていた。
「ボス、こいつが恐らく知っていると思います。なにか隠しています」
ダニエルは男の胸ぐらを掴んだままで答えた。私は彼の手を掴み、服を離させた。恐怖でもうこの男は立てない。私は目で促し、ダニエルを裏口の前に立たせる。逃げ場はどこにもない。
「わたしはファミリーのボス、フェデリコだ。パウリナ=トロンプールはどこに隠れている?」
男の目をじっと見つめた。みすぼらしい格好をした若い男だ。下っ端の下っ端だろうと予想がつく。男は震える唇をゆっくり動かせた。
「……そこの、木箱で隠れている棚の中」
「そうか、ありがとう」
私は感謝の言葉を述べると男の脳天を銃で打ち抜いた。鮮血が顔にべっとりとはりつく。男はばたりと後ろへ倒れ、頭からはどくどくと赤い血が流れ出す。非道く赤黒い血だったのが印象的だ。頬についた血を親指で拭い、例の木箱に隠れている棚を見る。
子供一人が入れそうなそんなに大きくない棚だ。恐らく酒や食料が入っていそうな普通の棚のようだ。木箱の中を一応確認してみると、そのなかには大量の爆薬と麻薬。完全なるマフィアに該当するものだった。マフィアの密輸でもやっていたのか、はたまた。
「ダニエル、どけるぞ」
「了解」
ダニエルとふたりで、木箱をどけ、棚の中を開けようとした時、棚はひとりでに開いた。
中からでてきたのは、やはりパウリナだった。変わっていない。相変わらず骨ばった体つき。うなじが見えるくらい短いマゼンタ色の髪。目は吊り目で美しい顔立ちをしている。
「……ひさしぶりだな、パウリナ」
「あんた、本当にあのガキなの」
枯れた声で彼女は言った。折れそうな腕を組んでねっとりと私を見つめて。
「そうだ。貴方の実の息子、フェデリコですよ」
私は嫌味たらしく答えた。