お姉ちゃんにならないとダメ
「アダルトチルドレン」と聞いて、性的な物を期待された方、申し訳ございません。この話は、性的な話ではありません。幼かった私の身に起こった、家庭の話であります。多少虐待などを連想する場面があるかもしれません。ただ、これは全て事実です。前書きを読んで、「嫌だ」と思われた方は読まないで下さい。
母はまだ小さい私の手を引いて、車で近くにあるショッピングセンターに向かった。
子供服屋に入り、私の服を選び、買ってくれた。
ここまでは、良かった。
大人の服屋さんは、ショッピングセンターには付き物。母は自分用の服に目をとられ、「ちょっと待ってて」と中に入り、店員に話しかける。
私はとても暇になる。
幼い私にとっては、私の服にも興味はなかったのに、大人用の服なんか「何のこった?」って感じ。退屈な時間だった。
なんだか、洋服が列になってハンガーにぶら下がっている。私はその下の方が気になった。母は、まだ店員と話していた。私は少し屈んで、洋服の下にもぐりこんだ。カーテンのようにぶら下がっている洋服達が、一歩進むごとに押し寄せて来た。暇だった時間が、楽しくなった。夢中になって洋服のカーテンの中で遊んだ。
突然、「何やってるの!」と甲高い声が聞こえて、私は首根っこを捕まれ放り出された。
すごい力だった。首が折れるかと思った。
「あんたは、目を離したらすぐにどこでも行くんだから!」
首根っこを掴み、手を震わせながら言った。前にドラマで見たやくざが脅す時みたいだった。
私は目が潤んだ。
大きな声に店員もびっくりしている様子。そして店員に「ごめんなさいねぇ。子供がいるんで、邪魔だからまた今度来ますぅ。」と言ってそそくさと店を出た。
邪魔だから・・・
私って、邪魔なんだ。
帰りの車の中はシーンとしていたが、私のすすり泣く声が響いた。
「服買ってあげたのに、なんであんな事するの?もうお姉ちゃんなんだから、しっかりしないとダメ。さっきみたいな事、二度としないで。」
母は、後部座席に座っていた私をバックミラーで見ながら言い放った。
私には5つ年の離れた弟がいる。お姉ちゃんになったんだからって言われると、「お姉ちゃんにならないと」と思っていた。わかってるけど、ただ単純にこの時は、悲しかったから泣いていた。なんで悲しかったのかはわからなかった。